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EUの脱炭素目標はいまのままでは達成できないとの研究結果 追加投資には470兆円が必要だが、恩恵もある

EUの脱炭素目標はいまのままでは達成できないとの研究結果 追加投資には470兆円が必要だが、恩恵もある

2021年09月09日

ヨーロッパ最大の電力会社、エネルが国際経済会議(The European House - Ambrosetti)と共同で行った研究によれば、EUの脱炭素目標は達成が難しいようだ。

この研究は、EUが7月に打ち出した新しい政策パッケージ、「Fit for 55」について、EUとイタリアが現在どれだけ遅れていて、達成するためにはどれだけの投資が必要かを調査したもの。

EU全体の現在の脱炭素目標は、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減するという野心的なものだ。調査ではこの目標に達するのは、いまの施策の延長線上で考えると2030年ではなく、2051年になるという。

また、再生可能エネルギーの割合の目標は2030年に電力の40%という目標も、現在のペースでは達成するのは2043年になるという結果も出た。さらに、エネルギー効率も36%の向上を目標にしているが、これは2053年になるという。

これらの遅れを取り戻すために必要な追加投資は、EU全体で3兆6,000億ユーロ(約470兆円)にものぼる。しかし、この投資をおこなうことでEUのGDPへの累積影響額は8兆ユーロにのぼるという。

「現在のペースでは、欧州が自然エネルギーに関する新たな2030年目標を達成するのは2043年になる。これでは遅すぎ、経済的価値をつくり出す大きなチャンスを逃してしまうことは残念だ。EUの目標から生まれる大きなチャンスを活かせるようなガバナンスシステムを、加速して備える必要がある」と、エネル社のCEO兼ゼネラルマネージャーであるフランチェスコ・スタラーチェ氏はコメントした。

また、The European House - Ambrosettiのマネージングパートナー兼CEOのヴァレリオ・デ・モッリ氏は「欧州は、エネルギー転換を迅速に実施し、エネルギー部門全体を変革するチャンスがある。欧州のコミットメントは、『Fit for 55』パッケージによって確認されたが、現在の取り組みのままでは、2030年に温室効果ガスの排出量を55%削減するという新たな目標を達成することはできず、21年遅れの2051年になってしまう。欧州はこの変化を実現するための努力を高めなければなりません」とコメントした。

調査では課題克服のために、エネルギー移行に関する加盟国間の協力関係を緊密にし、市場統合を促進するために地域的なアプローチを採用すること、国際レベルでの炭素国境調整メカニズム(CBAM)の奨励と、NDC(国が決定する貢献)がパリ協定の目的に合致していることを保証するためのより効果的なメカニズムの推進を提案している。

EnergyShift編集部
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