太陽光発電ファンドとは? | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

太陽光発電ファンド

太陽光発電ファンドとは?

2021年03月03日

太陽光発電は、安定したリターンを期待できる資産運用であるものの、初期費用が高額であるためハードルを感じがちです。そこで、初期費用を抑えつつ、太陽光発電に投資できる「太陽光発電ファンド」が注目されています。

この記事では、太陽光発電ファンドの概要、メリットやリスクについてご説明します。

太陽光発電ファンドとは

太陽光発電ファンドは、少額から太陽光発電へ投資し、利益を得られる金融商品。複数の出資者から資金を集め、多額の資金を運用する「ファンド」のうち、太陽光発電を対象にしたものが太陽光発電ファンドです。実際に発電所を運用する太陽光発電投資は、安定した利益率が期待できる資産運用であるものの、高額な初期費用を理由に躊躇してしまうケースが多々あります。初期費用そのものは、融資を利用することで賄えるのですが、大きな借金をする行為に抵抗を覚えることも少なくありません。

また、太陽光発電投資を行う場合、現地の視察や手続きの手配など、運用にまつわる多くの手間が発生します。こういった要因による「ハードルの高さ」を避けたいとき、太陽光発電ファンドは有力な選択肢の1つです。

太陽光発電ファンドとインフラファンドの違い

太陽光発電ファンドは、厳密には2つのカテゴリーに分類されます。

  • 太陽光発電ファンド
  • インフラファンド

一般的に、証券取引所に上場していないものを「太陽光発電ファンド」、上場しているものを「インフラファンド」と呼んで区別します。

 太陽光発電ファンドインフラファンド
売買方法ファンド運用会社のサイトから購入証券取引所から購入
運用期間固定(中途解約は原則不可)自由に売買可能

両者には上記のような違いがあり、商品の特性は大きく異なります。購入にあたり、把握しておくべき点がいくつかあるため、より詳しい解説は後述します。

太陽光発電ファンドの仕組み

太陽光発電ファンドの仕組みはシンプルです。まず、複数の出資者から集めた資金を利用し、運用会社が太陽光発電所を運用。「運用により得た売電収入の一部」を出資者に還元することで、運用会社と出資者に利益がもたらされます。
ステップ形式に解説すると以下の通り。

  1. インターネットなどの媒体をもちいて企業が出資者を募集
  2. 複数の出資者から太陽光発電所の運用資金を集める
  3. 集めた資金を使い、運用会社が太陽光発電所を運用
  4. 売電収入のうち、一部を「分配金」として出資者に還元

出資者に求められるアクションは、基本的に「案件を探す」および「予算の範囲で出資する」の2つのみ。太陽光発電所の運用にまつわる業務には一切関わらないため、投資にかかる手間はほとんどありません。

なお、分配金は毎月受け取れるわけではなく、太陽光発電ファンドごとに設定された内容に応じて振り込まれます。実際の太陽光発電投資では、1ヶ月ごとに売電収入を得られますが、ファンドの場合は異なる点に注意してください。

太陽光発電ファンドのメリット6つ

多くの魅力を持つ太陽光発電投資を差し置いて、太陽光発電ファンドを選ぶ投資家が一定数存在するのは、太陽光発電ファンドが多くのメリットを有しているからです。この章では、それぞれのメリットを順にご説明します。

少額から投資できる

太陽光発電ファンドは、複数の出資者から集めた資金で太陽光発電所を運用する特性上、1人あたりの負担額が少額です。実際に事業用の太陽光発電所を購入し、オーナーとなって発電所を運用するのであれば、初期費用として1,000万〜2,000万円ほど必要です。
一方、太陽光発電ファンドは1口1万円程度から購入できる商品もあるため、多額の資金を用意することなく投資を始められます。

安定した利回りが期待できる

そもそも、太陽光発電そのものが「安定した利益」を生み出す特性を持っているため、太陽光発電へ間接的に投資をする太陽光発電ファンドも、同様の特性を引き継いでいます。
景気や政治の動向による影響を受けづらく、株式投資やFXのように短期間のうちに大きな含み損を抱える懸念がないことから、こまめに運用状況をチェックする必要はありません。

