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CO2の「見える化」、企業はどう取り組むべき?

2022年03月18日

2050年カーボンニュートラル実現に向け、企業においては気候変動対策を考慮した経営への移行、とりわけCO2排出量削減へ向けた取り組みが求められています。第一段階として、各企業は自社のCO2排出を正確に把握することが必要となります。

そうした中、事業に伴うCO2排出量を算定するソフトウエアを法人向けに展開し、CO2の「見える化」へのソリューションが続々リリースされ始めています。この記事ではCO2の「見える化」について解説し、メリットや企業の事例をご紹介します。

 CO2の「見える化」とは?

商品の原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出されるCO2の排出量を、商品・サービスに表示する「カーボンフットプリント」と呼ばれる仕組みを使い、「可視化(見える化)」する企業が増えています。

そのため、企業は自社のサプライチェーン全体のCO2排出量の算定をはじめ、サプライチェーン企業別・製品ライン別に可視化し、把握する必要性が高まってきています。CO2の「見える化」の取組を行うためには、「①誰の、②どの部分を、③誰に対して「見える化」するのか」を決定する必要があります

①誰の?(主体)

CO2排出の主体としては、国・地域、企業、家庭等があげられます。

②どの部分を?(排出のスコープ)

「見える化」の対象となる部分については、組織の排出のスコープ(Scope1、Scope2、Scope3)、調達から廃棄までのライフサイクル段階などの軸が考えられます。

排出のスコープ
*環境省「サプライチェーン排出量とは」

Scope1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2:他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope3:Scope1、Scope2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)

誰に対して?(情報提供対象)

排出量の情報提供対象としては、国や地域、企業や自治体、投資家、金融機関などです。とりわけ、近年は投資家や金融機関による「脱炭素」の圧力が強まっています。2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が改定され、主要企業はCO2排出量開示が求められています。東京証券取引所で2022年4月に「プライム」市場に上場する銘柄が対象になりますが、中小企業も例外ではなく、今後はステークホルダーからの開示要求は強まりそうです。

「見える化」に取り組むメリットとは?

次に、「見える化」に取り組むことでどのようなメリットが得られるのか紹介しましょう。日本全体のCO2排出量のうち企業活動が占める割合は80%以上となっており、企業がどれだけCO2排出を抑えられるかが大きなテーマとなっています。企業がCO2削減に取り組むことで直接日本の環境への取り組みとして評価される重要なポイントとなりつつあります。具体的には、下記のようなメリットがあります。

  • ステークホルダーに対し、事業での温暖化対策の取り組みを伝えることで企業への信頼感・好感度の向上が期待でき、投資が受けやすくなる。
  • ライフサイクル全体のCO2排出量を算出し、ホットスポットを把握することで、具体的な削減への取り組みができる。
  • 早い段階で導入することにより、差別化、自社のブランディング施策に繋がる。
  • 消費者の間でも環境保全につながる製品やサービスを評価する動きが増えているため、CO2削減に取り組むことで、消費者からの支持が期待できる。

このように、CO2の見える化に取り組むことにより、様々な面でメリットを生むことができます。一方、サプライチェーン上のCO2排出量可視化に課題を抱いている企業も多いようです

企業が直面する「見える化」への課題とは?

  • CO2排出量の算出に時間と手間がかかる

先進的な企業を中心にScope3についても排出量削減に向けた取り組みを進めていこうとする動きが広がりつつある一方、大企業ほどサプライヤーや関連会社の数が多く、サプライチェーン全体のCO2排出量を把握する難易度は高いと言われています。サプライチェーン全体や商品ごとのCO2排出量のデータを収集することに加え、サプライヤーとの連携に時間がかかり、手間がかかります。

  • CO2排出量の算定方法

多くの企業がサプライチェーン上のCO2排出量を正しく算定することができていないのが現状です。自社から発生したCO2であれば、ガソリンや電力の消費量等を全て集計することで比較的簡単に算定することができます。しかし、サプライチェーン上の他社に紐づく排出量を算定するとなると、排出量の算定方法は数多く存在するため、企業が事業や保有するデータに応じた最適な算出方法を選定することは困難です。計算方法はここでは割愛しますが、つまり、実態が把握できないものがあると、可視化の難易度が向上するため正確な算定ができません。

  • そもそも社内にノウハウがない

製造業に比べて飲食チェーンや金融事業者といったサービス業では、従来CO2排出量の開示を求められてこなかったことから、社内にノウハウがないことが多いといいます。Excelデータの入力作業で完結できるほど簡単ではないのです。「見える化」の普及と的確な対策に取り組むためには、なかなかに困難な道のりになります。

こうしたサプライチェーン上のCO2排出量可視化に対する課題を解決するため、どのようなソリューションが展開されているのでしょうか。CO2の見える化に取り組んでいる企業4社を紹介します。

企業事例

  • Green x Digitalコンソーシアム

2021年9月、一般社団法人の電子情報技術産業協会(JEITA)が事務局を担い、東芝ソニーグループなどにCO2排出量のデータを共有する仕組みが構築されました。パナソニック日立製作所など電機各社のほか、ANAやJAL、竹中工務店といった非製造業の企業も参加しており、2021年11月時点で70社以上が参加表明をしています。各企業が自社のみならず、取引先まで含めた排出量が確認できるようになることで、調達や輸送の段階も含めたサプライチェーン全体の脱炭素につながる施策を取りやすくなることが期待されています。

  • デロイトトーマツグループ

デロイトトーマツグループは2021年9月、ウェイストボックスと連携して企業のサプライチェーン全体のCO2の排出量の算定から削減策までを包括的に支援するサービスを開始しました。製品の生産量や再生可能エネルギー(再エネ)の調達量などに応じて、効率的に排出量を見える化するシステムの開発も支援するほか、再生エネやCO2の排出権の調達などもサポート。両社は、サプライチェーンのゼロエミッション化のプラットフォームビジネスなど新たな事業の推進もあわせて検討しています。

  • NTTデータ

NTTデータは2022年2月、排出量を可視化プラットフォームの提供を開始しました。同社は多くの企業が従来製品からグリーン製品・サービスに切り替えた際に、削減効果を算定結果に反映されないという課題に着目。企業ごとに事業特性や保有するデータから適した算定方法の構築を支援する「可視化プロセス構築メソッド」や、サプライヤー企業の排出量削減の取り組みを調達企業側の同削減に取り込める「サプライヤー別算定方式」を提供することで、企業に応じて具体的なアクションにつながるシナリオの作成が可能になります。

  • ゼロボード

ゼロボードが手掛けるソフトでは、自社のオフィスの電気使用量などを入力するとCO2排出量を算出してくれます。調達する製品ごとの排出原単位を用いて算定を行うことが特徴で、具体的な削減施策を検討するために現状発生している課題を解決する機能がそろっているソリューションになります。トライアル版を80社に提供していましたが、2022年1月に正式版をリリースしました。同社はベンチャーキャピタルのDNX Venturesやインクルージョン・ジャパン(ICJ)から資金調達をしており、2021年に累積調達額は約3億円となっています。

おわりに

サプライチェーン全体の脱炭素化に向けて、多くの企業が実態に即した算定ができない課題を抱いているのが現状です。サプライヤーを巻き込み、より精度の高い排出量算定をすることがカーボンニュートラルの達成に向けた活動を加速すると言えるでしょう。本記事で紹介したソリューションは一部ですが、今後もCO2見える化へのソリューションが更に増えると予想され、引き続き注目が必要です。

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EnergyShift編集部
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