約2,500億円の補助金を投下! 日本が期待を寄せる水素還元製鉄と燃料アンモニアの現状と未来 | EnergyShift

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約2,500億円の補助金を投下! 日本が期待を寄せる水素還元製鉄と燃料アンモニアの現状と未来

約2,500億円の補助金を投下! 日本が期待を寄せる水素還元製鉄と燃料アンモニアの現状と未来

2022年02月07日

経済産業省は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に総額2兆円の基金を造成し、脱炭素に取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を2020年に立ち上げた。その後、環境保全技術の研究開発を促す取り組みが進められている。

NEDOは1月7日、グリーンイノベーション基金から約2,500億円を9つの関連事業に補助すると発表。事業の一環として、「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトと、「製鉄プロセスにおける水素活用」プロジェクトを実施する。具体的にどのような計画で技術開発がすすめられているのか、追ってみた。

急成長の燃料アンモニア市場、NEDOの取り組みとは?

まず、「燃料アンモニアサプライチェーンの構築」プロジェクトに関しては、大きく分けて①アンモニア供給コストの低減②アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化の2つのテーマに沿って実施される。2030年度までの10年間に総額598億円の予算を投じ、次世代クリーン燃料であるアンモニアの供給コスト低減や利用拡大に向けた新技術の確立を目指す。

アンモニアは「燃やしてもCO2を排出しない」という特徴から、石炭に混ぜて燃焼させることで石炭火力のCO2排出量を減らせる。発電分野から工場などで利用する産業分野、輸送分野まで幅広く利用できるとして期待されている。

千代田化工建設と東京電力、JERAは、製造コスト低減を実現できるアンモニアを製造するための新たな触媒の開発に取り組む。NEDOは2030年度にかけて最大206億円を支援する。

現状の製法では、アンモニアは400~500度の高温高圧下でつくるが、新触媒で現状より低温低圧で生産できるようにすることでコストを下げる。3つの開発チームによる新触媒の競争開発を中心として、低温低圧プロセスを構築し、商業装置を念頭に置いたベンチ試験、 パイロット試験による技術実証をおこなうことで、早期の社会実装につなげる(図1)。

図1:事業イメージ


出所:NEDO「燃料アンモニアのサプライチェーン構築」に着手(別紙2)事業概要資料より

プロジェクト2つ目のアンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化については、三菱重工とIHIがそれぞれJERAと組んでアンモニアの割合を引き上げる技術を開発する(現在、混焼できるのは20%程度にとどまる)。プロジェクトは2021年から開始し、2028年度までに既存の実機で50%以上の混焼技術の確立を目指す(図2)。NEDOは総額2兆円の脱炭素基金から最大279億円を補助していき、JERAは実証試験を重ね、2040年代にはアンモニアだけで発電する火力発電所を実用化する考えだという。

図2:事業イメージ


出所:NEDO「燃料アンモニアのサプライチェーン構築」に着手(別紙2)事業概要資料より

このほか、NEDOは出光興産や東京大学、九州大学など4大学に2028年度にかけて最大23億円を支援する。アンモニア製造時のCO2排出量を低減するために、水と窒素を原料として再生可能エネルギーによる電気を活用して常温常圧で製造する方法を確立する(図3)。

図3:事業イメージ


出所:NEDO「燃料アンモニアのサプライチェーン構築」に着手(別紙2)事業概要資料より

大きな期待が寄せられている燃料アンモニアであるが、本格運用を始めるにあたっては、アンモニアの供給体制に課題がある。世界で生産されているアンモニアの8割は肥料として利用され、そのほとんどが生産国で自家消費されている。アンモニアが燃料として使われるようになれば、すぐに供給不足になることが予想される。不足すれば価格の高騰もまねく恐れがあり、大規模供給に向けたサプライチェーンの構築が急がれる。

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東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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