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CSO(最高サステナビリティ責任者)とは

CSO(最高サステナビリティ責任者)とは

2021年03月02日

CSO(最高サステナビリティ責任者)と呼ばれる役職をご存知でしょうか? 「持続可能性」を意味するサステナビリティが重要視される昨今、CSOは多くのビジネスパーソンが知るべき役職となりつつあります。
ここでは、CSOの概要と役割、どのような人材がCSOに適しているのかご紹介します。

CSO(最高サステナビリティ責任者)とは

CSOは最高サステナビリティ責任者と呼ばれる、組織における役職の1つ。Chief Sustainability Officerの頭文字を取って、CSOと表記します。CSOは最高サステナビリティ責任者のほか、Chief Strategy Officer(最高経営戦略責任者)を指す言葉としても使用されますが、ここではCSOを最高サステナビリティ責任者として扱います。
CSOの役割は、企業が有するサステナビリティ部門を総括し、サステナビリティを自社の戦略に統合することです。コンプライアンスの観点から自社のあり方を見直したり、自社工場の電力として再生可能エネルギーの導入を検討・実行したり、CSOの立場から広報を担当したりします。

多くの企業がサステナビリティを重視する理由

昨今、多くの企業がサステナビリティ(持続可能な企業活動)に力を入れており、営利法人であっても事業を通じて環境や社会に対する影響を考慮し、活動を続けることが重要視されています。
たとえば、「ESG経営」という言葉が多用されるようになった現状は、その根拠の1つとして挙げられます。ESGは以下単語の頭文字を取った言葉です。

  • Environment(環境)
  • Social(社会)
  • Governance(ガバナンス)

要するに、環境汚染や省エネルギーに対する感度を高めて「環境」を尊重し、社内の労働環境から地域・国という広い意味での「社会」に良い影響をもたらすこと。および、コンプライアンスや事業の透明性の確保などの「ガバナンス」にまつわる問題に真摯に取り組み、そのうえで営利活動することが企業に求められているのです。

これはCSR(企業の社会的責任)にも近しい概念であり、ときにSDGs(持続可能な開発目標)という文脈で語られることもあります。いずれにせよ、企業は自社の利益追求に偏るほど長期的な成長を見込めず、むしろ利益を損ねて成果を最大化できないといった価値観が浸透しつつあるのです。

このような背景から多くの企業が持続可能性、つまりサステナビリティを重視しており、それにともなって組織内にCSOという役職を設けるケースは増えています。

拡大するCSO

CSOを設置する企業の数が増えていることはもちろん、その役割の重要さが認知されるにともないCSOの責任範囲も拡大しています。サステナビリティが、ビジネスモデルに付随する一要素ではなく、ビジネスモデルそのものの基盤にすべき要素だといった価値観が強固になりつつあるからです。

そのため、多くのCSOは環境保全・社会活動に重きを置いてこそいるものの、それらの活動に終始することはありません。ステークホルダー(利害関係者)に対する価値提供について考え、自社がサステナビリティへコミットメントしながら経営と社会問題の両面における課題をどのように解決していくのか、内外問わず意思共有を進めることも役割の1つです。

CSOの拡大が必然的なものであることは、消費者の意識からも読み取れます。博報堂が2019年11月に公表した「生活者のサステナブル購買行動調査」によれば、「環境・社会に悪影響を与える商品・企業」に対する不買、「環境・社会に配慮した商品」に対する購入意向を、消費者の7~8割程度が持っているとのこと。一般消費者の半数以上がサステナビリティを意識する状況を考慮すれば、多くの企業がCSOのポジションを設ける必要があることは明らかです。

CSOポジションを設けている企業の事例

日本でもCSOの必要性が認知されつつあることから、CSOポジションを設ける事例は増えてきました。たとえば、リクルートホールディングスや日産自動車などの大手企業は、すでにサステナビリティの最高責任者としてCSOのポジションを設けています。
しかし、CSOが公に消費者とコミュニケーションを取る場面は多いとはいえず、CSOとは別の役職を兼任しているケースもあるため活動は見えづらいのが実情です。

ここでは、際立ってCSOが活躍している、世界的に有名な企業の事例を2つご紹介します。

スティーブ・ハワード氏をCSOに招いたイケアの事例

サステナビリティに注力し、CSOポジションを設けて活動している有名企業の1つにイケア(IKEA)があります。
イケアは最高サステナビリティ責任者として、脱炭素化を推進する国際NGO「クラスメイト・グループ」の創始者であるスティーブ・ハワード氏を招き、サステナビリティ戦略を推し進めました。

CSOに就任したスティーブ・ハワード氏のもと、イケアはハロゲンと電球型蛍光灯の販売を取りやめて、販売するすべての照明器具を寿命が長く省エネルギーなLEDに交換することを決断。また、生産過程で大量の殺虫剤・肥料・水を使用する綿生産の状況を危惧し、農家に対して化学物質の使用量を抑えた綿花栽培を教育しています。
この教育により農家は化学物質の輸入費にかかる経費を削減し、一方で綿花の収穫量を大きく増やせるようになったため、環境保全と農家の経済状況の2つの側面からサステナビリティの実現に貢献しています。

そのほか、児童就労の実態がないか全工場に調査員を派遣したり、イケアで使用するエネルギーを再生可能エネルギーにより自給したり、労働環境・人権・エネルギー問題にまで幅広く対応。表面的な環境保全の取り組みではなく、イケアのビジネスモデルそのものを変革させる意識でサステナビリティに向き合っている様子が分かります。

参考:TED「スティーブ・ハワード: サステナブルなビジネスに全力投球!

