石炭火力は?再エネは? 日本は評価されつつも逆風もあり G7議論を共同声明から分析 脱炭素化へ | EnergyShift

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石炭火力は?再エネは? 日本は評価されつつも逆風もあり G7議論を共同声明から分析 脱炭素化へ

石炭火力は?再エネは? 日本は評価されつつも逆風もあり G7議論を共同声明から分析 脱炭素化へ

2021年05月25日

主要7ヶ国、G7の気候・環境大臣会合が5月20日、21日にオンラインで開催され、21日に共同声明が公表された。今回特に注目されたのは石炭火力の今後を世界がどうするか、である。共同声明を追いながら、各国の思惑、駆け引きをゆーだいこと前田雄大が解説する。

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G7の共同声明は半分が気候変動に言及

主要7ヶ国、G7の気候・環境大臣会合が5月20日、21日にオンラインで開催され、21日に共同声明を公表した。英文で27ページ中、13ページが気候変動パートであり、脱炭素が最重要視されていたのかが分かる。議長国はイギリス、アメリカからはケリー米大統領特別大使、日本からは小泉進次郎環境相と梶山弘志経済産業相が参加した。

今回の共同声明で大きなポイントは3つある。

1つ目は、今後開催される首脳会合での合意の気候変動・脱炭素部分のたたき台にこの合意がなること。

2つ目は、今回の合意は日本も含めた各国が内容に同意したという形で捉えられること。それゆえに、各国の思惑を反映した文言の妙が見え隠れする。

そして、3つ目は、特に大きな意思決定である石炭火力削減の合意だ。関連して2030年代の電力セクターの最大限の脱炭素化にコミットしている。

気候変動対策総論部分と、G7の協調

G7の共同声明を詳しく見ていく。気候変動の総論から。

We reaffirm our strong and steadfast commitment to strengthening implementation of the Paris Agreement and to unleashing its full potential. To this end we will make ambitious and accelerated efforts to reduce emissions to keep a limit of 1.5°C temperature rise within reach, strengthen adaptation to the impacts of climate change, scale-up finance and support, protect, restore and sustainably manage nature, and enhance inclusive and gender-responsive action. We affirm our commitment to work with these objectives in mind towards a successful COP26 in Glasgow and beyond.

196ヶ国が参加するパリ協定について、G7は、この「unleashing its full potential」、その条約のポテンシャルを最大限に解き放つ、と「Unleash」という非常に強い表現を使い述べている。つまり、G7としては、脱炭素の取組みは、まだまだだ、と表明していることになる。

そのために何をすべきか。パリ協定は産業革命以後の平均気温上昇を2℃に抑えることがゴールだったが、それでは足らず1.5℃に抑えないといけない、というのは最近のニュースでもよく見る通り。

共同声明の前半は、この「1.5℃」という数字が何回も並ぶ。そのために今まで使われてきた「野心的な」という言葉に加え、「accelerated」、さらに脱炭素を加速させる方向性が入った。

そのために「我々G7メンバーは、模範となる」そして「可能な限り早く、遅くとも2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出量をネット・ゼロにすることをそれぞれ約束する」と声明で述べた。

We, G7 members, will lead by example and each commit to achieve net zero greenhouse gas (GHG) emissions as soon as possible and by 2050 at the latest.

ここでのポイントは、まず、G7は日本を含めすべて2050年カーボンニュートラルを掲げている。まず、これを「よいこと」と確認し、私たちは世界の模範になれる、と宣言した。日本も及第点ということだ。

方向性として重要なのが赤字部分の「at the latest(遅くとも)」と、「as soon as possible(可能な限り早く)」。

この背景としては、2050年カーボンニュートラルをG7で早められないかという問題提起があったが、いくつかの国から慎重論が出て、最後は努力目標的な文言となった。ただ、その希望がかなり強かったため、as soon as possible とat the latestの2つの文言が入ったと考えられる。これは珍しい文言ではないか。

ここには慎重論を述べた国に対するフラストレーションも感じられる(そのG7の国とは・・個人的には残念です)。

ただ、日本の脱炭素に関する評価について、回復したと思われる文言もある。

We welcome the significantly enhanced ambition reflected in 2030 targets announced by all G7 members, which put us on clear and credible pathways towards our respective 2050 net zero GHG emission reduction targets

