パワーコンディショナーの役割と選び方 | EnergyShift

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パワーコンディショナーの役割と選び方

パワーコンディショナーの役割と選び方

2021年03月02日

太陽光発電システムに欠かせないパワーコンディショナー(パワコン)。ここでは、そのパワコンにスポットをあてて、その役割や、多種多様なパワコンの選び方、使用上の注意などを紹介します。

パワーコンディショナーとは

パワーコンディショナー(以下、パワコン)とは、電気の直流と交流を変換する機械です。 直流というのは、乾電池からの電気のように、+とーが決まっている電気です。一方、交流とは、電力会社から届く電気のように、+とーが一定の周波数で入れ替わっている電気です。太陽電池パネルがつくりだす電気は、直流の電気ですが、これを、家庭で使うときや、電力会社の送電線にもどすときには、交流にしなくてはいけません。そのため、パワコンが必要になります。
パワコンは、太陽光発電だけではなく、蓄電池と接続するためにもつかわれています。これも、蓄電池には直流にした電気をたくわえているからです。

まとめるとパワコンとは太陽電池で発電した直流電力を一般に使用できる交流電力に変換し、商用電源系統に連系するための装置です。こうしたしくみを通じて、余剰電力があるときは、電力会社へ逆潮流することができます。 さらに、後述するように、パワコンはこれ以外にもさまざまな役割を果たしています。

パワーコンディショナーの役割

では、パワコンは直流と交流の変換以外に、どのような役割を果たしているのでしょうか? パワコンには先に述べた電力を変換する以外にも色々と重要な役割があります。製造しているメーカーによって違いもありますが、代表的なパワコンの役割をここでは、ご紹介します。

  • 最大電力追従制御(MPPT)

太陽光発電の不利な点といえば、日照時間や天候によって発電量が左右されることです。特に曇りの場合、太陽光パネルで発電される電力は、電圧と電流の変動が大きくなってしまい、発電量は安定しません。そのような時でも 、太陽光パネルの発電量を最大化できるようにパワコンが調整 してくれます。

その機能を、MPPT(最大電力点追従制御)といいます。太陽光発電パネルというのは仕組み上、電流と電圧が一定の組み合わせの時にしか効率的に発電できません。天候などの要因によって電圧と電流が変動した時に、電圧と電流を組み合わせ調整することでより多くの安定した電力を供給できるようにし、発電量が最大となるようにする機能がMPPTです。
MPPTは、日射量や温度によって常に変動する電圧と電流から、発電量が最大になる電圧と電流の組み合わせ(最大出力点)を自動で見つけ出して発電量を維持できるように制御してくれます。パワコンが自動で太陽光発電システムの能力を最大限引き出してくれる機能と言えるでしょう。

  • 系統連係保護機能

系統連系保護機能もパワコンの大事な役割のひとつです。系統連係というのは電力会社から電気を買う時、太陽光発電で自家消費を上回った分を余剰電力として売電する際に必要になります。周波数の上昇や低下を検出したり、過電圧や電圧不足、系統電力の停電などを検出し、太陽光発電システムを電力会社の電力と切り離す働きをしてくれます。

電力会社が供給する電力は、周波数や電圧などを一定品質に維持しています。しかし、電線によって自宅と外の電線をつないでいるため、万が一トラブルが発生すると、自分の家だけでなく地域全体を巻き込んでしまう可能性があります。
そういった事態を防ぐための機能が系統連系保護機能です。パワコン自身が具体的に周波数の上昇や低下を検出したり、過電圧や電圧不足、系統電力の停電を検出し、太陽光発電システムを電気系統から切り離したりする機能など、系統電圧の上昇を抑制し保護するためのものです。万が一、異常が発生した場合には、パワーコンディショナーが出力を遮断し、自宅の家電製品や電気系統を守って事故を防いでくれます。

  • 過積載

過積載とは、パワコンの容量以上に多くの太陽光パネルを設置することです。例えば4kWのパワコンに、合計5kWの太陽光パネルを設置するようなケースです。
過積載している場合、パワコンの容量以上に太陽光パネルが発電した電力は捨てることになりますが、 太陽光パネルが最大に発電できる時間帯や気象条件(ピーク時)は限られています。 つまり、ピーク時にパワコンの容量以上に太陽光パネルが発電し電力を捨てたとしても、それ以外の時間帯では発電量が増えるため、1年を通してより多くの発電量を生み出せることができます。
とはいえ、いくらでも過積載ができるわけではなく、パワコンによってメーカーが保証する範囲が決まっています。場合によっては、メーカーの補償外になることもあるので注意してください。

