急拡大するオフカーボンへの取り組み | EnergyShift

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急拡大するオフカーボンへの取り組み

急拡大するオフカーボンへの取り組み

2019年11月27日

RE100、カーボンオフが世界中で拡大を見せる中、日本独自の枠組みであるRE Actionが10月に発足した。RE100の中小企業、自治体版だというこの新しいイニシアチブはどのように生まれ、どのような意味を持つのか。日本再生可能エネルギー総合研究所の北村和也氏が解説する。

「RE100」の拡大と自治体、中小企業バージョンの発足

「RE100」に参加する日本企業が急激に増えている。2019年10月25日に東急株式会社が名乗りを上げ、これで26社となった(編集部注:11月25日時点ではヒューリック株式会社、株式会社LIXILグループが参加し、28社)。世界での参加数は、このコラムを書いている11月2日時点で207社(編集部注:11月25日時点で211社)なので、日本はその8分の一ほどを占めることになる。それほどの数ではないと思われるかもしれないが、2年半前のリコーの参加まで日本企業はゼロだったことを考えると、最近の伸びは非常に大きい。いまや、ブームと言ってもよいだろう。

RE100とは、企業活動に使う電気を2050年までにすべて再生エネで賄うことを決めた世界の企業の集まりである。そこでRE100に少しでも関心がある方々は必ず知っておかなければならない新しい動きがある。それが「RE Action」である。読み方は、「アール・イー・アクション」、正式には「再エネ100宣言 RE Action」となる。

簡単に説明すると、RE100の中小企業、自治体版というのが、一番わかりやすいだろう。RE100への参加には大量の電気を使っていることなどの条件があり、中小企業が参加するのはほぼ不可能であった。また、自治体や病院、学校など公共性の強い団体は初めから参加枠から外されていた。そこでRE100枠外の団体をまとめる形でRE Actionが設立されたのである。

正式発足は今年10月9日、RE100の日本窓口であるJCLP(日本気候リーダーズ・パートナーシップ)やRE Actionの中心的な事務局となるGPN(グリーン購入ネットワーク)などが東京の新橋に集まって宣言を行った。

2019年10月9日のRE Action協議会プレスリリースより

加盟条件は、RE100とほぼ同じで、2050年までにすべて再生エネ電力で企業や団体活動を行うこと、毎年報告を行うこと、再生エネの広報活動を行うことなどである。RE100のブーム化に合わせて、中小企業などからもRE100参加の問い合わせが相次いでいた。その勢いに押されるように今回のRE Actionの設立に至ったのである。

特徴あるRE Actionの発足メンバー

さて、発足時の参加メンバーを見てみよう。

参加団体は発足時で28団体とすでにRE100の日本企業の数を上回っている。内訳は、自治体が2団体、中小企業が20社、非営利団体が6団体となっている。

再エネ100宣言 RE Action 参加団体一覧
※右にスクロールできます。
NO名称区分都道府県
1青森県民生活協同組合非営利団体青森県
2株式会社ウェイストボックス企業愛知県
3エコワークス株式会社企業福岡県
4株式会社エックス都市研究所企業東京都
5株式会社大川印刷企業神奈川県
6大智化学産業株式会社企業東京都
7カーボンフリーコンサルティング株式会社企業神奈川県
8影島興産株式会社企業神奈川県
9久慈市自治体岩手県
10コマニー株式会社企業石川県
11さいたま市自治体埼玉県
12サラヤ株式会社企業大阪府
13GCストーリー株式会社企業東京都
14新和環境株式会社企業東京都
15株式会社地域計画建築研究所(アルパック)企業京都府
16公益財団法人地球環境戦略研究機関非営利団体神奈川県
17千葉商科大学非営利団体千葉県
18株式会社電巧社企業東京都
19日本フォレスト株式会社企業大分県
20伯鳳会グループ非営利団体兵庫県
21社会福祉法人福祉楽団非営利団体千葉県
22株式会社福地建装企業北海道
23株式会社フラットフィールド企業神奈川県
24明治機械株式会社企業東京都
25横浜市資源リサイクル事業協同組合非営利団体神奈川県
26Reivalue株式会社企業東京都
27リマテックグループ企業大阪府
28株式会社早稲田環境研究所企業東京都
(五十音順)
2019年10月9日のRE Action協議会プレスリリースより

目玉のひとつ、自治体参加はさいたま市と岩手県の久慈市の2つだった。さいたま市は後述するアンバサダー団体にも名を連ねている130万都市であるが、久慈市は三陸沿岸の人口3万人台の地方小都市である。