「全てのG7メンバーが発表した2030年目標、こちらの向上ぶりを評価する」という趣旨。G7として、今回の削減目標については全肯定。日本の立てた目標も評価されたと見ることができる。

この目標が協調できたことでそれぞれの 2050 年目標に明確に進むことができ、中間目標についてはG7として満点評価になった。

しかし、その後にはG7が「あぶり出したい国」が想起される文言が出てくる。

G7が言外にあげたい「あの国」とは

そもそも、なぜこんなにG7が模範ということばを使ったり、十分やっている、と印象づけたいのか。裏返せば「やっていない国がいる」というあぶり出しをしたいからにほかならない。該当する文言がここだ。

The G7 members cannot tackle climate change alone. The G7 calls on all countries, in particular other major emitting economies, to join the growing numbers that have made 2050 net zero commitments, to present specific and credible strategies for achieving them – including LTSs – and to enhance their NDCs accordingly to keep 1.5°C within reach, highlighting the importance of parties who have not already done so submitting their increased ambition NDCs to the UNFCCC as soon as possible ahead of COP26.

つまり、「G7だけでは気候変動には立ち向かえない。だからG7は全ての国に2050年ネットゼロを求める」ということ。

それはどこか。2050年ネットゼロを約束せず、排出量を多く出している国。

インドも排出量が多いが、文言には「2050年ネットゼロ」と書いてある。

中国は2060年ネットゼロを宣言している。一方でネットゼロ宣言をしていない国もあるので、そこに対してネットゼロを求めるのが妥当ではないか。それをわざわざ、排出量の多い国、かつ2050年ネットゼロを約束していない国、としたのは中国を念頭に置いていることは間違いない

そのために、「その国」は何をする必要があるのか。

「1.5℃に気温上昇を抑えるためには、中国の2030年目標では全く無理。そのために、抽象的ではなく、具体的に、かつ、信頼できる形で戦略を立てろ、削減目標を高く設定して国連に早く提出しろ」、と、このように声明は述べている。

これもこれまでのG7ではあまり見なかった形であり、隣国である日本としては安全保障上も心配になるレベルの強い表現になっている。なので、この緊張関係にはちょっと注意が必要と思われる。

脱炭素への投融資について

次は脱炭素への投融資についての言及をみてみよう。

We, the G7, reaffirm our commitment to the collective developed country goal of jointly mobilising US$100 billion annually through to 2025, from a wide variety of sources, public and private, bilateral and multilateral and in the context of meaningful mitigation actions and transparency on implementation. We welcome the commitments already made by some of the G7 to increase climate finance and look forward to new commitments from others well ahead of COP26 in Glasgow.

注目は「look forward to new commitments from others」だ。すでに脱炭素に投資を表明した国は歓迎するが、まだの国は今年後半のCOP26の前にはコミットメントするように促す内容。つまり、脱炭素への明確な投融資の予告に当たる。

そのための指針が次の部分。

We underline the urgent need to scale up efforts to mobilise the private sector if we are to achieve a global green recovery and net zero emissions by 2050, recognising the critical role that innovative financing vehicles, bilateral and multilateral finance institutions, blended finance, policies, risk pools and enabling environments play in this regard.

早い話、官でも国際機関でも、民間でも、脱炭素に投資をすべきであり、そのための制度設計、環境整備をする、という宣言にあたる。脱炭素を捉えたものが、金を得る、という話になっている。

石炭火力の今後は

石炭火力については相当厳しいG7となった。まず総論を見てみよう。

To accelerate progress towards achieving our Paris Agreement goals, we need to harness the significant opportunities for sustainable development – including green jobs and sustainable, resilient growth – by making investments in the recovery from COVID-19 that are aligned with pathways towards our respective enhanced Nationally Determined Contributions (NDCs) and 2050 net zero commitments, recognising the risk of stranded assets associated with high carbon investments.

