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海洋プラスチックごみ

深刻さが増す、海洋プラスチックごみ問題

2021年03月03日

海洋プラスチックごみ問題は、海の景観を損ねるだけではありません。海の生態系へ悪影響を与え、ひいては経済や私たちの健康にも影響を及ぼすのです。
ここでは、海洋プラスチックごみ問題の要因のほか、海洋プラスチックごみ問題がもたらす影響や私たちにできる対策についてご説明します。

海洋プラスチックごみ問題が起きる要因 

プラスチックは加工がしやすく、軽量かつ丈夫であり使い勝手に優れるため、ペットボトルやレジ袋などあらゆる製品の材料となっています。しかし、私たちが利用したプラスチックは適切に処分されないものも多く、海を汚染する原因になっているのです。

世界では、年間400万~1,200万トンのプラスチックが海に流れ込んでいると推定されており、生態系へ多大な悪影響を及ぼしています。テレビやWebメディアで取り上げられる「魚の体内からプラスチックを発見」といった現象は、海洋プラスチックごみ問題の一例です。

海洋プラスチックごみ問題が起きる要因としては、以下が挙げられます。

  • 洗顔料・歯磨き粉に含まれるマイクロプラスチックの流出
  • 合成繊維の衣服を洗濯した際のマイクロプラスチック流出
  • プラスチックごみの不適切な処分(ポイ捨てなど)

上記を見て驚いたかもしれません。実は、洗顔料や歯磨き粉にはマイクロプラスチックが含まれており、合成繊維の衣服も洗濯の際に多量のマイクロプラスチックを放出しています。私たちが流したマイクロプラスチックは非常に細かいため、下水処理施設をすり抜け最終的には海へ流れ出てしまうのです。

また、風に飛ばされたりポイ捨てされたりして適切に処分されなかったプラスチックは、海に流れ着いたのち紫外線や波により劣化して細かくなります。洗顔料や歯磨き粉に含まれるような、生成段階から小さいものは1次的マイクロプラスチック、紫外線や波などの自然環境にさらされて小さくなったプラスチックは2次的マイクロプラスチックと呼ばれます。

海洋プラスチック問題がもたらす様々な影響

海洋プラスチック問題による影響は、ただ海の景観を損ねるだけではありません。プラスチックごみは海に住んでいる生物に悪影響をもたらし、その影響は経済や私たちの健康にまで及びます。

生物に与える悪影響と懸念される問題

海鳥が浮遊しているプラスチックを魚と間違って食べたり、ウミガメがプラスチック袋をクラゲと誤って食べたり、海に流れたプラスチックごみは海洋生物を苦しめます。2018年には、タイ南部の海岸に打ち上げられていたクジラの胃から、プラスチック製の袋が80枚見つかりました。翌年にはフィリピン南部に打ち上げられたクジラの体内から、計40キロにのぼる大量のプラスチック袋が見つかっており、海洋生物の死体からプラスチックが発見される事例は近年多く見られます。

また、プラスチックは分解されづらいため海に蓄積され続けてしまい、2050年には海洋プラスチックが海の魚の総重量を超えると予想されています。

経済に与える悪影響と懸念される問題 

海に流出するプラスチックごみは年間400万~1,200万トンと推定されており、2018年に発表された経済協力開発機構(OECD)の報告によると、プラスチックごみが観光業・漁業にもたらす損害は年間約130億ドル(約1兆4,000億円)にのぼるとのこと。

アジア・太平洋地域の観光業に絞っても、年間約6億2,200万ドル(約672億円)の損害をもたらすと考えられています。

私たちの健康に与える悪影響と懸念される問題

エサと誤ってマイクロプラスチックを取り込んだ海洋生物は、より大きな海洋生物にエサとして食べられ、さらに大きな海洋生物に食べられます。このようにして体にマイクロプラスチックを蓄積した海洋生物は、その一部が私たちの食卓に並びます。

