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太陽光発電の補助金はどうなる?

太陽光発電の補助金はどうなる?

2021年03月03日

太陽光発電を導入するには大きな費用が必要ですが、2013年に国からの補助金がなくなりました。国からの補助金はなくなってしまいましたが、導入コストが低減したため、むしろ費用対効果は向上しています。

この記事では、国からの補助金制度がなくなった理由や、現在使用可能なエネルギーに関する補助金制度をご紹介します。

太陽光発電の補助金制度とは

現在は国が交付する太陽光発電の補助金制度はありませんが、過去に2種類の補助金制度がありました。1つ目は、1994年から2006年まで国が新エネルギー財団を通じて住宅用太陽光発電の補助金を交付していました。
その後、2008年に環境省が発表した「低炭素社会づくり行動計画」によって「太陽光発電の導入量の大幅拡大」が目標に掲げられました。これを受けて、2009年1月に「住宅用太陽光発電導入支援対策費補助金制度」が始まり、太陽光発電の普及を促進しました。この制度は2013年まで続きました。
2017年の住宅用太陽光発電(10kW未満)の導入コストは35.4万円/kWでしたが、2009年度は60.7万円/kWと、現在に比べてとても高額。なので補助金を使わないと、太陽光発電の普及が進まない状況でした。また、事業用の補助金はありませんでしたが、事業所での自家消費を想定した補助金が過去にありました。

ではなぜ国が交付する太陽光発電の補助金制度がなくなったのでしょうか?

国の補助金がなくなった理由 

国が交付する太陽光発電の補助金がなくなった理由は、導入コストが低下したため、補助金を使わなくても十分に太陽光発電が普及されるようになったからです。

先述したとおり、2009年度は60.7万円/kWだった導入コストが、2017年には35.4万円/kWにまで低下しています。2020年現在では、25万円/kWを下回るメーカーも登場しています。1994年は、200万円/kWだったとされる導入コストが25年の間に1/10近くまで低減されました。

また、導入コストの低減に伴い、売電価格も2009年の「余剰電力買取制度」による48円/kWhから、2017年の「固定価格買取制度」の31~33円/kWhに下がっています。ですが、導入コストの下げ率が売電価格の下げ率を上回っているため、費用対効果が向上し、補助金がなくなっても太陽光発電の普及が促進される状況になっています。
国からの補助金がなくなっても、それ以上に太陽光発電の費用対効果が向上しているので、太陽光発電導入のメリットもむしろ増しているといえます。

主な補助金制度

先述したように、太陽光発電の補助金制度は現在ありませんが、省エネルギーや、環境保護のための補助金を国や自治体が交付しています。ここでは主な補助金制度である以下の4種類を紹介しますが、各補助金制度や自治体により、補助金の有無や支給条件が様々なので、よく確認してから申請しましょう。

  • VPP補助金
  • ZEH補助金
  • 蓄電池補助金
  • CEV補助金

VPP補助金 

VPPとはバーチャルパワープラント(仮想発電所)の略称です。様々な地域に点在している発電施設や蓄電池、節電できる設備などをIoT技術により遠隔で制御して、一つの発電所のように機能させる技術のことを指します。

VPPは、現在は主に需給調整の手段として期待されています。電気は、石油などと異なり、基本的には蓄えておくことができません(正確には、蓄えておくためには、蓄電池などの大きなコストがかかります)。一方、必要な量は、季節や時間によって変わります。そのため、どこの電力会社も、過去のデータからその時間に必要な電力の需要量を予測し、必要量を供給しています。これを需給調整と呼びます。

以前は、大手電力会社(発送電分離する前の東京電力など)が保有する大型の火力発電所や原子力発電所などを中心に運用していたため、需給調整は、需要予測に合わせて発電所を運転する、というのが一般的でした。それでも、夏の電力消費のピーク時には、契約した事業所に電気の節約をお願いするということも、準備されていました。
しかしこれからは、太陽光発電や風力発電のような、出力が変動する小規模な電源が、全国各地にできていきます。こうした電源は、天候に左右され、発電量の予測や制御は簡単ではありません。そのため、需給調整が複雑になりました。