経済成長やコロナからの回復に言及する文脈で、注意すべき点として特記されているのが赤字部分にあたる。「高炭素投資に伴う座礁資産のリスクを認識しながら」という言葉。

座礁資産とは投資回収をすることができずに焦げ付く資産のことだが、実は国際舞台では、以前から「石炭火力を名指しする表現」だった。しかも「high carbonの投資」と言っているので、これはもう石炭火力としか読めない。

つまり、世界が脱炭素のみならず、経済成長やコロナからの回復をする中で、手を出してはいけないもの、それは石炭火力だ、ということだ。

そして、次が石炭火力への直接言及になる。

Recognising that coal power generation is the single biggest cause of global temperature increases, we commit now to rapidly scale-up technologies and policies that further accelerate the transition away from unabated coal capacity and to an overwhelmingly decarbonised power system in the 2030s, consistent with our 2030 NDCs and net zero commitments. (中略)

We commit to exploring further ways that we can accelerate global progress towards net zero power, including leading by example as the G7, and working with collaborative initiatives and institutions. We note that several G7 members participate in the Powering Past Coal Alliance. We will convene by COP26 to lay the groundwork for further joint action by G7 members.

順を追ってみてみる。

まず最初の赤字、ここで「石炭火力発電が世界の気温上昇の唯一最大の原因」と断定しているのにまず驚く。唯一最大の原因。よくこの文言で日本も合意したな、と個人的に感じた部分だ。

そして、次の赤字。「排出削減対策が講じられていない石炭火力発電設備からの移行を更に加速」。CO2排出対策をしていない石炭火力はもうだめだ、各国で撤退すべし。という部分。

報道では、これが高効率石炭火力なのか、経産省としては解釈の余地ありと見ているようだが、果たしてそのような余地はあるのか。筆者にはあるように見受けられない

そして、「2030年代の電力システムの最大限の脱炭素化」に言及。2030年代までに日本も含めたG7が、電力システムの最大限の脱炭素化にコミットしている。

ここは実は見落としてはいけない重要なポイントだ。最大限、という文言があるので、日本の場合「日本の事情に照らしてできる最大限はここでした」と今は逃げるつもりだろうという、そういう意味での最大限、という表現にはなる。

一生懸命、ここの文言を入れたのも分かるが、外堀は埋まり始めている。

CO2対策のない石炭火力からの移行と、2030年代電力システムの最大限の脱炭素化は「commit now」だ。いま、コミットします、という表現。個人的に、この部分にも衝撃を受けた。

しかし、次の部分はさらに強烈だ。「一部の G7メンバーが脱石炭同盟に参加している」。実はこの脱石炭同盟に参加していないのはG7では日本とアメリカだけなのだ。

アメリカについては、トランプ政権ということもあり今までは参加していなかったが、バイデン政権は入る可能性がある。つまりこの文言は「日本、ちゃんとやれよ(参加しろよ)」という半ば、名指しのような文言であるといってもいい。

この文言を受けて、いま、各省庁では宿題をどうしようかと頭を抱えているのではないか。すごいことだ。

石炭からの撤退のタイムラインはいつまでか。「We will convene by COP26 to lay the groundwork for further joint action by G7 members.」今年後半のCOP26までに、G7としてどうやって共同でやっていくかの基礎を作る、そのために、集まろう、と。

外堀が完全に埋まった瞬間である。

そして、石炭周りの金撤退の話が子のパラ。

In line with Article 2.1.c of the Paris Agreement, we commit to aligning official international financing with the global achievement of net zero GHG emissions no later than 2050 and deep emissions reductions in the 2020s. We commit to promoting the increased international flow of public and private capital toward Paris Agreementaligned investments and away from high-carbon power generation to support the clean energy transition in developing countries. (中略)

Consistent with this overall approach andrecognising that continued global investment in unabated coal power generation is incompatible with keeping 1.5°C within reach, we stress that international investments in unabated coal must stop now and commit to take concrete steps towards an absolute end to new direct government support for unabated international thermal coal power generation by the end of 2021, including throughOfficial Development Assistance, export finance, investment, and financial and trade promotion support. (後略)

先日、三菱UFJが投融資のポートフォリオをカーボンニュートラルにするという発表があったが、それを国家レベルでおこなうという話。2050年までに公的な金は脱炭素でないといけない、と宣言した。さらに次の「石炭に金を入れないようにしていこう」という趣旨も加わる。