食事を通じて人間の体内に入ったマイクロプラスチックそのものが、人体に対してどれほど有害であるかは未知数です。しかし、化学物質が付着したマイクロプラスチックが体内に入り、蓄積されて将来的に症状が顕在化する可能性もあり得るといった意見は複数あります。

現状、健康被害における直接的な根拠は見つかっていませんが、海洋生物を経由して汚染されたマイクロプラスチックを人体に取り込み続けることで、何らかの悪影響がもたらされる懸念については考慮すべきでしょう。

海洋プラスチックごみを減らすために私たちができること

海洋プラスチックごみを減らすため、日本を含む各国では多くの対策が講じられています。なかには私たち個人が始められる取り組みもあるため、日常生活に取り入れられる対策方法もあわせてご紹介します。

世界的に行われている取り組み 

海洋プラスチックごみ問題に対処するため、大々的な規制を整備している国・地域は増えています。以下にアメリカ・中国・EUで行われている、プラスチックの排出を抑えるための取り組みの一例をまとめました。

取り組みの一例
マイクロビーズ除去海域法により、マイクロビーズを含むケア製品の製造・販売を禁じ、ニューヨーク州では2020年3月からプラスチック製レジ袋の使用を禁止
2020年末までに全国の飲食店にてプラスチック製ストローの利用を禁じ、プラスチック製の容器・買い物袋・ホテルの歯ブラシなどの利用・提供を順次規制
EU プラスチック戦略に基づいて、2030年までに全プラスチック容器包装をリサイクルするほか、使い捨てプラスチックの削減を積極的に推進

持続可能な開発目標(SDGs)では、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」という目標が掲げられており、国連環境総会やG7、G20などでも海洋プラスチックごみ問題への対策は世界の共通課題として挙げられています。

日本で行われている取り組み

日本では、環境省が2019年に海洋プラスチックごみ対策アクションプランを策定しました。「海洋プラスチックごみ対策アクションプランの概要」によると、本計画では8つの分野から「新たな汚染を生み出さない世界」の実現を目指すとのこと。

  • 廃棄物処理制度等による回収・適正処理の徹底
  • ポイ捨て・不法投棄、非意図的な海洋流出の防止
  • 陸域での散乱ごみの回収
  • 海洋に流出したごみの回収
  • 代替素材の開発・転換等のイノベーション
  • 関係者の連携協働
  • 途上国等における対策促進のための国際貢献
  • 実態把握・科学的知見の集積

具体的な取り組みとしては、最新技術を活用したリサイクル施設の整備、全国一斉清掃アクションの実施、国・自治体等による不法投棄の監視などが挙げられます。

私たち個人が始められる取り組み

海洋プラスチックごみを減らすため、私たちは以下の意識を持って日常生活を送ることが望まれます。

  • リデュース:プラスチックごみの排出を減らす
  • リユース:プラスチック製品を繰り返し使う
  • リサイクル:プラスチックを再生利用する

たとえば、使い捨てのプラスチックコップの使用頻度を減らしたり、マイバッグを持ち歩いてプラスチック袋の利用を控えたりといった行為は、立派なリデュース(ごみ排出を減らす)です。リユース(繰り返し使う)の代表例としては、ハンドソープや洗剤、シャンプーなどの詰め替えが該当します。プラスチックの廃棄時に、素材ごとに分別して廃棄する行為はリサイクル(再生利用)にあたり、効率良くごみを焼却するために不可欠な配慮です。
このほか、街に落ちているプラスチックごみを拾ったり、海岸に打ち上げられたプラスチックごみを回収したりといった行為は、海を漂うプラスチックごみの量を減らすことに繋がります。

おわりに

海洋プラスチックごみ問題は経済的な損失をもたらし、私たちの健康に悪影響をもたらす可能性も懸念されます。なにより海洋生物や海鳥が苦しみ、命を失ってしまうことは避けなければなりません。地球に住む一員として、世界や日本で推し進められる対策にアンテナを張りつつ、まずは日常生活で実践できる取り組みから始めていきましょう。

EnergyShift編集部
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