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古くて新しい「重力蓄電」は日本でも普及する? ベンチャーが新発想で参戦

古くて新しい「重力蓄電」は日本でも普及する? ベンチャーが新発想で参戦

2021年12月03日

再エネの拡大と同時に必要になってくる調整力として今注目を集めている「重力蓄電」。位置エネルギーを使ったこの古くて新しいバッテリーとは。

再エネ拡大に必須の調整力

再生可能エネルギー、自然エネルギーが拡大するためにはその調整力が必要になる。再生可能エネルギーが多くなればなるほど、発電できないとき(太陽が出ていない、風が吹かないなど)の柔軟(フレキシブル)な調整力が必要になる。その柔軟性にはいくつもの種類が考えられる。たとえば、電力の広域的運用や、VPP、そしてもちろん、蓄電技術だ。

蓄電技術(電力貯蔵技術・Energy Storage System)にもいくつかある。大規模で、多く使われているのが揚水式水力発電だ。また、近年普及が進んでいるのはEVにも使われるリチウムイオン電池になる。バッテリーということでは全固体電池も開発が進んでいる。

その蓄電技術に、古くて新しい技術が注目されている。重力による蓄電だ。あのニュートンが発見した重力による位置エネルギーを利用する。重さのあるものが、高い位置にあると位置エネルギーは高くなる。

難しく考えなくてもいい。要は、あるエネルギーを使って低い位置から高い位置に重いものを持ち上げる。これを、高い位置から低い位置に落ちるときに発生するエネルギーを使うのが、重力による蓄電になる。重力蓄電(Gravity Storage)などという。

実は揚水式水力発電も同じものだ。電力を使い、下池から上池に水を持ち上げる。これが蓄電。発電は、上池から下池に水を落とすときにタービンを回せばいい。


揚水式水力発電 関西電力より

コンクリートブロックを上げて下ろす蓄電技術

この揚水式水力発電を知って、「これは水でなくてもいいのではないか」と思いつき、重力蓄電の会社をベンチャーで立ち上げ、実際に資金獲得し事業とし、世界で注目を集めている会社がある。スイスとアメリカに本拠地があるEnergy Vaultだ。

Energy Vaultは水の代わりにひとつ35トンのコンクリートブロックを使う。引きあげる方式は2つあり、ひとつはタワー型。もうひとつはビル型になる。

タワー型では、屋上にクレーンが置かれる。クレーンでブロックを積み上げる(充電)、使うまで高い位置においたままにする(蓄電)。それを下に落とすときにクレーンの機械式モーターが回り、発電になる。

35MWhの場合、クレーンの高さは165m、ブロックは棟のように円筒型に積み上げるので直径60m。30階建てのビルほどになる。ブロックは6,000から7,000個。

もうひとつのビル型でもコンクリートブロックを使う。こちらはちょうど立体駐車場のようなもので、充電時にはブロックが上の階に整然と並べられていく。おいておけば蓄電。使うときは下に落とす。このシステムは10MWh単位で構築でき、数GWhまで拡張できる。このビル型はタワー型よりも高さが4割低くなっている。

環境にも優しくコストも削減できる重力蓄電・・・次ページ

小森岳史
小森岳史

EnergyShift編集部 気候変動、環境活動、サステナビリティ、科学技術等を担当。

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