そして、極めつけがその次だ。

要約すると、「自らの手でCO2排出削減対策をしていない石炭火力からの撤退をおこなう。そのロードマップを今年中に作らないといけない」ということだ。

報道によれば、「現在継続中の案件も含め対応を見直す必要はない」と経産省は説明しているようだが、本当だろうか。来月予定の首脳会合では巻き返せると思っているのかもしれないが、首脳会合の議長国はイギリスであり、石炭火力的にはアウェイだ。巻き返しは厳しいのではないか。

下手すると日本はG7の声明違反とも捉えられかねない事態になる。この箇所は省庁間でも一悶着ありそうであり、国際的にも問題になってもおかしくないだろう。

いずれにしても、遅かれ早かれ、石炭火力には投資もつかなくなり、案件もこげつく、というのがもう本当に確実になっている。どんどん脱炭素にお金が流れるとともに、日本も脱炭素転換できないと、電力の安定供給自体に波及する事態になる。今度は日本にお金が落ちなくなる。

脱炭素へ、一刻も早くシフトした方がいい。

カーボンプライシングへの言及は

カーボンプライシングへの言及も今回あった。

We recognise the potential of carbon markets and carbon pricing to foster costefficient reductions in emission levels, drive innovation and boost the breakthrough of technologies that enable a transformation to net zero. We affirm the fundamental importance of environmental integrity and sustainable development in the design of high integrity carbon market mechanisms, including those used for voluntary purposes, which should be based on robust rules and accounting that ensure avoidance of all forms of double counting. (中略)We further note that such mechanisms can mobilise private finance and help to close the ambition gap for limiting global warming to 1.5°C.

総論ではカーボンプライシングなどを導入すると+になること多いが、まだ議論が必要だ、というトーンになっている。つまり、G7としてここまで踏み切る段階にはない、という判断になる。

他のパートとの明らかな違いが、ここに見てとれる。

こうした共同声明では、文言を提案した人(国)がいないと、そもそも文言は存在しない。想像するに、欧州側がこの箇所を提案したのではないか。しかし、他のテーマとの表現の強さは明らかに違う。ということは、数の論理で半々くらいだった、ということになる。

つまり、カーボンプライシングに対して、欧州は肯定。アメリカ、カナダ、日本は慎重という格好だ。裏を返せば、他の論点は表現を見る限り、日本だけが反対しているとも見える。 

時代はすでに再生可能エネルギー

続いては、再生可能エネルギーについて。

We affirm the fundamental role of renewable energy sources. We welcome the rapid growth, decreasing cost and increasing value of renewable energy technologies around the world. We stress the need for their further integration in the systems, and we recognise that renewables are a major driver of economic growth, jobs, and increased access to affordable energy. We recognise that the significant progress made in the development and deployment of renewable energy has been driven by a virtuous circle of technological development, a supportive regulatory and policy environment including innovative market designs, and industry-led cost reductions.(後略)

再エネについてはもう「fundamental」。基本も基本、根底にあるとしている。世界で急速に拡大しているし、コストも安いし、再エネ技術の価値も世界中で増えている。時代はすでに再エネ、と声明で言及されている。

再エネについて、日本と世界の温度差はこのように非常に開きがある。世界で再エネは、もう基本中の基本なのだ。

新技術、水素とCCUSは

まず水素から。以前にはなかったこのひとつに、再エネほどではないにしろ、水素についての単独の言及箇所がある。

ほかの様々な新技術がいっしょに紹介されているのに対して、水素は特別扱いだ。いかに世界で水素が認められ始めているかというのが分かる。

We recognise the importance of renewable and low carbon hydrogen on the pathway to net zero. We will step up efforts to advance commercial scale hydrogen from low carbon and renewable sources across our economies, including support for fuel cell deployment globally. This will help realise the development of a future international hydrogen market that creates new jobs for current and future workers in the energy sector.

