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太陽光発電 入札制に大きな変更・緩和が行われる 入札活性化につながるか 第66回「調達価格等算定委員会」

太陽光発電 入札制に大きな変更・緩和が行われる 入札活性化につながるか 第66回「調達価格等算定委員会」

2021年01月22日

審議会ウィークリートピック

再エネ電源を無理なく、コスト的にも効率よく大量導入するため「入札制」の果たすべき役割は大きい。ところが入札制が導入されているFIT事業用太陽光発電の入札結果は、いずれも応札容量が募集容量を下回る状況となっている。経済産業省の第66回調達価格等算定委員会(2021年1月11日開催)では、残された議題であった「入札制」の詳細設計に関して、大きな見直し・条件緩和がおこなわれた。同委員会での風力発電の議論にも触れる。

事業用太陽光発電 入札制の現状は募集容量を大きく下回る

事業用太陽光発電については2017年度から入札制に移行しており、順次その入札対象規模が拡大されている。2020年度の入札対象規模は「250kW以上」であり、2020年度の入札結果は表1のとおりである。

表1.事業用太陽光発電 入札結果


出所:調達価格等算定委員会資料を基に筆者作成

第7回の入札では募集容量750MWに対し、入札参加申込件数・容量は101件・89MW、実際の入札件数・容量は92件・79MWとなり、募集容量を大きく下回る結果となった。また出力2,000kW以上の規模では初めて1件も応札が無く、全体として小規模化していることも特徴である。

もし現行の入札制度に何らかの欠陥があることが入札比率の低さの一因であるならば、早急に見直す必要がある。事業者が積極的に応札することで競争が働き、コスト低下と量の増加という2つの目的を同時に達成することが可能と考えられる。

なぜ入札は活性しないのか、5つの論点

現行の入札制度をベースに、事業者の入札意欲を改善し得る方策として、以下5つの論点が挙げられている。

 見直しの論点現行制度
価格予見性の向上上限価格は事前非公表
参加機会の増加年度あたり2回のみ
資格審査期間の短縮審査期間は3ヶ月程度
認定取得期限の柔軟な設定認定取得は年度内が一律の期限
保証金没収事由の緩和事後的な工事費負担金増加の場合も没収事由に該当

このうち①と②に関しては、上限価格を公表することと同時に入札募集回数を増やす方針を決定済みである。いずれの論点に関しても資源エネルギー庁は事業者にヒアリングをおこなったうえで、事務局案を提示している。

論点その2 入札参加機会(入札開催数)の増加

現行の年2回というスケジュールの場合、事業者は案件を組成した後、入札が実施されるまで数ヶ月待機せざるを得ない案件もあることや、落札結果が判明するまで4ヶ月程度掛かる(第7回の場合、事業計画受付締切が9月4日で入札結果公表が12月25日)ことが、入札増加の障壁となっている。

入札実施実務負担増加も踏まえ、2021年度の事業用太陽光発電の入札実施回数は、年間4回へと拡大された。

論点その3 資格審査期間の短縮

現行制度では、事業実施の確度が低い案件がいたずらに大量に応札することを防ぐため、一律3ヶ月の審査期間を設け、FIT認定要件を充足しているかどうかを厳格に審査してきた。

他方、入札には保証金(第1次、第2次)が必要となることから、現状でも一定の規律が働いていると考えられる。

よって今後2021年度以降の入札では、事業計画審査段階では必要書類の不備が無いことのみを確認し、FITの認定要件を充足していることの厳格な審査まではおこなわないことへと変更する。これにより資格審査期間は2週間程度へと大幅に短縮することが可能となった。

なお、この条件緩和は太陽光以外も同様である。

入札結果判明後のFIT認定審査において、FIT認定の要件を充足せず認定取得期限までに認定を取得できなかった案件については、従来どおり入札保証金が没収された上で、落札者決定についても取り消されることとなる。

論点その4 認定取得期限の柔軟な設定

現行の入札制度におけるFIT認定取得および接続契約締結までの一般的なフローは、図1のとおりである。

図1.FIT認定・接続契約締結までのフロー


出所:調達価格等算定委員会

FIT認定取得には一般送配電事業者との接続契約締結が必要となるが、接続検討の申込みから回答まで3ヶ月程度、また接続契約の申込みから契約締結までに6ヶ月程度を要している。

接続契約の申込みに際しては一般送配電事業者に対して系統連系保証金を支払う必要があるが、事業者がFIT入札で落札できなかった場合には、その事業計画は中止され接続契約申請もキャンセルされ、系統連系保証金が没収されてしまう。

この没収リスクを避けるためには、事業者は落札結果の判明後に初めて接続契約を申請することが合理的であり、多くの事業者はそのように行動していると考えられる。

ところが現行の入札制度では落札に至った案件については、当該年度内のFIT認定取得を求めている。逆算すると、9月頃に落札結果が判明しない限りは認定取得が困難であることから、そもそも年度後半に開催される入札回(2020年度の第7回)では、このフローに乗ることが出来ないと考えられる。

このことが、第7回入札の件数が少ないこと、小型化していることの一因であると考えられる。

よってこの障壁を取り除くため、つまり落札結果判明後に接続契約申請を可能とするために、2021年度以降の入札(太陽光以外も含む)においては、落札した案件に係る認定取得期限を、入札結果公表後7ヶ月が経過した期日に変更することとした。

