時代を変える日本発の技術 世界最高効率のフィルム状太陽電池 | EnergyShift

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時代を変える日本発の技術 世界最高効率のフィルム状太陽電池

時代を変える日本発の技術 世界最高効率のフィルム状太陽電池

2021年09月27日

日本勢が太陽光発電のフィールドでイノベーションを起こしている。日本人が発明した塗る太陽電池とも言われる次世代太陽電池ペロブスカイトで、東芝がフィルム型で世界最高効率をたたき出した。日本のみならず、世界の脱炭素を進展させる「夢の電池」について、ゆーだいこと前田雄大が解説する。

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ペロブスカイト太陽電池の何が凄いのか

ペロブスカイト太陽電池とは、色々な問題を解決してくれる可能性がある、夢のある電池だ。

つまり、イノベーションが続けば、日本がリアルに世界に対して脱炭素で処方箋を提供できる、日本の脱炭素化が進む、そうしたことが期待される技術である。

そこで今回は、そもそもペロブスカイト太陽電池とは何か。何が凄いのかを紹介した上で、次の3つの論点について解説していきたい。

  1. 東芝が世界最高効率を樹立
  2. ペロブスカイト太陽電池が社会実装されると何が凄いのか
  3. 日本発の技術の裏に潜む、大きな落とし穴

まずは、そもそもペロブスカイト太陽電池とは何か。何が凄いのか説明していこう。

いま、太陽電池と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、シリコンの入ったソーラーパネルだろう。太陽の光エネルギーを直接電気に変換する太陽電池、その種類は、原料として使われる半導体によって実は様々あるのだが、現在量産されている太陽電池の多くは、「シリコン系太陽電池」と「化合物系太陽電池」と呼ばれるタイプである。

これらの特徴は、25%を達成するなどの高変換効率が挙げられる一方で、材料や製造コストが比較的高いというデメリットがある。しかも、シリコン系太陽電池は、中国が世界シェアの大部分を持っており、中国リスク、さらに原料生産に関しては新疆ウイグル問題との関連もある。以前、解説したとおり、アメリカが制裁を課すなど、不安定要因もある。

さらに、シリコン系太陽電池はシリコンが厚く、曲げることができない、という点から、設置場所が限られるという制約がある。

そこで注目をされているのが、ペロブスカイト太陽電池だ。太陽光を電気に変換するという意味では一緒だが、構造がまったく異なる。

使うのはペロブスカイトと呼ばれる結晶で、このような構造をしている。


出典:国立研究開発法人 科学技術振興機構

この結晶を用いてペロブスカイト膜というものを作り、太陽電池に加工するのだが、このペロブスカイト膜、塗布技術で容易に作製できるという驚きの特性がある。この特性ゆえに、塗る電池と呼ばれているのだ。

これにより、既存の太陽電池よりも低価格を実現できるとされている。国際エネルギー機関(IEA)が「これからのエネルギーの王様は太陽光である」と述べたが、その背景には、世界的な太陽光発電のコスト低下がある。太陽光パネルの価格は劇的に下がってきており、シリコンは今後さらに下がるのではないかとされている。そうした状況であっても、コスト安が実現できるというペロブスカイトの特性は、中国が席巻する太陽電池市場に対抗する上でも、そして実際に消費者が使うにあたっても非常に魅力的だ。

さらに、このペロブスカイト太陽電池が凄いのは、製造するときの温度を、シリコン系に比べて低くできる点にある。この特性によって、プラスチックを痛めない範囲に収めることができるので、プラスチックフィルムタイプの太陽電池の製造が可能になる。

しかも、シリコン系太陽電池は薄くすると太陽光のエネルギーが吸収できなくなるので、変換効率が大きく低下するのに対し、ペロブスカイト太陽電池は、太陽光の吸収係数が大きいため、高い変換効率を維持したフィルムタイプ太陽電池の実現が可能とされている。

今回の解説のポイントはまさに、このフィルム状だ。フィルム状になれば、当然軽く、曲げられる、つまり、フレキシブルで軽量な太陽電池が実現でき、シリコン系太陽電池では困難なところにも設置することが可能になるというわけだ。

脱炭素時代にぴったりな、この太陽電池を生み出したのは誰か・・・次ページへ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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