29兆ドルを運用する金融機関220社が、1,600社にSBTの設定を要求 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

29兆ドルを運用する金融機関220社が、1,600社にSBTの設定を要求

29兆ドルを運用する金融機関220社が、1,600社にSBTの設定を要求

2021年09月29日

2021年9月29日、29.3兆ドルの資産を運用する金融機関220社が、10月末から開催されるCOP26(気候変動枠組み条約第26回締約国会議)を前に、世界で最も環境影響が大きい企業、約1,600社に対し、SBT(Science Based Target)、すなわち1.5℃の温暖化シナリオと整合的な科学に基づく排出削減目標を設定するように求めた。

要求を行なった金融機関の中には、世界的な投融資機関が含まれ、日本からは富国生命投資顧問、日興アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントなどが参加している。

今回のSBTキャンペーンは、環境情報開示システムを運用する非営利団体CDPによってコーディネートされている。昨年も同様のキャンペーンを開催しているが、昨年と比較すると、参加金融機関は60%、資産規模で51%増加している。

また、今回のSBTキャンペーンには、金融機関だけではなく、CDPを通じてサプライチェーンのグリーン化を図っているCDPサプライチェーンメンバーの大手購買企業26社が参加している。具体的には、ロレアル、ルノーグループ、バイエル、アストラゼネカ、HPなどで、年間調達量は5,000億ドルに達する。

一方、要求された1,600社には、デューク・エナジー、現代自動車、ルフトハンザ、日本製鉄、サムスン、タタ・スチールなどが含まれる。対象企業は、時価総額で41兆ドルを超えており、スコープ1、2(事業所からの排出と購入する電力からの排出)の温室効果ガス(GHG)排出量は、米国と欧州の年間排出量の合計を超えるという。一方、世界の時価総額の20%を超える企業はすでにSBTイニシアティブに加わっている。

今回のキャンペーンについて、金融機関は次のようなコメントをしている。

富国生命投資顧問株式会社代表取締役社⾧の奥本郷司氏は、「企業が自ら気候変動に係るリスクと機会を見出し、経営戦略に盛り込むことで持続的成⾧が可能になることから、今や、気候変動問題は、企業経営の重要課題の一つと考えます。そして、企業が自らの現在および将来の姿を正確に把握し、投資家に対する説明責任を全うする上で、SBTは重要なツールであると考えます」と述べている。

日興アセットマネジメント専務執行役員兼運用グローバルヘッド兼CIOの辻村裕樹氏は、「グローバルにビジネスを展開する資産運用会社として、ESGは⾧期的な企業価値の創造に必要不可欠であり、持続可能な経済成⾧の実現に資するものと強く信じています。社会や規制当局が求める変化に備えが整わない企業は、好機を逃すだけでなく、罰金やコスト増のリスクに直面することでしょう」と述べている。

三井住友DSアセットマネジメント責任投資オフィサーの坂口淳一氏は、「三環境問題は人間の暮らしを脅かす現在進行中の明確な危機であると考えます。投資先企業がSBTを設定できないことは重大なリスク要因となり、投資家に当該企業の持続可能性について疑念を抱かせることになります」と述べている。

昨年度のCDPのSBTキャンペーンにおいては、SBTイニシアティブの参加企業増に大きく貢献したという。ドイツの年間GHG排出量に相当し、時価総額5.2兆ドルに相当する154社が、この1年間に加わっている。現在、世界全体で1,775社を超える企業がSBTイニシアティブに加わっており、そのうち550社超が1.5℃シナリオの目標を設定している。CDPはこのキャンペーンの成果が評価される2022年9月まで、対象企業にエンゲージメントを行うという。

関連記事
気候変動は金融リスクである―TCFDのこれまでと気温上昇スコア管理のトレンド 気候変動問題と企業のコミットメント 2
サイエンス・ベースド・ターゲット・イニシアチブ(SBTi)、新戦略で企業の目標設定を1.5℃に設定

EnergyShift編集部
EnergyShift編集部

EnergyShift編集部

ニュースの最新記事