パワーコンディショナーの種類 

パワコンを選ぶにあたって、いくつかの分類方法があるので、それを紹介します。

  • マルチストリング方式

マルチストストリング方式とは、回線がいくつもあるパワコンです。通常は回線が1つしかないため、パワコンに合わせてパネルの枚数をそろえないといけませんが、マルチストリング方式では、パネルの枚数を揃える必要がないため、設置出来る範囲いっぱいにパネルを設置出来るというメリットがあります。通常のパワコンに比べると価格は高くなります。

  • 屋内設置・屋外設置タイプ

パワコンには、屋内設置タイプと、屋外設置タイプの2つのタイプが存在します。パワコンは太陽光パネルと比べるとトラブルの可能性も高いので、基本的に屋内への設置が薦められています。

屋外設置タイプのパワコンの場合、接続箱が内蔵されているものもあります。屋外設置タイプの場合、パワコンとは別に、屋外設置用設備の費用も発生します。費用は大体5~10万円程度となりますので、その費用も想定しておきましょう。

  • 単相三線・三相三線

上記の分類のほかに、単相式、三相式という種類があります。単相式のパワコンと三相式のパワコン、どんな違いがあるのでしょうか。まずは二種類の違いを説明していきます。きちんと理解することで最大限の効果を得ましょう。

  • 単相式

単相二線100V(単相)と単相三線200V(単相)の2種類があります。 単相二線は2本の電線で電気を送るしくみで、100Vの電気を供給しています。 単相三線は3本の電線で電気を送るしくみで、どの2本の線を選ぶかによって、100Vの電気と200Vの電気のいずれかが使えるようになっています。

主に使われているのは、単相三線で、一般の住宅などで使われています。送電効率は低いが、安全性は高くなります。また、単相には、太陽光発電システムで発電した直流電流が電力会社の電力系統に流れないように遮断する装置である「絶縁トランス」が不要になる、というメリットがあります。

絶縁トランスをパワコン部分に設置すると変換効率が悪くなるだけではなく、絶縁トランスを動かすための電気代も太陽光発電システムの設置者の負担になります。絶縁トランス導入の費用もかかります。その点、単相100Vであればトランスレス方式のパワコンでも問題無く電力系統へと接続できます。こうした理由から、住宅用の太陽光発電システムでは安価な単相用のパワコンの方が使われています。

  • 三相式

三相三線という方式が一般的です。3本の線によって電気を送ります。単相三線と異なり、3本の線すべてを使って電気を送るしくみです。たくさんの電力を一度に送ることができるため小さな工場や商店など。モーターや業務用エアコンなどに使われています。送電効率は高いが、安全性は低くなります。

三相200Vで電力系統に接続する場合、「絶縁トランス」を設置するか、「絶縁機能つきのパワコン」を選ぶ必要があります。絶縁機能つきのパワコンは高周波絶縁トランス方式といいます。しかし、三相200Vで電力系統に接続しても、単相で接続する場合と変換効率はほとんど変わらず、あまりメリットはありません。パワコンの価格も高くなります。

しかし、野立て太陽光発電システムを設置したい場合などのように、周囲の電線が三相式にしか対応していない場合は、パワコンも三相式を選ばざるをえません。こういった際にも、きちんと自分の地域の電力会社や、導入における施工業者と確認することが大事になってきます。

パワーコンディショナーの寿命と故障の原因

パワコンには寿命があります。機械ですから、長期間使用すれば劣化します。また、故障も起こりますが、そこには原因があります。

平均寿命

電化製品なので寿命は決して長くはありません。太陽光発電協会(JPEA)の公式サイトによると「パワコンの寿命は10~15年程度」です。平均的な寿命でいうと10年くらい。また、正常に動作していても10年を目安に点検や交換を行うのがいいとされています。

ただし、パワコンのメーカーでは保証期間を設けており、この期間内であれば無償交換をしてくれることがほとんどです。また、有償で保証期間を延ばしてくれるメーカーもあります。こうしたアフターサービスも、パワコンを選ぶポイントとなります。

故障の原因

寿命にいたる前に、パワコンが故障することがあります。 主に、どのような原因で故障するのでしょうか。

・熱

パワコンは機械なので熱には弱いといえます。パワコン内部では、電気を変換するさいなどに、熱を発生させますこの熱を逃がすために、換気装置がついていますが、ここにほこりなどが入ると、やはり故障の原因となるので、換気フィルターがついています。 このフィルターがつまるなどで、パワコンの熱が十分に放散されないと、パワコンはダメージを受けることになります。
したがって換気装置などのケアなどをしっかり行い、きちんと放熱できる環境を維持することが大事です。そのため、換気フィルターなどの掃除はしっかりとやりましょう。