「ネットゼロに向かう上での水素の重要性を認識する」。その対象は、再エネ由来のグリーン水素であり、化石燃料由来であってもCCUSなどでブルー水素にしよう、ということまでが読めるようになっている。向かうべきは、国際的な水素市場の発展だ。

G7で、ここまでクリアに水素の重要性が書かれるようになったのは隔世の感がある。水素価格が今より高くなることはない。であれば、これからの国際会議合意文書の水素部分はここを基礎に前進していくのみ、という形になる。

他方で、日本イチオシのCCUSはどうか。

While the focus must remain on protecting and expanding our natural carbon sinks, we recognise that negative emissions technologies, such as Direct Air Capture, can also play a role in reaching net zero GHG emissions. Negative emissions will be required to offset residual emissions in sectors that are difficult to decarbonize completely. Technical solutions such as CCUS, and carbon recycling where appropriate, will also be important for some countries in meeting our goal of a net zero economy.

見るべきところは赤字の「where appropriate」。これは賛成しない国が多いときに入る外交上の常套句。「必要に応じ」という意味であり、必要かどうかは各国に解釈が委ねられる。

石炭火力の部分では、交渉で「where appropriate」が入れられなかった。つまり、それだけ他国の立場が堅いということが見て取れる。

それに対して、このCCUS、カーボンリサイクルは評価が低い。水素が一貫して前向きトーンだったのに対して、こちらは対照的だ。

しかも、「some countries」となっている。CCUSが重要となる国もある、ということで、この文言は非常に弱い。それだけ支持を得ていないということだ。

奇妙な形で言及された原子力

この文脈で、奇妙な形で入ってきたのが原子力発電についてだ。

Those countries that opt to use it reaffirmed the role of nuclear energy in their energy mix. Those countries recognise its potential to provide affordable low carbon energy and contribute to the security of energy supply as a baseload energy source.

共同声明文の主語はWeが基本だが、ここでは「Those countries that opt to use it」となっている。「原子力の使用を選択した国は」、という限定がかかっており、この声明の中で脱石炭連盟の部分と並んで、違和感しかない。

この文言にこだわった国はどこか。

「baseload energy source」。ベースロード電源。日本のエネルギー基本計画で繰り返される文言だ。

主語をここまで露骨に変更させてまで、G7の文言に原子力をねじこまないといけない、メンツを取りに行かないといけない、というこのしがみつき戦法をしている国。

およそ外交的ではないし、元外交官としては・・・。経産大臣がわざわざ参加したのは、石炭の文脈もさることながら、どうやっても原子力をねじ込みたかった、というところだろう。

G7の考えるモビリティの未来像

最後はモビリティに言及があった。

We stress the urgent need to promote sustainable mobility and reduce GHG emissions from the transport sector to help achieve net zero emissions by 2050. We recognize that this will require dramatically increasing the pace of the global decarbonisation of the road transport sector throughout the 2020s and beyond, consistent with the goals of the Paris Agreement and our respective 2030 NDCs and net zero commitments. In this regard, and as part of this effort, we welcome and support the Zero Emission Vehicle Transition Council and will work with other global partners to accelerate thedeployment of zero emission vehicles for passengers and freight, including exploring ways to support developing countries in making the transition. We further recognize the commitments of some states to the target of sales of passenger cars being zero emission by 2040 or earlier. (後略)

赤字部分、「2020年代を通じて、またそれ以降も道路交通セクターの世界的な脱炭素化のペースを劇的に増加させる必要がある」に尽きる。

輸送セクターの脱炭素化は2020年代に劇的にやる。欧州は脱ガソリン、HVもNGだが、ここは原子力とは違ってアメリカを巻き込んでうまく乗り切っている。「脱炭素化のペースを劇的に増加」で、移行期であることを演出。HVも読めるようになっている。日本にとって、ここも石炭、原子力と並んで、調整事項の一丁目一番地だったのだろう。

その上で、自動車のライフサイクルにも言及。ここももっともであり、製造全般でも考えないといけない。トヨタの掲げる論点でもある。欧州の理屈に対して、しっかり正論をぶつけたといえる。

モビリティでは脱炭素化という方向性自体G7でがっちり合意。覇権争いが今後どうなるか、注目だ。

このように、ひとつひとつの論点を、その文言を丁寧に見ていくことで各国の思惑、重視したい点、守りたい点、譲るしかなかったところ、さらには外堀が埋まる瞬間までもが見えてくる。

今日はこの一言でまとめよう。

『G7の脱炭素コミットメント 想像以上のものが出た』

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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