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経団連、炭素税導入けん制 2022年度税制改正提言で

経団連、炭素税導入けん制 2022年度税制改正提言で

2021年09月10日

経団連は9月8日、2022年度税制改正に関する提言をまとめ、CO2排出量に応じて課税する炭素税について、「現状では新規導入の合理性は明らかとは言えない」としてけん制した。

再エネ導入によるエネルギーコストの上昇に懸念示す

国は、2050年脱炭素に向け、企業が排出したCO2に応じて、金銭的な負担を負うカーボンプライシングの導入議論を2021年から本格化させている。

そのひとつが、炭素の排出量に応じて課税する炭素税だ。日本では2012年から同じような税として、地球温暖化対策税を導入しているが、より高い税率にしたり、課税する企業の対象を広げることなどが検討されている。税収は脱炭素技術開発の支援などの財源として使う方針だ。

もうひとつが、排出量取引制度である。政府などが企業ごとに、CO2の排出上限枠(排出枠)を決め、ある企業がこの上限を超過してしまった場合は、排出枠が余った別の企業から、排出枠を購入するという仕組みだ。市場を介してこうした取引が行われることが想定されている。

いずれの制度も、企業が多くのCO2を排出すれば、それだけ金銭的な負担を負うことになるため、排出削減に向けた取り組みを強化することが期待されている。

一方、産業界はカーボンプライシングで新たな経済負担が増えると、国際競争力が削がれるおそれがあるとし、慎重姿勢を崩していない。

こうした中、経団連は提言の中で、「炭素税については、現状では新規導入の合理性は明らかとは言えない」とし、導入議論をけん制した。また、2030年の再エネ比率36〜38%を目標に掲げる第6次エネルギー基本計画案に関しては、エネルギーコストのさらなる上昇懸念を示し、「国際競争力にこれ以上深刻な影響を及ぼさないようにすべきである」とした。

地球温暖化対策税についても、「毎年度の税収および使途の開示や、定量的な温室効果ガス削減効果の検討等は行われていない」とし、「廃止も含めてあらゆる選択肢を排除せずに、所要の見直しを行うべきである」と指摘した。

このほか、カーボンニュートラル実現に向けた取り組み強化には、電動車や電動二輪車に対する減免措置が必要だと提言。そのうえで、充電インフラや水素ステーションの固定資産税を減免し、インフラ整備の拡大をすべきだとした。

経団連は、「企業にとってCO2削減そのものが価値であるという認識が広まっている」としながらも、炭素税の導入に釘を刺した格好だ。しかし、アメリカやEUは、カーボンプライシングのない国からの輸入品に関税を上乗せする炭素国境調整措置の導入に向け、議論を加速させている。仮に導入されれば、日本の国際競争力低下は避けられない。

EU、アメリカ、そして中国も加わり、脱炭素をめぐる技術覇権や国際ルールづくりが加速している。また、日本企業も株主やサプライチェーンなどからCO2削減に向けた取り組み強化のプレッシャーにさらされはじめている。いつまでも慎重姿勢を取り続けていれば、いずれ日本の産業界はグリーン成長から取り残されてしまうという危機感は高まりつつある。

政府は今回の経団連の提言を受け、どう対応するのか、注目されている。

EnergyShift編集部
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