・水

電化製品は一般的に水に弱いものです。当然、水浸しになっては使い物になりません。屋外にパワコンを設置する場合は、台風や豪雨の場合を想定し、内部に水が入らないように、設置の際に必ず確認しましょう。

・その他、経年劣化

機械の部品は、経年による劣化は避けられません。長く使うためにも日々のチェックやケア、定期的なメンテナンスが大切です。一部の部品を取り替えるのと、本体を買い換えるのじゃコストも雲泥の差になります。

使用の注意点

パワコンはブレーカーの近くに付けたほうが発電の効率が上がります。しかし、ブレーカーの周りには案外スペースが無いものです。パワコンのチェックやメンテナンスの際は上下左右からチェックすることが大事ですし、交換や中を確認するなんて時も十分なスペースが無いと難しいです。設置場所には余裕を持ちましょう。

屋外に設置する際は、エアコンの室外機くらいの音なので心配はないかと思いますが、屋内に設置する際は、意外と音が気になってしまう人もいるようです。定期的な機械音、人によってはモスキート音のようなのが気になることもあるそうです。

パワーコンディショナーを選ぶポイント

  • 効率

太陽光パネルが蓄えた電気をどのくらい効率よく取り込めるのかが、パワコンを選ぶ際に一番大事なことになります。カタログなどでしっかり確認して、もっとも効率のいいパワコンを選びましょう。

  • 定格出力

メーカーごとに、さまざまな定格出力のパワコンを製造しています。計画している太陽光発電の規模、構成似合った定格出力のパワコンを選ぶ必要があります。

  • 過積載はどのくらいできるか

過積載率とも言いますが、パワコンの容量を上回る春電容量でパネルをどのくらいまで設置できるかということです。 先述のように過積載でメーカーの保証外になっては本末転倒なので、まずはメーカーに確認。どのくらい積めるのか、自分の場合、どのくらいパネルを置けるのかをしっかり考えて選びましょう。

  • 塩害対策は?

パワコンは水に弱い機器ですが、それ以上に塩害には弱い機器です。したがって、海に近い地域で太陽光発電をするとなると、海面からの風の影響などで塩害が出る可能性があります。パワコンに塩害に対する保証があるかないかを確認しておくことも重要です。塩害については、一般的には海岸から500m〜2km程度の距離は塩害地域、500m〜1km以下では重塩害地域とするメーカーもあります。
防水性能の高いパワコンでは300mまで保証可能というものや、水しぶきが掛からなければOKというパワコンも有ります。必ず確認してください。

  • 騒音は?

意外と音がするパワコンですから、もちろん住宅街に設置する場合は、周りにとって騒音にならないかどうかも重要な問題です。単相式はともかく、三相式のパワコンは大きな音が出るので、確認が必要です。

  • メンテナンスのしやすさ

屋外、屋内に限らず、パワコンのメンテナンスは大切です。特に屋外の場合、虫が入る可能性をはじめ、ごみや土埃が入ってたまることもあります。これらは効率が下がる原因、故障の原因となります。したがって、メンテナンスのしやすさも重視して選ぶことが大切です。特に内部の熱を逃がし、機器を冷却するためのファンはごみがつきやすく、こうした部分について、メンテナンスしやすいかどうかは重要なチェックポイントです。

  • サイズ(大きさ)

パワコンは熱くなると変換効率が下がります。したがって、日陰に置くのがいいのですが、スペースには限りがあります。設置しようとしている場所に対応した大きさかどうか、サイズを確認することも必要です。

  • 設置方法

複数代のパワコンを設置する場合、ある程度の距離を確保してくださいと指定するメーカーもあります。こうしたメーカーの指示にしたがって、計画した場所に設置できるのかどうか、確認することが必要です。パワコンの場所を先に決めた場合、製品によっては、計画通りに設置できないということにもなりかねません。

おわりに 

パワコンの役割や選び方を見てきました。まずは効率のいいパワコンを選ぶことが大事です。パワコンには、電気の変換の他にも、様々な機能が備わっています。どのメーカーも基本的な機能は変わりませんが、特性が異なっており、そうした中から適切なものを選ぶことが求められます。 パワコンを設置した後はメンテナンスやケアを欠かさないようにして、パワコンが最大の能力を発揮できる状況を維持していくことも大切です。

EnergyShift編集部
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