環境省、2021年度のエネ特、2,258億円を概算要求 「脱炭素」「循環経済」「分散型」で経済社会をリデザイン | EnergyShift

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環境省、2021年度のエネ特、2,258億円を概算要求 「脱炭素」「循環経済」「分散型」で経済社会をリデザイン

環境省、2021年度のエネ特、2,258億円を概算要求 「脱炭素」「循環経済」「分散型」で経済社会をリデザイン

2020年10月20日

環境省が2021年度予算の概算要求を公表した。エネルギー対策特別会計に2,258億円を計上、「脱炭素社会」「循環経済」「分散型社会」3つの移行による持続可能で強靭な経済社会へのリデザイン(再設計)を強力に推進するという。2020年6月、「気候危機」を宣言した環境省の重点施策とは何か。エネ特中心に2021年度概算要求をまとめた。

気候危機対策に重点配分

環境省は9月30日、2021年度予算の概算要求を公表した。同省全体の概算要求額は、東日本大震災復興特別会計がほぼ半減となったため、2020年度予算比25.5%減となる7,571億円となった。

その一方で、温室効果ガスの排出削減などに取り組むエネルギー対策特別会計には重点的に予算配分し、前年度比29.1%増となる2,258億円を計上した。

気候災害の多発・巨大化に対し、2020年6月、環境省は、政府として初めて「気候危機」を宣言。気候危機、そしてウィズコロナ・ポストコロナ時代において、「脱炭素社会への移行」「循環経済への移行」「分散型社会への移行」という3つの移行を実現することで、持続可能で強靭な経済社会へのリデザイン(再設計)を目指す。

リデザインへの施策は次の4つの柱から構成されている

  • 「脱炭素でレジリエントかつ快適な地域とくらしの創造」
  • 「脱炭素のための技術イノベーションの加速化」
  • 「グリーンファイナンスと企業の脱炭素経営の好循環の実現、社会経済システムイノベーションの創出」
  • 「JCM(二国間クレジット制度)等によるビジネス主導の国際展開と世界への貢献」

4つの柱のもと、2050年CO2実質ゼロを宣言した自治体が160、人口規模が約7,334万人と増加する中、これら「ゼロカーボンシティ」と連携した、脱炭素社会への移行。資源循環ビジネスの活性化等を通じて、ポストコロナ時代を支える競争力の源泉として循環経済の確立。そして、再生可能エネルギーや自然・生物多様性等の地域資源を活かす分散型社会への移行を進めることで、日本国内の経済社会を再設計していく。

環境省「令和3年度環境省重点施策」をもとに編集部作成

第1の柱「脱炭素でレジリエントかつ快適な地域とくらしの創造」 PPA活用による再エネ価格低減などに186億円

4つの柱の重点施策を見ていく。
まず、「脱炭素でレジリエントかつ快適な地域とくらしの創造」には前年度比33.8%増となる1,384億円をあてた。

この施策は①脱炭素でレジリエントかつ快適な地域づくり、②カーボンニュートラルで快適なくらし・ビジネスの実現、2つの分野から構成されている。

前者は、ゼロカーボンシティの動きを後押しするため、地域再エネ最大限導入のための計画づくり、再エネ等の自立・分散型エネルギーなど、ソフト・ハード両面からのパッケージ支援を推進していく。要求額は前年度比15.8%増となる731億円。

後者においては、デジタル分野や物流、住宅・建築物等での再エネ・省エネ・蓄エネ活用により、脱炭素化でレジリエントなくらし・ビジネスの実現を支援していく。要求額は前年度比62.0%増となる653億円を計上した。

重点事業および新規施策は下記のとおり。まずは、「①脱炭素でレジリエントかつ快適な地域づくり」から。

ゼロカーボンシティ実現に向けた地域の気候変動対策基盤整備事業

2021年度概算要求額8億円(新規)
気象災害の激甚化や「新たな日常」への移行等を踏まえ、自治体が活用できる気候変動対策に関する基礎情報・ツールを整備し、地域における脱炭素化(ゼロカーボンシティの実現)を促進する。

再エネの最大限導入の計画づくり及び地域人材の育成を通じた持続可能でレジリエントな地域社会実現支援事業

2021年度概算要求額30.3億円(新規)
新型コロナウイルスによる地域経済のダメージや気候災害の激甚化を踏まえ、地域経済の活性化・新しい再エネビジネス等の創出・分散型社会の構築・災害時のエネルギー供給の確保につながる地域再エネの最大限の導入を促進するため、地方公共団体による地域再エネ導入の目標設定や合意形成に関する戦略策定の支援を行う。また、官民連携で行う地域再エネ事業の実施・運営体制構築支援や持続性向上のための地域人材育成の支援を行う。

地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業

2021年度概算要求額92億円(新規)
昨今の災害リスクの増大に伴い、災害・停電時の避難施設等へのエネルギー供給等が可能な再エネ設備等を整備する。併せて避難施設等への感染症対策を実施し、地域の防災体制構築を推進することにより、災害や感染症に強い脱炭素地域づくりを推進する。

