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太陽光発電2030年度15%、次期エネルギー基本計画案まとまる

太陽光発電2030年度15%、次期エネルギー基本計画案まとまる

2021年08月04日

脱炭素に向けたエネルギー政策のあり方を示す、次期エネルギー基本計画の修正案が8月4日示された。再生可能エネルギーの導入を最優先課題とし、2030年度の太陽光発電の割合を15%に引き上げる。修正案は賛成多数で了承され、今後、国民の意見を幅広く聞くパブリックコメントを経たのち、10月にも閣議決定される。

2030年度の太陽光発電導入量、1.8倍の100GW

経済産業省は総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第48回)において、次期エネルギー基本計画で焦点となっていた2030年度の電源構成について、太陽光発電の割合を「15%」、風力発電を「6%」と今の基本計画と比べそれぞれ8ポイント、4.3ポイント引き上げる修正案を提示した。

今回の改訂の焦点は、2030年温室効果ガス46%削減の達成に向け、再エネなどCO2を排出しない電力をどれだけ積み増すかであった。経産省は7月21日に再エネの電源比率を「36〜38%」に引き上げ、原子力は「20〜22%」、燃焼時にCO2を排出しない水素・アンモニアを1%にし、脱炭素電源を約60%にする素案を公表していた。

8月4日の分科会では、暫定値としながらも再エネ36〜38%の実現に向け、各電源比率が提示された。

試算によると、太陽光発電が約15%、風力発電約6%、地熱約1%、水力約10%、バイオマス約5%とした。導入の中心が太陽光発電だ。現時点での導入量は55.8GWだが、2030年度に2倍近くとなる100GWまで増やす。

だが、太陽光発電の導入量はここ数年伸び悩み、2020年度の導入量は1.5GWにとどまる。2021年度の導入量も同水準が見込まれている。大規模な発電所を開発できる適地が減り、さらに開発に伴う森林伐採に対し、環境破壊を引き起こすとして地域住民とトラブルが増加していることが背景にある。

経産省は、新築住宅の6割に太陽光発電を搭載させるといった政策強化によって2030年までに年間導入量を6GW規模まで回復させる方針だが、目標達成はそう簡単ではない。

今の基本計画と次期基本計画の再エネ水準の変化は次のとおりである。

太陽光発電 64GW → 100GW
陸上風力 9.2GW → 15.9GW
洋上風力 0.8GW → 3.7GW
地熱 1.4〜1.6GW → 1.5GW
水力 48.5〜49.3GW → 50.7GW
バイオマス 6〜7GW → 8.0GW

帳尻合わせの電源構成は意味がないと一人反対

改定案に対し、橘川武郎 国際大学副学長は帳尻合わせの電源構成は意味がないとし、7月21日の分科会に続き、改めて反対意見を表明した。

橘川氏は、「この数字(電源構成)をつくってしまったがために、2030年度の天然ガス(LNG)調達量が5,500万トンを下回る。今よりも2,000万トン以上減る水準だ」と指摘した。

天然ガスに関しては、一部メディアから「日本はLNG使用を減らすのではないか」という報道が出されており、「これまで築き上げてきたLNG調達のポジションを失い、量、コストの両面で影響を受け、最終的に電力の安価かつ、安定供給に支障が出る」との懸念が浮上している。

橘川氏は「ブルームバーグなどの報道で世界に衝撃を与えた。中国や韓国に比べて非常に悪い条件で買わされるということが始まっている」と述べた。

続いて、電力の総需要についても疑問を呈した。「2050年には3割から5割増える試算だが、2030年は1割減る。つまり、分母を減らさなければ再エネと原子力の比率を高められないからだ」と帳尻合わせを指摘。そのうえで「省エネの深掘りの域を超えて、鉄鋼業や紙パルプ産業を狙い撃ちし、産業の縮小によってCO2を削減させようという考えが一部あるのではないか」と述べた。

最後に、「原子力の新増設と立て替えが必要だと訴えていた委員の方々が、この案に賛成される意味がわからない。この原案を読む限り、原子力の将来に関する覚悟も責任も何も読み取ることができない」とし、再考を促した。

10月にも閣議決定する見込み

原子力政策について、「原子力を持続的に活用するのならば、2050年の必要な規模を示すべきだ」(杉本達治 福井県知事)、「新増設、立て替え含めた真正面の議論は避けられない。早晩議論すべきだ」(増田寛也 東京大学公共政策大学院客員教授)といった意見が出たが、改定案に関しては橘川氏を除く全委員が賛成を表明。今回の委員の修正を加えたものが、分科会の答申となる。

2020年10月から始まった第6次エネルギー基本計画案がまとまった。今後、パブリックコメントなどで国民の意見を幅広く聞き、10月にも閣議決定される見込みだ。

だが、エネルギー基本計画の達成に向けては乗り越えるべき課題も多い。

8月3日、経産省は2030年時点における新たな発電コストの試算を公表した。事業用の太陽光発電は1kWhあたり8.2〜11.8円となり、原子力含めたすべての電源の中でもっとも安くなる。ただし、雨や夜間など太陽光発電が発電できない時間帯は火力発電などのバックアップが欠かせない。こうした電力システム全体に与えるコストを反映した限界コスト*だと、事業用太陽光発電は18.9円となる。原子力の限界コストは14.4円で、11.2円のガス火力が最安となる。

再エネを主力電源化するためには、こうした限界コスト含めた費用をいかに抑えるかなどの課題の解決が必要になる。

*システム統合を反映した電源別限界コストの試算 資料(2021年8月3日)

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(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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