ヴァージニー・ヘリアス氏がCSOを務めるP&Gの事例

日本でもアリエールやパンパースといった、洗剤や衛生製品で馴染み深いP&Gの本社は、CSOを務めるヴァージニー・ヘリアス氏のもとサステナビリティを尊重したブランド改革に舵を切っています。

水・エネルギーといった資源の利用量を削減、埋め立てる製造廃棄物をゼロにすることを目標としており、すでに日本にある複数の工場では再生可能エネルギーによるエネルギー自給100%を達成。製品の製造工程における廃棄物ゼロも実現し、着実に課題をクリアしているようです。
このうち、日本にある滋賀工場は、水を浄化して再利用することで排水ゼロをいち早く達成しており、世界に広げるべきモデルの先駆けとなりました。

P&Gは、このほかにもサステナビリティにおいて重要視される要素の1つ「事業の透明性」の観点から、製品の原材料をホームページですべて公開しています。P&Gの日本サイトでも、以下のように製品ごとの成分情報が記載されています。

*P&G「洗剤等の成分情報

これらの取り組みを始め、ヴァージニー・ヘリアス氏はP&Gのマーケティング部門に23年間従事した経験を活かし、マーケティング部門とサステナビリティ部門の架け橋となり、マーケティング担当者の視点に立ってサステナビリティに向き合うことも多いとのこと。
P&Gが世界規模でサステナビリティをけん引する役割を担えるよう、利他主義的な発想をビジネスの中枢に持ち込み、サステナビリティを組み込んだブランド戦略構築の立案に注力しているようです。

参考:サステナブル・ブランド ジャパン「ブランド改革で、時代と消費者に求められる企業へーーP&G ヴァージニー・ヘリアス CSO

求められるスキル

CSOに求められるスキルは、サプライチェーン(供給の流れ全体)を含むビジネスモデル全体の理解と、サステナビリティに対する知識や志です。また、サステナビリティの発想が、既存の企業の風土と真逆なケースもあるため、社内に変革をもたらすための忍耐力が必要ともいわれます。

サステナビリティ部門の存在が、マーケティング部門や財務部門に比べて新しい存在であることから、サステナビリティ領域はほかに比べて自社における方針・ノウハウが確立していないケースも多く、新たなルール作りを行うための発想力と柔軟性も求められるでしょう。

サステナビリティの最高責任者とはいいつつ、総じて多角的なスキルを要する役職であることは否めません。

どのようなひとに向いている?

スキルを有しているだけで、CSOに向いていると判断することはできません。CSOに向いている人物像は、サステナビリティとビジネスモデルの統合に対する高い熱量を持った人材だからです。

すでにサステナビリティに関心の強い国・企業では、サステナビリティとビジネスは共存可能なものであり、サステナビリティを追求することが営利活動にとってコストにはならないという価値観が広まりつつあります。これは、いち早くサステナビリティに向き合い始めた企業のCSOが、サステナビリティに対する理解を社内外に促し、積極的な啓発に努めてきたからです。

しかし、現時点では日本にこのような考え方が根付いているとはいえません。だからこそ、既存の社風を一変させてサステナビリティを企業理念の中枢に組み入れられるほど、強いパッションを持った人材こそCSOに適しているといえるでしょう。

同時に、社外に対して自社がサステナビリティの実現に積極的であることを示し、同時に利害関係者の利益最大化も担保できるよう目指すことを理論立てて説明できる人材が理想的です。

おわりに

CSO(最高サステナビリティ責任者)という役職は、すでに多くの企業がポジションを用意しているCMO(最高マーケティング責任者)やCFO(最高財務責任者)といった、事業活動の根幹を担う役職と同等のポジションだと認知されてきました。

現状、その認知は海外企業が一歩進んでいる印象ですが、今後は日本企業のなかでも一般的なポジションとして確立されていくでしょう。ただし、CSOに抜擢されるべき人材は、自社のビジネスモデルとサステナビリティの重要性を偏りなく理解しなければなりません。 CSOを選任・推薦する機会を迎えた際は、どのような先例が成功を収めてきたのか、どのようなスキル・性格を持った人材がCSOに相応しいのか、改めて本記事をご参照ください。

EnergyShift編集部
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