解決しない電力不足問題 LNGに続いて石油まで燃料切れのおそれ 12月から2022年1月にかけ大手電力4社が石油火力を出力低下 | EnergyShift

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解決しない電力不足問題 LNGに続いて石油まで燃料切れのおそれ 12月から2022年1月にかけ大手電力4社が石油火力を出力低下

解決しない電力不足問題 LNGに続いて石油まで燃料切れのおそれ 12月から2022年1月にかけ大手電力4社が石油火力を出力低下

2021年12月20日

日本の冬に電力不足が迫りつつある。LNG(液化天然ガス)に続いて、石油まで燃料切れ寸前となり、北陸・関西・中国・四国の大手電力会社4社が、燃料制約から石油火力の出力を低下させている。しかも、燃料の制約期間は来年2022年1月末まで続く見込みだ。石油火力は電力が不足しそうな際に使われる電源であるだけに、この冬の安定供給に支障が出ないか、警戒感が高まっている。

一部電力会社では、2022年1月末まで燃料制約が続く見通し

11月上旬にLNG火力で燃料制約が起こったのに続いて、今度は石油火力で燃料切れに陥る可能性が高まっている。北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力は、9月以降相次いだ複数の石炭火力発電所の故障や10月前半の想定外の気温上昇が重なり、LNG消費量が増加。それと同時に石油火力の稼働率も上がり、石油まで在庫切れ寸前となったことから、11月から12月にかけて石油火力の出力を大幅に落としている。

燃料制約は、北陸電力は富山・富山新港の2つの発電所で12月31日まで、四国電力(阿南・坂出発電所)も12月31日まで続く見通し。一方、中国電力(玉島・下関発電所)は2022年1月21日まで、関西電力(赤穂・御坊発電所)は1月31日までと、年明けまで続く見通しだという。

発電事業者発電所ユニット燃種最終更新日認可出力(kW)低下量(kW)制約期間※1分類※2
JERA広野5号石炭 12/13600,000420,00012/12~12/13解除済
広野6号石炭 600,000420,000解除済
君津共同火力君津共同火力5号副生ガス12/6300,000170,00012/6~12/9解除済
北陸電力富山新港1号LNG12/1424,700246,40011/13~11/15,11/20~11/22,11/27~11/29,12/4~12/6解除済
富山4号石油12/2250,000151,00012/4~12/31
富山新港2号500,000425,000
関西電力相生1号都市ガス11/25375,000350,00011/26~11/30解除済
3号375,000350,000
赤穂1号石油12/9600,000226,00012/11~1/31
2号600,000226,000
御坊1号600,000547,000
3号600,000226,000
中国電力玉島2号石油12/10350,000314,00011/7~11/30, 12/1~1/21
3号500,000421,000
下関2号石油12/10400,000298,00011/7~11/30, 12/7~1/21
玉島1号LNG11/5350,000334,00011/7~11/30解除済
水島1号LNG11/5285,000106,00011/7~11/30解除済
3号340,000306,000
柳井1号LNG11/5786,000314,00011/7~11/30解除済
2号594,000421,000
四国電力阿南3号石油11/30450,000293,00011/6~11/30,11/21~12/1,12/2~12/31
坂出3号石油11/30 450,000202,00011/13~11/30,11/22~12/1,12/2~12/31
坂出1号LNG11/8296,000130,00011/9~12/20
4号350,000257,000
2号11/29289,000116,00011/30~12/20
九州電力新大分1号LNG11/15720,000374,00011/11~11/26解除済
2号690,000345,000
3号1,215,000424,000

※1 制約期間には11月実績も含み、12月以降新たに登録・延長された期間を赤字で示す
※2 分類:①タンク容量を要因としたLNG火力の燃料制約、②石油火力の燃料制約
燃料制約の最新状況
出典:経済産業省

12月14日に開催された、電力需給の対策などを検討する電力・ガス基本政策小委員会(第42回)で示された。

石油はLNGや石炭に比べて、タンクへの貯蔵や運搬が容易であるため、かつては石油火力が主力電源の時代もあったが、中東依存度が高く、そのうえ価格も高いといった課題を抱える。2020年時点で、1kWhあたりの発電コストが26.7円と火力発電の中でももっとも発電コストが高い電源となっている。

すでに石油火力の電源構成比率は7%程度(2019年度時点)まで大きく低下し、今では石炭やLNGのように常時使うことを想定せず、電力が不足しそうな、万が一のときに発電する電源として利用するのが基本となっている。そのため、急激に石油火力の稼働率が上昇すると、燃料供給が追いつかず、今回のような継続的な運転ができなくなってしまう。

今回の石油火力の燃料制約には、もうひとつの要因がある。それがLNGの価格高騰だ。LNG価格の高騰が止まらない中、LNGと石油価格の逆転現象により、石油が想定以上に約定された結果、石油火力の稼働が増加したという。

LNGの燃料制約が四国電力の坂出を除き、解除されていただけに、石油火力の燃料制約が電力不足に影響しないか、警戒感が高まっている。

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藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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