論点その5 入札保証金没収事由の緩和

現行の入札制度では、入札前に第1次保証金(500円/kW)を、落札後には第2次保証金(5,000円/kW)の納付を求めている。事業者都合等により事業を中止した場合やFIT認定が取得できなかった場合には、保証金は没収される。

再エネ発電事業の採算性において、系統接続費用は大きな判断材料となる。図1のように事業者は、接続検討で回答を得た工事費負担金を前提としたうえで応札するが、接続契約申請後の詳細技術検討の結果、工事費負担金の額が当初提示された金額よりも上振れする場合がある。

この上振れが判明するのは「落札後」であるため、その金額次第では事業者は落札を辞退せざるを得なくなる。現行制度ではこのケースでも保証金は没収されてしまうため、事業者にとって入札は大きなリスクとなっていた。

よってこの障壁を取り除くため、2021年度以降の入札(太陽光以外も含む)においては、落札後に工事費負担金の額が入札参加時点で提示された額より上振れした場合には、そのことを理由に当該案件を中止したとしても、入札保証金の没収は免除することに変更された。

見直し後の結果まとめ

以上、①~⑤の入札活性化に向けた今回の制度見直しをまとめると、以下のとおりである。

 見直しの論点見直し後
価格予見性の向上上限価格を事前公表
参加機会の増加年度あたり4回
資格審査期間の短縮事前審査期間は2週間程度
認定取得期限の柔軟な設定落札から7ヶ月以内
保証金没収事由の緩和工事費負担金上振れによる辞退は入札保証金の没収を免除

事業用太陽光発電の入札募集容量

先述のとおり入札活性化を目的として、2021年度以降は上限価格が事前公表されることとなる。仮に制度的に何も工夫せず募集容量をいたずらに大きくすると、応札価格は上限価格に張り付いてしまい、入札制度の意味を失ってしまう。

逆に募集容量を小さくすれば、他社との競争を意識して応札価格は下がる可能性が高いが、再エネ最大限導入という大目的を損ねるおそれもあるため、価格と量の両立は難題である。

このためエネ庁事務局では入札募集容量の設定にあたり、まずは過去の入札実績値を根拠とすることとした。

2019~2020年度の平均値としては年間831MWの事業計画が提出されている。2021年度は入札を4回実施することから、その4分の1である208MWを2021年度初回(第8回)の入札募集容量とする。①~⑤の入札活性化策の効果により、多くの事業者が応札するならば、落札価格の低減も期待できる。

他方、208MWという募集容量は、再エネ大量導入の掛け声の前ではいかにも小さな数値である。そこでエネ庁は募集容量を入札開催ごとに機動的に見直す仕組みを考案した。

図2.入札回ごとに募集容量を増減させるイメージ


出所:調達価格等算定委員会

応札容量が募集容量を上回った場合には、次回以降も潜在的な応札事業者数(容量)が多いと予想される。

たとえば、第8回入札の募集容量208MWに対して、308MWの応札があったと仮定する。応札容量のうち100MWは非落札となる。その次回第9回では、第8回の非落札容量(100MW)の40%(40MW)を前回入札の募集容量208MWに加えた量すなわち248MWを募集容量とする、という仕組みである。

逆に、応札容量が募集容量を下回った場合には、前回入札の応札容量を次回入札の募集容量とする(仮に第9回応札容量が230MWであれば、第10回募集容量は230MWへ減少)。

この場合でも2021年度は、募集容量の下限として208MWを据え置く。

2021年度事業用太陽光発電の上限価格

入札対象範囲外の事業用太陽光発電については、2025年時点の目標発電コスト7円/kWh(調達価格に換算すると8.5円/kWhに相当)に向けて、2021年度以降の調達価格(FIP開始後は基準価格)を設定していくこととなる。

入札対象案件については上述のとおり、限られた募集容量の中で他の事業者と価格競争することとなる。

各回の上限価格は事前公表されることから、その上限価格の設定方法についても、今回その考え方が公表された。

図3.2021年度事業用太陽光発電 入札上限価格のイメージ


出所:調達価格等算定委員会

太陽光第8回入札の上限価格は、2021年度の入札対象範囲外の事業用太陽光発電の調達価格と同額としたうえで、2022年度の事業用太陽光発電(入札対象範囲外)の調達価格に向けて4分の1ずつ低減させていくこととした。

陸上風力発電 2021年度以降の入札制

2021年度に初めて入札が開始される陸上風力(入札対象規模は250kW以上)については、その上限価格を事前公表し、年間募集容量は1GW(100万kW)とされている。

初回の入札であるため、事業者の予見性確保のため2021年度の入札実施回数は年間1回とされた。

なお従来の調達価格算定においては「供給量勘案上乗せ措置」として、IRRに1~2%上乗せされてきた。現状では資金調達コストが低減していることから、入札上限価格の設定においてIRRの想定値は1%低減、すなわち、新設区分では7%とされた。

再エネ海域利用法適用外の着床式洋上風力発電

港湾での設置や実証機が、再エネ海域利用法「適用外」の着床式洋上風力発電として想定される。このカテゴリーでは、2020年度の入札募集容量120MWに対して、入札参加申込は1件・5MWのみであった。

今後の新規案件は再エネ海域利用法対象案件が中心となり、「適用外」で入札を実施しても競争効果を期待できないことから、2021年度以降は入札制を取らないこととされた。

参照
第66回 調達価格等算定委員会

梅田あおば
梅田あおば

ライター、ジャーナリスト。専門は、電力・ガス、エネルギー・環境政策、制度など。 https://twitter.com/Aoba_Umeda

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