そこでVPPを使い、各地に点在する発電所の制御や、蓄電池の運用、事業所の節電などをコントロールして、一つの発電所のようにすることで、効率的に需給調整を行うことができます。このVPPを促進するための補助金は、発電所などをとりまとめてコントロールするアグリゲーターと呼ばれる事業者に交付されるため、一般の方が利用する機会はありません。

ZEH補助金 

ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、「ゼッチ」呼ばれます。緊急性が増している地球温暖化問題を改善するため、年間のエネルギー消費量と生み出すエネルギーの収支が「正味ゼロ以下」になる住宅のことを指します。
ZEH補助金は以下の3つのポイントに適合した、新築住宅の建築や既存住宅の改装、または新築マンションに交付されます。

  • 断熱性能の向上(できるだけ熱を逃がさず、冷暖房の稼働を抑えて省エネ)
  • 高効率な設備・システムの導入(エネルギー効率の向上で省エネ)
  • 再エネの導入(エネルギーを生み出す)

住宅用は「ZEH」「ZEH+」「ZEH+R」の3種類、マンション用は「超高層ZEH-M」と「高層ZEH-M」の2種類です。補助額はそれぞれ以下のようになっています。

  • ZEH:70万円/戸
  • ZEH+:115万円/戸
  • ZEH+R:125万円/戸+以下のどちらか
    ・蓄電池システムの購入費用2万円/kWh(上限有り)
    ・太陽熱利用温水システムの購入費用(液体式は17万円/戸、空気式は60万円/戸)
  • 超高層ZEH-M:補助対象経費の2/3以内上限5億円/年、10億円/事業
  • 高層ZEH-M:補助対象経費の1/2以内上限4億円/年、8億円/事業

交付条件等、詳しくは「ZEH補助金について」をご覧ください。

また、類似する補助金にはZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)があります。省エネルギー性能の高い建物(事務所、スーパー、病院、学校、ホテル等)の新築・改築等を行う建築主等へ支援されます。光熱費の削減や、地球温暖化対策に有効なことから注目されています。

蓄電池補助金

家庭に太陽光発電を導入する時に、蓄電池も導入する家庭が増えています。太陽光パネルを導入する家庭は、使用する電力以外の余剰電力を、固定価格買取制度を使って売電するのが一般的です。ですが、太陽光パネルの寿命が20~30年、あるいはそれ以上と言われているのに対し、固定価格買取制度の期間は10年なので、11年目以降の売電価格が安くなってしまいます。
そこで蓄電池を導入すれば、太陽光発電での発電量が多い日中に蓄電池に電力を貯めておいて、夜間に使うことができます。こうすることで、余剰電力を安い価格で売電するよりも、費用対効果を向上できます。

また、今後は固定価格買い取り制度の価格が下がっていくと予測されるため、売電せずに蓄電池に貯めて使った方が費用対効果がよくなることも考えられます。
蓄電池があれば、エネルギーの自給自足が可能になり、災害等の停電時にも強くなるため、普及が期待されています。現在国からの補助金はありませんが、都道府県や市町村からの補助金があります。蓄電池はまだまだ高価ですが、補助金を活用することで導入のハードルが下がるでしょう。

補助金の有無や支給条件など、自治体によってバラバラなので、都道府県や市町村のホームページを見たり、問い合わせをして確認しましょう。

CEV補助金

CEVとはクリーンエナジー自動車のことです。CO2や有害ガスなどの排出量が少ないため、地球温暖化や大気汚染を改善するために普及が期待されています卒FIT後の余剰電力で、蓄電池を搭載するCEVに充電することもできますし、家庭用電源としても活用可能な車種もあるため、省エネやエネルギー効率の向上のためにも使用可能です。ですが車両価格が高いため、国が補助金を交付して購入を促しています。

クリーンエナジー自動車は、電気自動車・プラグインハイブリッド自動車・燃料電池自動車・クリーンディーゼル自動車の4種類です。CEV補助金は、この4種類のいずれかに適合すると国が認めた車種を、新車で購入する人に交付されます。
補助金額は車種やグレードによって以下のように異なります。

