脱炭素サバイバルで生き残るための2つの方法とは 脱炭素・デジタル化社会で生き残るためのイノベーション戦略(1) | EnergyShift

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脱炭素サバイバルで生き残るための2つの方法とは 脱炭素・デジタル化社会で生き残るためのイノベーション戦略(1)

脱炭素サバイバルで生き残るための2つの方法とは 脱炭素・デジタル化社会で生き残るためのイノベーション戦略(1)

2022年01月17日

現在、エネルギー業界を含むほとんどの業界は、大きな変化の真っただ中にある。現在の事業も近い将来には陳腐化しかねない。こうした中にあって、どのようにすれば生き残れるか、頭を悩ましている事業者も多いのではないだろうか。事業環境の変化に対応していくためには、これまでの延長で事業を考えていてはいけない。では、どのように事業環境の変化に対応していくべきなのか。熱管理士・電気管理士・放射線取扱技術者(第一種)の資格を持ち、数多くの日本を代表するエネルギー関連企業と未来創造や戦略策定にも関わる、立命館大学経営管理研究科(MBA)客員教授の河瀬誠氏によるレクチャーを3回に分けてお届けする。

「工業社会」から「知識社会」への大転換期

気候変動問題やデジタル化など技術の進歩、自由化などの規制緩和、少子高齢化などは、日本の産業にそれぞれ影響を与えます。当該事業での経験の長い事業者でも、また新規参入してきた事業者にとっても、こうした新たな変化の中で、事業戦略を立案することは容易ではありません。

激変する事業環境の中で、事業戦略を立案するためには、まずは妥当な未来を予測することが必要です。変化する未来を予測せずして、戦略を立てることはできません

とはいえ、事業環境の変化を予測することは簡単ではありません。

未来が現在の延長線上で描けない理由は、現在の社会が大きな転換期を迎えていることにあります。現在はまさに、「工業社会」から「知識社会」への転換の途上にあると言えるのです。

社会の転換の大きな原動力になるものは、技術です。この技術がドラスティックに変化しています。デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉は聞いたことがあるでしょう。デジタル技術の劇的な進化が、通信事業ではグーグルという企業を、電子機器ではアップルという企業を、また流通小売業ではアマゾンという会社を生み出しました。こうした企業が、もともとの業界をトランスフォーム(転換)していったのです。

未来は技術の変化をベースに予測する

未来予測はよく、PEST(政治、経済、社会、技術)の予測だと言われます。
しかし、政治や経済の予測は困難です。たとえば、政治でいえば米国のバイデン大統領の当選は選挙後もしばらく読めませんでしたし、経済であれば1ヶ月先どころか明日の株価も読めません。

それに対して、技術は比較的予測しやすいといえます。また、社会に関連する人口動態も、かなり精度良く予測できます。また、技術、人口動態が、政治と経済と社会のあり方を変える原動力と言えるのです。さらに、その基盤として、気候変動も政治・経済・社会のあり方を変える大きな要素です。

技術は、指数関数的に成長します。技術が市場に出てくるまでには時間がかかりますが、一度登場してしまうと、桁違いの速度で加速しながら成長します。

このような特徴があるので、来年や再来年は起きないかもしれませんが、5年から10年の間には間違いなく大きな変化が起きることが予想されるのです。

過去の事例としては、携帯電話(いわゆるガラケー)に対するスマートフォン、フィルムカメラに対するデジタルカメラ、メインフレーム(汎用計算機)に対するパソコン(PC)などがあります。こうした変化は、急激に起こるので、対策を立てようとしても変化が始まった時にはすでに手遅れとなってしまうことも多いのです。

これからも例えば、再生可能エネルギーの更なる拡大と低コスト化、あるいは電気自動車と自動運転の普及などが、この1年〜2年でどこまで進展するかは予測困難ですが、これから確実に起きることでしょう。

気候変動対策も同様です。2030年に日本は温室効果ガスを46%削減するという目標をすでに立てています。今年や来年の温室効果ガス排出削減は大きくないかもしれませんが、どこかで急激に削減を進めることになります。

このように、この先5年後、10年後までに起きる、大きな変化に備えておくことが必要です。こうした大きな変化が起きた未来から逆算して、現時点でどのような対応をすべきかを考えましょう。これが「バックキャスティング」という考え方です。未来からの逆算ということで、「フューチャーキャスティング」と呼んでもよいでしょう。

もちろん、大きな変化がなさそうなら、既存の事業を進めていけばいいだけの話です。

変化に対応するために必要な3つのステップとは・・・次ページ

河瀬誠
河瀬誠

■立命館大学・経営管理研究科(MBA) 客員教授(国際経営担当) ■有限会社 エムケー・アンド・アソシエイツ 代表 ・ビジネス・ブレークスルー大学 客員教授(国際経営戦略担当) ・東京大学工学部計数工学科(数理工学専攻)卒業 ・ボストン大学経営大学院 理学修士(MS・情報システム)および経営学修士(MBA)修了 ・王子製紙(株)にて 、製造プラントの設計・建設、また生産管理システムの構築を担当 ・A.T.カーニーにて、主に通信と金融業に対して、新規事業戦略策定などを担当 ・ソフトバンクにて、放送事業持株会社の企画部長として、新規事業・買収などを担当 ・コンサルティング会社 ICMG にて、経営人材の育成・新規事業創造などを担当 ■著書の一部 『新事業開発スタートブック』『海外戦略ワークブック』『経営戦略ワークブック』『新企业经营战略(新企業経営戦略)』『戦略思考コンプリートブック』『전략사고 컴플리트 북(戦略思考コンプリートブック)』『戦略思考のすすめ』『まんがでやさしくわかる問題解決』 内「戦略思考コンプリートブック」は、アマゾンの「永遠のビジネス書ベスト100」に選ばれました ■現在の主な仕事 ・主な顧客は、総合商社、エネルギー企業、情報通信企業、金融機関、製造業などで、日本を代表する企業 ・経営幹部を対象とした中期経営計画の策定・実現の支援、デジタル・トランフォーメーションの支援、新規事業の創出支援、グローバル・マーケティングの実践支援等のプロジェクトを実施 ・技術トレンドに基づく、産業の社会の「未来予測」を提供 ・日経ビジネススクールにて、最も多く受講者を集める「技術予測」「新規事業」「経営戦略」の講座を持つ ■個人的には「技術オタク」です、また世界70ヶ国以上を訪問しました

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