運用に手間がかからない

太陽光発電ファンドは、メンテナンスや清掃などの業務を運用会社が行うため、投資をする出資者には一切の手間が生じません。メンテナンス業務を外注できるというメリットは、実際に太陽光発電所を運用するケースにも共通する点ではありますが、自身が発電所のオーナーになる場合は外注先の手配を行わなければなりません。
その点、太陽光発電ファンドは、極限まで運用の手間を削減できるという部分に優位性があります。

難解な分析・勉強が不要

太陽光発電ならではの安定した利益率、および運用に手間がかからない点も相まって、太陽光発電ファンドの運用には難しい知識が必要ありません。株式投資のように企業業績や財務状況を見る「ファンダメンタルズ分析」や、FXのようにチャートのパターンを読み解く「テクニカル分析」を必要としないため、難解な勉強は不要です。
時間の捻出が難しい多忙な投資家にとって、太陽光発電ファンドの学習コストの低さは大きなメリットになり得ます。

手軽に環境保全に参加できる

現在、日本はCO2の排出量を低減するため、太陽光発電を主力電源の1つにすることを目的としています。しかし、環境保全を目的として、個人が大規模な発電所を設置することは困難です。
その点、太陽光発電ファンドへの投資は、出資した資金が大規模な太陽光発電所の設置・運用に利用されるため、再生可能エネルギーの普及に貢献する方法として有効です。経済的なリターンを得られるだけでなく、社会的に意義のある活動へ参画できる特性は、他の資産運用にはないメリットだといえます。

太陽光発電ファンドのリスク3つ

多くのメリットを持つ太陽光発電ファンドも、運用にともない複数のリスクが生じます。リスクを認知しないまま投資を始めたため、投資額の許容範囲を見誤ってしまえば、想像を超える損失に繋がりかねません。太陽光発電ファンドへ投資するまえに把握しておきたいリスクについてご説明します。

運用会社の倒産リスク

運用会社の倒産リスクは、自身で太陽光発電所を運用する場合には起こり得ない、太陽光発電ファンド特有のリスクです。太陽光発電ファンドへ投資したあとは、運用の一切を運用会社に委任します。この仕組みは、運用の手間を不要にする反面、運用会社が倒産すれば投資の破綻を招くというリスクを生むのです。
運用会社の倒産を防ぐ手立てはなく、出資者にできることは「運用に関わる企業」をリサーチする程度。倒産リスクを危惧するのであれば、運用会社の異なる複数のファンドへの分散投資が有効です。

地震や台風などの被災リスク

投資先の太陽光発電所が実物資産である以上、太陽光発電ファンドに投資する場合も被災リスクが懸念されます。
大きな地震や台風により被害を受ければ、売電不能となって想定より運用成績が悪化し、それにともなって出資者に還元される利益も減少する可能性があることに留意してください。

発電量を左右する天候リスク

実際に太陽光発電所を運用するケースと同様、太陽光発電ファンドも天候により発電量が左右されるリスクをはらんでいます。そのため、悪条件な天候が続けば、利回りが想定を下回る懸念があります。収支シミュレーションは実際の日射量をもとに作成されるため、利益が大幅に下振れする可能性は高くないものの、リスクの1つとして念頭に置いておくべきでしょう。
なお、発電量が上振れするケースもあるため、天候リスクは必ずしもネガティブな側面だけを持つわけではありません。

具体例!投資費用・利回り

太陽光発電ファンドにおける、投資費用・利回りがどの程度なのか分かるよう、実際に出資者を募っている案件をもとに比較表を作成しました。

 1口の価格目標利回り運用期間
ファンドA1万円5.0%1年間
ファンドB 5万円7.0%11ヶ月
ファンドC50万円32.0%(10年後に償還される時点の利息)10年間

1口の価格には幅がありますが、いずれも数万〜数十万円で収まっており、数千万円の初期費用を要する太陽光発電所に比べて安価です。上記の太陽光発電ファンドは、運用期間が設定されており中途解約ができないものの、案件によって運用期間はさまざまであるため希望に応じて無理のない投資ができます。