しかし、その取り組みを見ると参加の資格が十分あることがわかる。久慈市は自らが資本を出している自治体新電力(他に久慈市に本社を置く5つの民間会社が出資)、久慈地域エネルギー株式会社を持ち、再生エネによる地域活性化に向けて熱心な市である。ネタバラシになるが、実は筆者がその新電力の設立から事業展開を手伝っており、今回の参加にあたってもアドバイスを行った。そして、久慈地域エネルギー㈱は久慈市がRE Actionに参加する際のよりどころ、重要なツールとなった。例えば、久慈地域エネルギー㈱は岩手県企業局の保有する小水力発電(久慈市内に存在)からの電力購入をこの夏のプロポーザル形式の入札で決めたばかりである。久慈市は地元の再生エネ電力を使って100%の目標達成へ進むことができる。再生エネ電源100%化を自治体と官民協力でできた自治体新電力の組み合わせで達成するという理想的なスタイルがそこにある。

また、非営利団体では生協や大学、医療法人などユニークな参加メンバーも数多い。事務局のGPN(グリーン購入ネットワーク)には、問い合わせが相次いでいるといい、筆者の周りの中小企業でも検討の声を聞いている。

この他、参加表明団体以外に、「アンバサダー制度」というものが用意された。省庁や県、政令都市でRE Actionの応援を表明する団体という定義である。外務省、環境省、京都市、さいたま市、浜松市、横浜市の6団体がRE Actionの応援側に回っていることを付け加えておく(さいたま市は参加と重複)。

再エネ100宣言
RE Action アンバサダー団体一覧
NO名称区分
1外務省省庁
2環境省省庁
3京都市政令指定都市
4さいたま市政令指定都市
5浜松市政令指定都市
6横浜市政令指定都市
2019年10月9日のRE Action協議会プレスリリースより

RE100、RE Actionの拡大が意味すること

今後、RE100やRE Actionへの参加はかなりのスピードで進むことになる。世界のCO2削減への関心は強くなる一方であり、温暖化対策を取らない企業はビジネスチャンスを失いかねないからでもある。

例えば、すでにCO2排出の元凶とみられている石炭関連への融資を行う金融機関は「悪」と見られるのが普通になった。また、RE100やRE Actionへの参加は、世界的なサプライチェーンに入るための切符になる可能性が高い。

RE Actionの発足は、単に再生エネ100%を宣言する団体や企業の数が単に増えるということに留まらない。参加が増えることは、今後それだけ多くの再生エネ電力が必要とされ、再生エネ電力の需要が拡大することにつながる。それは確実に再生エネ電力の付加価値を高めることになる。

今話題の「卒FIT」=FIT買い取り終了後の屋根上ソーラー発電余剰分で考えてみよう。本当に重要なのは、小売電気事業者がいくらで買い取るかではない。その先の最終需要家が再生エネの電気にどう値付けするか、再生エネによる電気の付加価値をいくらと考えるかである。RE100やRE Actionとは、これまであいまいな存在であった再生エネ電力の需要家がはっきりと手をあげて、顔を見せることである。

FITという制度が無理矢理作り出してきた再生エネの需要とその拡大路線を、エネルギーを使う側が主導する本来の道への転換である。

再生エネ電力の価値が増すことで、再生エネを作る地域の事業者や自治体とそれをハンドリングする地域の新電力が『力』を持つことができる時代に移る。しかし、その力はオートマティックに手に入るものではない。主役となる、自治体や地域の民間事業者など地域のステークホルダーによる官民の連携があってこそ獲得できるということを忘れてはならない。

再エネ100宣言 RE Action ロゴ
北村和也
北村和也

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表、株式会社日本再生エネリンク 代表取締役。 1979年、民間放送テレビキー局勤務。ニュース、報道でエネルギー、環境関連番組など多数制作。番組「環境パノラマ図鑑」で科学技術映像祭科学技術長官賞など受賞。1999年にドイツへ留学。環境工学を学ぶ。2001年建設会社入社。環境・再生可能エネルギー事業、海外事業、PFI事業などを行う。2009年、 再生エネ技術保有ベンチャー会社にて木質バイオマスエネルギー事業に携わる。 2011年より日本再生可能エネルギー総合研究所代表。2013年より株式会社日本再生エネリンク代表取締役。2019年4月より地域活性エネルギーリンク協議会、代表理事。 現在の主な活動は、再生エネの普及のための情報の収集と発信(特にドイツを中心とした欧州情報)。再生エネ、地域の活性化の講演、執筆、エネルギー関係のテレビ番組の構成、制作。再生エネ関係の民間企業へのコンサルティング、自治体のアドバイザー。地域エネルギー会社(地域新電力、自治体新電力含む)の立ち上げ、事業支援。

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