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世界銀行グループが開発途上国の気候変動対策への支援を強化。

世界銀行グループが開発途上国の気候変動対策への支援を強化。

2021年06月24日

2021年6月22日、世界銀行グループは、開発途上国に対して気候変動対策の資金を提供し、温室効果ガスの排出量の削減や適応、国別目標(NDC)の作成の支援などを目的として新しい「気候変動行動計画」を発表した。世界銀行グループではこれまでにも、「気候変動行動計画2016―2020」を作成し、行動していた。今回発表されたものは第2次行動計画として、2021年から2025年にフォーカスしたものだ。

今回の行動計画は、前回と比較すると、さまざまな点で異なっている。

第一に、新型コロナウイルスの感染拡大による壊滅的被害への対応ともなっている点だ。また、第二にこの2年間で多くの国が2050年カーボンゼロにコミットしていることも指摘できる。これにしたがえば、2030年には世界の温室効果ガス排出量はピークを迎えることになる。

また、世界的に見て、温室効果ガスの排出量が最も少ない貧困層が、もっとも影響を強く受けるという認識に立った行動計画ともなっている。

行動計画には、次のような内容が盛り込まれている。

  • 計画期間中、世界銀行グループの総融資総額のうち、気候変動対策について、平均35%まで増やす(前回の行動計画では26%)。国際開発協会と国際復興開発銀行の気候ファイナンスの50%が気候変動への適応を支援するものになる。
  • 影響力の大きい気候変動対策の機会を特定して優先順位をつけ、将来の世界銀行グループの気候変動への取組と投資に情報を提供する。新しい診断ツールを使い、各国が気候変動対策と開発を調整し、新しい気候関連技術が実用化されたときは取り入れることに役立つようにする。
  • パリ協定に基づく各国のNDCや長期戦略の実施や更新を支援する。温室効果ガス排出に関する補助金を減らし、課税を増やすことでインセンティブを調整する。
  • インプット重視からインパクト重視へと転換する。気候変動対策のための民間資本の動員とそのための環境の整備、各国の排出権クレジット市場、グリーンボンド市場を開拓するための取組みを強化。最貧国の世界的な公共財を支援する。
  • エネルギー、農業、食糧、水、土地、都市、運輸のそれぞれの分野で気候変動に対応し、回復力のある低炭素の未来を実現し、自然資本と生物多様性の保護をサポートするための変革を支援。石炭からの移行の支援についても重点を置く。
  • 世界銀行グループのすべての資金調達フローを、パリ協定の目的に合わせる。2023年7月1日から、新しい資金調達フローに業務をあわせるよう調整し、2025年7月1日から100%移行する。

具体的な例についても、いくつか紹介する。

電気については、世界で約8億人が電気を利用できずにいることに対し、アクセス可能にするための投資を行っているとした上で、電気そのものについても石炭火力発電の廃止の支援とあわせて、再生可能エネルギーやエネルギー利用の効率化に投資していくとしている。

また、気候変動に強い農業への支援を強化し、生産性の向上と温室効果ガスの削減、レジリエンスの向上というトリプルウィンの効果を得ていくとしている。

都市については、エネルギーシステムの脱炭素化やエネルギー効率の高いインフラ、グリーンビルディングの実現なども行っていく。

世界銀行グループの総裁である、David Malpass氏は、「新しい行動計画は、最も影響力のある緩和と適応の機会に対する行動を特定し、優先順位を付け、それに応じて気候資金を推進します。これは、最大の排出者が排出曲線を平坦化し、各国が気候変動への適応と回復力を成功させるのを支援することを意味します。私たちは記録的なレベルで気候ファイナンスを提供し、最も大きな影響をもたらすソリューションを模索します」と述べている。

前回の行動計画では、2020年に214億ドルという記録的な気候資金の提供を含め、5年間で830億ドルを超える資金を提供してきた。この成果に基づき、新しい行動計画が策定されたという。

行動計画のエグゼクティブ・サマリーでは、「私たちの目標は、気候変動と公正な移行のための資金調達を強化することで、気候変動と開発を統合し、クライアント国の人々に最高の結果をもたらすことです。私たちの目標は、気候と開発を統合することです」と結論付けられている。

World Bank Group Increases Support for Climate Action in Developing Countries

EnergyShift編集部
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