なお、いずれの太陽光発電ファンドの注意事項にも、ファンド運用が元本保証ではないと記されています。確率はともかく、リターンを全く得られない可能性があることも念頭に置いてください。

上場しているインフラファンド

記事前半で解説した通り、太陽光発電ファンドは2種類に大別できます。先ほど例に挙げた3つの太陽光発電ファンドは、いずれも上場しておらず、自由に解約できず譲渡も制限されているものです。

一方、上場しているインフラファンドは、ETF(上場投資信託)と呼ばれる金融商品に分類され、一般的な株式投資と同じようにパソコンやスマートフォンから証券取引所で売買できます。上場しており、リアルタイムに取引できるインフラファンドは、上場していない太陽光発電ファンドと違って以下のようなメリットがあります。

  • 決まった運用期間はなく、中途解約による違約金が発生しない
  • 証券取引所で売買し、任意のタイミングでキャッシュ化できる
  • 非上場ファンドに比べて情報量、透明性が優れている

上場していない太陽光発電ファンドの多くは運用期間を定めており、かつ運用期間中の解約を認めていない、あるいは中途解約にともなう違約金を設定しています。この特性により、資金の自由度が著しく低下するだけでなく、緊急時に「運用資産をキャッシュ化させる」という選択肢を失うのです。投資は完全な余剰資金で行うものではありますが、不測の事態が起こっても現金として引き出せない点は、大きなリスクだといえます。それに対して、インフラファンドはそもそも解約といった概念がなく、任意のタイミングで自由に売買できます。
ただし、太陽光発電所を始めとする複数の「インフラ施設」へ投資する金融商品であり、より太陽光発電に近いイメージで運用される太陽光発電ファンドとは異なるため、太陽光発電とは別物として捉えるべきでしょう。

上場しているインフラファンド一覧

上場しているインフラファンドは、非上場ファンドよりも選択肢が少なく、上場予定の銘柄を除けば投資先は以下の6つに絞られます。

 1口の価格分配金利回り
タカラレーベン・インフラ投資法人11万9,400円5.87%
いちごグリーンインフラ投資法人6万4,100円5.59%
日本再生可能エネルギーインフラ投資法人10万8,600円5.89%
カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人11万9,600円6.19%
東京インフラ・エネルギー投資法人10万8,000円6.29%
エネクス・インフラ投資法人9万8,900円6.07%

*JAPAN-REIT.COM(情報は2020年1月時点のものを使用)

1口の価格は10万円前後のものが多く、非上場ファンドに比べて価格帯の幅は狭い傾向にあります。そのため、1、2万円で投資を始めたい場合、上場しているインフラファンドは自ずと選択肢から外れるでしょう。

また、リアルタイムに取引できる特性上、需要と供給の変化が価格に反映されやすく、あらゆる要因により日々価格が変動します。譲渡制限があるため価格変動を起こさない非上場のファンドとは異なり、証券取引所が開いている時間帯は頻繁に値動きしている点に留意しなければなりません。

このように、上場しているインフラファンドが万能というわけではなく、それぞれに長所と短所があります。初めから片方に固執するのではなく、メリットやリスクと投資目的を考慮しつつ、最適な選択肢を見定めることをおすすめします。

おわりに

太陽光発電ファンドは、実際の太陽光発電投資と比較して、金銭的な負担や運用の手間がわずかです。 運用会社を挟んで間接的に太陽光発電所を運用するため、太陽光発電投資より投資利回りは低い傾向にありますが、それを差し引いても十分なメリットがあります。
そのため、太陽光発電投資にハードルの高さを感じており、投資に二の足を踏んでいる場合に有力な選択肢となるでしょう。 予想外の事態に悩まされないよう、どの方法を選ぶとしてもメリットだけでなくリスクを含めて検討し、後悔のない投資ができるよう意識することを強くおすすめします。

EnergyShift編集部
EnergyShift編集部

EnergyShift編集部

サステナブルガイドの最新記事