川崎重工は12月7日、大気汚染物質である窒素酸化物(NOx)の排出値を抑えられるガスタービンで、搭載する体積比が水素40%、天然ガス60%の混焼技術を確立したと発表した。これにより、NOxの発生を抑えながら安定した水素混焼を実現する。
従来の水素混焼率は最大30%だった。水素は、天然ガスに比べ燃焼速度が速く、燃焼温度が高い特性から、特にメインバーナでの希薄予混合燃焼において、NOx排出量の上昇やバーナ部品の過熱などの技術課題があった。
今回、同社は希薄予混合燃焼と追焚きバーナでの追焚き燃焼の燃料割合を適正に制御するシステムを開発。希薄予混合燃焼は、あらかじめ燃料と空気を均一に混合した希薄予混合気を燃焼器に噴射・燃焼させる方法だ。燃料を空気と混合してから燃焼させることで局所的な高温部分をなくし、大幅にNOxを低減することが可能となる。追焚き燃焼は、燃料を希薄予混合燃焼後に投入することで、メインバーナの燃焼を安定させたままNOxをほとんど生成させることなく出力変更を可能にするという。
この2つのバーナを組み合わせることで、天然ガス焚きではNOx排出量15ppm以下を、幅広い発電出力で実現した。開発ではこの燃焼方式を水素の混焼にも適用し、天然ガスと同等レベルの低NOxかつ安定した燃焼を可能にした。
また、ガスタービンエンジン本体の改造が不要で、システムの組み換えで水素を混焼できることから、実績あるエンジンの信頼性を継承したまま水素エネルギーを活用することができる。
同社は、脱炭素社会に向けた水素エネルギーの普及を見据え、水素を「つくる」「はこぶ」「ためる」「つかう」といったサプライチェーンの技術開発をすすめる。中でも、水素ガスタービンは、日本のCO2発生量の約4割を占める発電分野における脱炭素化に貢献する、「つかう」分野の重要な製品のひとつだ。
今後、生産工程の副産物として水素を出す石油化学プラントや製油所の自家発電設備向けに燃焼技術を適用していく考えだ。
EnergyShift関連記事
ニュースの最新記事