今後再生可能エネルギーが石炭火力発電を上回るJパワー、下落が続く株価は反応見せるか 【脱炭素銘柄】 | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

今後再生可能エネルギーが石炭火力発電を上回るJパワー、下落が続く株価は反応見せるか 【脱炭素銘柄】

今後再生可能エネルギーが石炭火力発電を上回るJパワー、下落が続く株価は反応見せるか 【脱炭素銘柄】

2021年08月12日

国内で石炭火力発電所を多数保有するJパワーは、脱炭素という観点では買われにくい銘柄だ。しかし同社は風力発電など再生可能エネルギーに積極的な投資を行っており、2021年3月末の石炭火力発電と再生可能エネルギーの比率は両者ともに約4割でほぼ同じレベルだ。

今後更に再生可能エネルギー比率の上昇が予想される中で、低迷するJパワーの株価は反発するタイミングが到来するか注目される。

脱炭素関連銘柄を読み解く(12

石炭火力発電比率が4割と高いJパワー

脱炭素が加速する中で、CO2の主要排出源となる石炭を活用する石炭火力発電は、欧州で廃止が進んでいる。イギリスは2024年に石炭火力発電所の全廃を宣言しており、また欧州各国は新型の石炭火力発電所も閉鎖を決めるなど、脱石炭火力発電所が急ピッチで進んでいる。

脱石炭火力発電所の流れはいずれ国内でも加速する可能性がある。その際に国内で各電力会社に電力の卸売りを行うJパワー(電源開発株式会社:9513)は、大きな影響を受ける。

元々国策会社として設立されたJパワーは、2004年に民営化されIPOしたが、公的なカラーを強く持つ電力会社だ。北海道や九州における石炭産業支援のために石炭火力発電所の運営を開始した歴史もあり、全体で見れば石炭火力発電の比率が4割と高い状態にある。

再生可能エネルギーの比率も4割まで高まり今後更なる伸びが予想される

Jパワーの発電設備出力は24,842MW(2021年3月末時点)だが、石炭火力の9,877MWが最多である。次いで水力9,060MWと続く。全国に水力発電所を60ヶ所有しており、水力発電の国内第2位の設備出力シェアを有している。尚、第1位は黒部ダムを有する関西電力だ。

また近年は風力発電事業に注力している。同社は風力発電事業を全国25ヶ所300基展開しており、国内第2位の市場シェアである(第1位は豊田通商と東京電力が株主のユーラスエナジーHD )。

現状では564MWの風力発電の出力に留まるが、今期にはイギリスで214MWの新規プロジェクトの稼働を予定しており、更に発電能力は上積みされる。また国内で建設中・建設準備中のプロジェクトがまだ100MW以上ある。

現在の同社の電源構成は石炭火力4割:再生可能エネルギー4割:ガス等火力2割という割合だ。石炭火力と再生可能エネルギーは同等の4割の比率だ。しかし早ければ今期中に再生可能エネルギーの比率が石炭火力の比率を上回る可能性がある。

また同社は建設中の大間原子力発電所(設備出力1,383MW)を有している。現在、原子力規制委員会の適合性審査で、基準値振動及び基準津波の審査中だが稼働時期はまだ見えていない。しかし大間原子力発電所の稼働がなされれば、石炭火力発電の比率は一気に下がる。Jパワーの石炭火力発電の比率は、大間原子力発電所の存在も留意する必要がある。


建設中の大間原子力発電所

Jパワーの株価について

Jパワーの株価は足元10年では2015年2月4,690円を天井に下落が進んでおり、2021年は概ね1,400~2,000円間での推移を見せている。2020年3月のコロナショックは急落後に上昇した銘柄も多いが、同社の株価は2020年12月に1,352円の安値を付けた後、本年3月に一旦2,000円まで反発したがあまり回復は見られない。

同社の株価はPBRの推移が特徴的だ。2017年以降、2017~2018年の0.8倍が天井であり、2018年からPBRはジリ安の展開が継続する中で、2020年12月には0.31倍まで下落した。現在(2021年8月4日終値)は若干上昇したもののPBRは0.35倍に留まっている。

石炭火力発電所の比率が4割の同社はESG投資の観点から投資対象とはなりにくく、PBRの推移を見ると2018年以降は下落が続いている。脱炭素が進むことで石炭火力発電所の減損リスクを考慮する必要はあるが、足元で進んでいる再生可能エネルギーの比率の上昇により、見直し買いが入る余地はあるといえよう。

石炭火力発電が4割と見るか、再生可能エネルギーが今後4割以上と見るかで見方が変わる

石炭火力発電が4割と見るか、再生可能エネルギーが今後4割以上と見るかでJパワーの見方は変わる。石炭火力発電が4割に焦点を当てると、脱炭素が加速する中で石炭火力発電所は負の遺産となり、減損リスクもあるため同社株価に期待は持ちにくい。

一方で、再生可能エネルギーが今後4割以上になる、との見方をすれば今後更に再生可能エネルギー比率の上昇が見込まれる点は評価できる。再生可能エネルギー比率の上昇により、いずれかのタイミングで同社株に見直し買いが入る可能性は考えられる。

PBRの推移から、現状は前者の見方が大勢を占めている。しかし後者の考えを採る投資家が多くなれば、同社株価も新たな値動きを見せる可能性がある。

今後の石炭火力と再生可能エネルギーの比率の推移が注目される

Jパワー全体で4割を占める石炭火力発電所は、歴史的な経緯もあり脱石炭火力発電所を一気に進めることは難しい。内外で再生可能エネルギー投資を行いつつ、国内の石炭火力発電所の撤退を徐々に行うことが、石炭火力発電の比率を下げ、再生可能エネルギーの比率を高める現実的な方向だ。

同社の石炭火力発電比率がどのようなペースで落ちるのか、今後の石炭火力発電と再生可能エネルギーの比率の推移が注目される。また石炭火力発電の比率が下がり再生可能エネルギーの比率が高まる過程で株価がどのような値動きを見せるのか、PBRの観点からもその推移が注目される。

石井 僚一
石井 僚一

金融ライター。大手証券グループ投資会社を経て個人投資家・ライターに転身。株式市場や個別銘柄の財務分析、為替市場分析を得意としており、複数媒体に寄稿中。過去多数のIPOやM&Aに関与。ファンダメンタルズ分析に加え、個人投資家としてテクニカル分析も得意としている。

エネルギーの最新記事