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Siemensの水素モビリティはセクターカップリングを目指す

Siemensの水素モビリティはセクターカップリングを目指す

EnergyShift編集部
2020年11月20日

2020年10月5日、ドイツのSiemens Energy(シーメンス・エナジー)とSiemens Mobility(シーメンス・モビリティ)が、列車用の水素システムを共同で開発する基本合意書を締結した。鉄道のための総合的な水素ソリューションを共同開発し、欧州の水素経済を促進し、モビリティの脱炭素化を進めることが目的だ。

シーメンス・エナジーがねらう水素ソリューション

シーメンス・エナジーは、元はSiemens(シーメンス)のエネルギー部門だったが、現在はグループを離れ、上場している(ただしシーメンスは筆頭株主)。かつては火力発電関連のソリューションを提供してきたが、国際的な脱炭素化の流れに対応し、再生可能エネルギー事業にシフトしている。

こうした中、同社は近年、水素ソリューションにも力を入れており、今回の提携は、その一環といえる。

シーメンス・モビリティはシーメンスグループの鉄道や交通インフラ、交通に関する情報インフラなどの事業を担っている。

今回の提携は、鉄道輸送のための総合的な水素ソリューションの共同開発を行うというものだ。具体的にはシーメンス・モビリティが開発する鉄道向け燃料電池車両や水素エンジン車両などに対応した、水素供給のためのインフラの開発をシーメンス・エナジーが行っていくというもの。これまでのディーゼル車両にとって代わる非電化鉄道として、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を燃料とし、脱炭素化を実現するというものだ。

ドイツ全体では、鉄道路線のおよそ50%が非電化となっている。こうした非電化路線での脱炭素化は、水素による燃料電池車両や蓄電池による車両の導入が期待されている。また、今後20年間のうちに、欧州における車両の脱炭素化が進むことにもなる。

鉄道におけるセクターカップリングと脱炭素化

シーメンス・エナジーのArmin Schnettler氏は、「エネルギーシステムの脱炭素化は、我々が目指す目標の中核となるもので、いわゆるセクターカップリングがここで重要な役割を果たしています。電力や熱源、モビリティなど、以前は別々だったエネルギー関連セクターを相互接続することで、再生可能エネルギー源から作られた電気を使って水を電気分解することで、完全なCO2フリーを実現することができます」と述べた。


シーメンスの描くセクターカップリングイメージ図

またシーメンス・モビリティの Albrecht Neumann氏は、「シーメンス・エナジー社との共同作業は、持続可能で気候に優しいモビリティへの道をひらきます。これにより、非電化鉄道路線を走るディーゼルエンジンの列車を、排出ガスのない水素エンジンの列車に置き換えることができます」と述べている。

今後、両社は、シーメンス・モビリティの水素を動力源とする列車に燃料を供給する水素インフラソリューションを共同で規格化し、その後パイロットプロジェクトや特定顧客向けプロジェクトにソリューションを拡大する計画である。

シーメンス・エナジーはグリーン水素の生成と供給に必要なシステムとソリューションを販売し、シーメンス・モビリティは列車のメンテナンスやデポ設備を含む鉄道輸送ソリューションに注力してきた。両社が協力することで、鉄道顧客に完全なソリューションを提供することができる。これは、運輸市場において顧客の水素発電の導入をサポートするだけでなく、ドイツにおける持続可能な水素経済の確立を促進することになる。

(Text:高森徹夫)

参照
Siemens Energyプレスリリース "Siemens Mobility and Siemens Energy jointly drive development of hydrogen mobility" 2020.10.5
Siemens Energy "Hydrogen Solutions"

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