  1. 電気自動車
    ・普通自動車(3ナンバー車)
     補助金額=一充電走行距離1km当たりの補助単価2千円/km×(一充電走行距離一200)
    ・普通自動車(3ナンバー車以外)・小型自動車・軽自動車
     補助金額=ー充電走行距離1km当りの補助単価1千円/km×ー充電走行距離
  2. プラグインハイブリッド自動車(EV走行換算距離が40km以上の車両に限る)
    ・一律20万円
  3. 燃料電池自動車、クリーンディーゼル自動車、電気自動車(側車付二輪自動車・原動付自動車)
    ・補助金額=(車両本体価格ー基準額)×補助率
    *車両本体価格、基準額、補助率の詳細は「次世代自動車振興センター」のサイトでご覧ください。

さらに、国だけでなく、都道府県や市町村などの自治体でも補助金を支給している場合があります。これらを上手く活用することで、国から40万円+県から40万円+市から40万円=120万円の補助金をもらえる可能性があるのです。
補助金制度の有無や支給条件は、自治体ごとに異なりますので、必ず自治体の公式サイトを見たり、問い合わせをして、確認をしましょう。補助金ではなく、税優遇を受けられる場合もあります。

補助金制度を利用する際の注意点 

先述したように、様々な補助金が国や自治体から交付されています。ですが、補助金制度を利用する際に注意すべきポイントがあるので、しっかり確認してから申請をしましょう。

  • 公募期間に気をつける

補助金には公募期間があります。令和元年のZEH補助金では、以下のように一次から三次まで一般公募期間がありました。

・一次公募 2019年6月3日(月)~2019年6月7日(金) 17:00必着
・二次公募 2019年7月1日(月)~2019年7月5日(金) 17:00必着
・三次公募 2019年8月5日(月)~2019年8月9日(金) 17:00必着

公募期間を逃すと補助金をもらえません。ZEH補助金をもらう場合は、公募期間前に間取りや設備等を決めて置かなければならないので、早めの計画が重要です。

  • 国なのか、都道府県なのか、市町村なのかを確認する

様々な補助金が国や自治体から交付されていますが、その補助金は国が交付するものなのか、都道府県が交付するものなのか、市町村が交付するものなのか、確認しましょう。中にはCEV補助金のように、国も、都道府県も、市町村も交付している補助金もあります。申請しようとしている補助金がどこから交付されているものかを理解していないと、混乱してしまいスムーズに手続きが進みません。

  • 先着順や早期終了するものもある

交付金には予算が決められていて、先着順のものや、早期終了してしまうものもあります。「ゆっくり申請しても大丈夫」と安心していると交付金を受けられなくなってしまう場合もあるので、申請はできるだけ早く終わらせるようにしましょう。
また、年度によっても交付金の有無や金額、条件などが変更される場合もあるため、毎年確認が必要です。

  • 手続きは業者に代行してもらうのがおすすめ

これまで解説してきたように、補助金の申請には様々な要素が絡んできて複雑なため、専門業者に頼むといいでしょう。ZEH補助金なら新築する住宅メーカー、蓄電池補助金なら蓄電池メーカー、CEV補助金ならCEV販売店など購入する際に補助金申請の手続きを代行してくれる場合がほとんどです。
多少のコストはかかりますが、確実に補助金を受け取るためにも任せることをおすすめします。

おわりに 

現在、太陽光発電だけを対象とした補助金はありません。それは、FITによって採算が見込まれることと、太陽光発電そのものの導入コストが大幅に下がったことによります。一方、ZEH補助金、蓄電池補助金、CEV補助金など、新たな技術を通じて省エネや再エネを推進し、地球温暖化や大気汚染の改善につながる補助金が国や自治体から交付されています。

太陽光発電はFITを通いて売電し、買取期間終了後は蓄電池補助金を使ってエネルギーの自給自足をすることも可能になりました。さらにZEH補助金を使って環境に優しい家を建てたり、CEV補助金を使って環境に優しい車に乗り換えたりなど、補助金を上手に使えば、様々な形で環境保護に貢献できる時代になりました。 しかもこれらは費用対効果に優れる場合も多いため、環境保護に貢献しつつ、家計を楽にする可能性も秘めています。使える補助金があれば、積極的に活用してみてはいかがでしょうか。

EnergyShift編集部
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