PPA活用など再エネ価格低減等を通じた地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業

2021年度概算要求額186億円(2020年度予算額40億円)
オンサイトPPAモデル等の新手法による再エネ・蓄電池導入を支援し、価格低減を図りつつ、地域の再エネ主力化を図る。公共施設やその他の需要側設備等のエネルギー需要を遠隔制御することにより、変動性再エネ(太陽光、風力等)に対する地域の調整力向上を図る。デジタル分野の主要排出源であるデータセンターのゼロエミッション化・レジリエンス強化に向けた取り組みを促進する。

脱炭素イノベーションによる地域循環共生圏構築事業

2021年度概算要求額125億円(2020年度予算額80億円)
地域の再エネ自給率最大化の実現と、防災性の高い自立・分散型エネルギーシステム構築や自動車CASE等を活用した地域の脱炭素交通モデル構築に向けた事業を支援し、2050年80%削減に向けた地域循環共生圏の構築を目指す。

以下は、「②カーボンニュートラルで快適なくらし・ビジネスの実現」となる。

バッテリー交換式EVとバッテリーステーション活用による地域貢献型脱炭素物流等構築事業

2021年度概算要求額20億円(2020年度予算額10億円)
地域の再エネを活用した脱炭素型物流モデル構築と物流拠点等の防災拠点化の同時実現を図るとともに、地域エネルギーのストレージインフラとしてバッテリーステーションを活用することで、モビリティ×エネルギーのセクターカップリング型ビジネスモデルの構築を目指す。

建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業

2021年度概算要求額166.65億円(2020年度予算額54億円)
業務用建築物におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化・省CO2改修の普及拡大。2030年度の業務その他部門からのCO2排出量約4割削減(2013年度比)に貢献する。気候変動による災害激甚化や新型コロナウイルス等の感染症への適応を高めつつ、快適で健康な社会の実現を目指す。

戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業

2021年度概算要求額65.5億円(新規)
エネルギー自給自足により災害にも強く、ヒートショック対策にも資するZEHのさらなる普及、高断熱化を推進。2030年までに新築住宅の平均でZEHを実現。2030年度の家庭部門からのCO2排出量約4割削減(2013年度比)に貢献する。

第2の柱「脱炭素のための技術イノベーションの加速化」環境省も浮体式洋上風力を支援

第2の柱が再エネ由来水素、ゼロエミッション火力、CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CO2 回収・有効利用・貯留)、アワード型技術開発・実証など、脱炭素社会の早期実現に向けたイノベーションの加速に向けて取り組む、「脱炭素のための技術イノベーションの加速化」である。
概算要求額は前年度比23.9%増の414億円となった。重点施策は次のとおり。

脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用推進事業

2021年度概算要求額89.8億円(2020年度予算額35.8億円)
脱炭素社会構築に向け、地域における再エネ等からの水素製造、貯蔵・運搬および利活用を支援する。また、運輸部門の脱炭素化および水素需要の増大に向け、モビリティへの水素活用も支援する。

CCUS早期社会実装のための環境調和の確保及び脱炭素・循環型社会モデル構築事業

2021年度概算要求額89億円(2020年度予算額75億円)
2030年のCCUSの本格的な社会実装と環境調和の確保のため、商用化規模におけるCO2分離回収・有効利用技術等の確立を目指す。また、脱炭素・循環型社会のモデル構築を通じ、実用展開に向けた実証拠点・サプライチェーンを実現する。

浮体式洋上風力発電による地域の脱炭素化ビジネス促進事業

2021年度概算要求額13.8億円(2020年度予算額5億円)
深い海域の多い我が国において、再エネの中で最大の導入ポテンシャルを有し、かつ台風にも強い浮体式洋上風力発電を早期普及させ、エネルギーの地産地消を目指す地域の脱炭素化ビジネスを促進する。

第3の柱、第4の柱 資金の流れを脱炭素化に誘導

第3の柱が、経済を動かす資金の流れを、脱炭素を加速する方向に誘導し、企業の行動変容、イノベーションの創出を促す「グリーンファイナンスと企業の脱炭素経営の好循環の実現、社会経済システムイノベーションの創出」である。前年度とほぼ同額となる218億円を要求した。

具体的には、ESG金融など民間の脱炭素投資を引き出すグリーンファイナンスの後押し、さらに地域におけるESG金融の普及を目指す。また、企業における脱炭素経営の支援やブロックチェーンを活用したCO2排出クレジットの取引促進、環境スタートアップの支援などにも取り組んでいく。

第4の柱となる「JCM等によるビジネス主導の国際展開と世界への貢献」には、前年度比49.3%増となる233億円をあてた。二国間クレジット制度(JCM)の推進、温室効果ガス観測技術衛星(GOSATシリーズ)による排出量検証技術の高度化などを進め、国際的なルール・スタンダードづくりを主導し、地球規模の脱炭素化や循環経済の構築、SDGs達成にも貢献していく。

2021年度予算の概算要求からわかるとおり、環境省は、国内においては脱炭素インフラやシステムの構築を牽引し、社会変革を促す。さらに世界的なCO2排出削減でも主導的な役割を果たすことで、気候変動対策における日本のプレゼンスを高めたいという狙いがある。

(Text:藤村 朋弘)

参照

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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