高いポテンシャルを持つソーラーシェアリング 普及を阻む3つの壁とは | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

高いポテンシャルを持つソーラーシェアリング 普及を阻む3つの壁とは

高いポテンシャルを持つソーラーシェアリング 普及を阻む3つの壁とは

2022年03月04日

日本ではソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)について、およそ10年の歴史がある。しかし、現状の普及状況をみると、むしろ課題ばかりが目につくかもしれない。単純に計算すると太陽光発電の新規開発として国内年間発電量の10%程度をまかなえるくらいの高いポテンシャルがあるだけに、改めて推進する政策が必要かもしれない。2022年2月に発足した農林水産省の有識者会議の委員に就任した馬上丈司氏が、ソーラーシェアリング普及のためのポイントについて解説する。

連載:これからのソーラーシェアリング

ソーラーシェアリングの新たな普及施策の検討開始

2013年3月末に農林水産省から営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)に関する通知が発出されてから、間もなく9年となる。その間、FIT制度を前提とした農業者の所得向上を目指すところから始まり、国全体の再生可能エネルギーの導入拡大、新規就農者の増加や地域エネルギー生産による農業・農村の振興、果ては農業の脱炭素化や農村BCPなどソーラーシェアリングへの期待と成果は多様化してきた。2021年には農林水産省においてみどりの食料システム戦略(以下、みどり戦略)が策定され、農林水産分野における気候変動対策や適応策の推進が大きく打ち出される中で、農山漁村における再生可能エネルギーの導入拡大の方針が明記された。

こうした社会情勢の変化がある一方で、足元では徐々にソーラーシェアリングの導入が進みつつも、今ひとつ普及に弾みがつかない状況や、農業生産が適切に行われていない事例の増加が見られているほか、自然災害による発電設備の被害等も相次いでいる。それらを踏まえ、今後どのような形でその普及を図っていくべきかなどを改めて整理するための場として、農林水産省が「今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議」をこの2月に発足させた。

私も同会議の委員を拝命し議論に参加する機会を得たことを受け、改めてソーラーシェアリングの普及に向けて何を検討すべきかを整理していく中で、本記事では一つ重要なポイントを挙げておきたい。

・有識者会議での課題整理

第1回会合では、有識者会議の位置づけについて農林水産省から説明があった。大きくは2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、再生可能エネルギーの大幅な拡大を目指す中で、農業・農村の持続性を確保するためにも電力の自家消費や地産地消が非常に重要であり、その一つとしての営農型太陽光発電のあり方について検討するとしている。

本有識者会議の位置付け

「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指すためには、優良農地の確保や地域との共生を前提としながら、再生可能エネルギーの大幅な拡大が不可欠。

また今後の電動スマート農機の普及や災害の頻発、中山間地域のガソリンスタンドの撤退などの状況下で、農業・農村の持続性を確保するためには、電力の自家消費、地産地消が非常に重要。

このため、本有識者会議では、再生可能エネルギーのうち、営農型太陽光発電のあり方について検討。

食料・農業・農村基本計画(令和2年3月31日閣議決定)抜粋
農村の所得の向上・地域内の循環を図るため、地域資源を活用したバイオマス発電、小水力発電、営農型太陽光発電等の再生可能エネルギーの導入、地域が主体となった地域新電力の立上げ等による再生可能エネルギーの活用を促進する。

第6次エネルギー基本計画(令和3年10月22日閣議決定)抜粋
太陽光発電については、(中略)自家消費や地産地消を行う分散型エネルギーリソースとして、地域におけるレジリエンスの観点でも活用が期待され、更なる導入拡大が不可欠である。(中略)農地についても、優良農地の確保を前提に、(中略)営農が見込まれない荒廃農地への再生可能エネルギーの導入拡大や発電と営農が両立する営農型太陽光発電等による導入の拡大を進める。

出典:農林水産省 今後の望ましい営農型太陽光発電のあり方を検討する有識者会議 配付資料

具体的な3つの検討事項とは・・・次ページ

馬上丈司
馬上丈司

1983年生まれ。千葉エコ・エネルギー株式会社代表取締役。一般社団法人太陽光発電事業者連盟専務理事。千葉大学人文社会科学研究科公共研究専攻博士後期課程を修了し、日本初となる博士(公共学)の学位を授与される。専門はエネルギー政策、公共政策、地域政策。2012年10月に大学発ベンチャーとして千葉エコ・エネルギー株式会社を設立し、国内外で自然エネルギーによる地域振興事業に携わっている。

エネルギーの最新記事