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ムーディーズ・ジャパン「EV需要の急拡大はバッテリーメーカーの成長を加速させるとともにリスクも増加」EV用電池メーカーに関するレポートを発表

ムーディーズ・ジャパン「EV需要の急拡大はバッテリーメーカーの成長を加速させるとともにリスクも増加」EV用電池メーカーに関するレポートを発表

EnergyShift編集部
2021年03月04日

格付け大手のムーディーズ・ジャパンは、2021年2月25日、電気自動車用電池メーカーに関する新たなレポートを発表した。

レポートの骨子は次の通り。

  • 二酸化炭素排出量規制の強化は、電気自動車(BEV)の普及と自動車用電池の高容量化を促す一方、事業運営に伴うリスクとレバレッジの抑制という課題ももたらす。
  • 電池メーカーと自動車メーカーの強固な関係と、レバレッジ水準の維持は、電気自動車用電池メーカーの信用力に極めて重要な要素となる。
  • レバレッジとは、企業の自己資本に対する有利子負債など他人資本の割合を示す数値

ムーディーズ・ジャパンのレポートによれば、「ムーディーズ格付対象の電気自動車用電池メーカーの大手4社である中国・CATL(Contemporary Amperex Technology Co., Ltd.)、韓国・LG Chem, Ltd、パナソニック、韓国・SKI(SK Innovation Co. Ltd.)は、世界の自動車用電池の生産量の過半を占め、電池への需要拡大から恩恵を受けていくと考えられる」という。

しかしその一方で、「生産の急拡大は事業運営上のリスクを伴い、レバレッジを安定させることをより難しくするとみられる」とも分析している。

ムーディーズのヴァイス・プレジデント/シニア・クレジット・オフィサーの柳瀬志樹氏は次のように述べている。「二酸化炭素排出量規制が強化される中、自動車メーカーは排出基準に対応すべくBEVの生産を拡大し、電池の生産もこれに伴い増加していく」。

国際エネルギー機関(IEA)の予想では、全世界のBEVとプラグイン・ハイブリッド車の電池の容量は2020 年から2030年にかけて年率24%で増加していく見込みだ。

柳瀬氏は、「このような動きは、自動車用電池メーカーの生産量と売上高、そして利益に寄与するものの、急速な事業拡大による多額の投資は事業運営上のリスクを伴い、またレバレッジを良好な水準で維持することを難しくするため、いずれも信用力を悪化させる要因となりうる」と付言する。

電池メーカーと自動車メーカーの強固な関係は、自動車用電池メーカーの信用力に極めて重要な要素となる。レポートでは次のように分析する。「BEV 販売拡大に向けた明確な戦略を持つ自動車メーカーと強固な関係を維持している電池メーカーは、売上高と利益を安定して維持することができるだろう」。

ムーディーズは大手電池メーカー4社を次のように格付けしている。

  • CATL:Baa1 安定的
  • LG Chem:Baa1 安定的
  • パナソニック:Baa1 ネガティブ
  • SKI:Baa3 ネガティブ

そのうえで、「格付対象の電池メーカー4社の中で、CATLは、高い稼働率と中国の電気自動車に対する補助金に支えられて利益率が最も高く、向こう12ー18ヶ月は二桁台前半で維持されるとみられる。一方、他の電池メーカーの利益率は一桁台かそれ以下である」。「また、投資を拡大しても財務レバレッジを良好な水準で維持することが、電池メーカーの信用力に重要となる。LG Chem とパナソニックのEBITDAは、有利子負債の増加にあわせて拡大することから、向こう12ー18ヶ月の両社のレバレッジ(有利子負債/EBITDA倍率)は2.0倍から3.0倍で推移する」とムーディーズはみている。

また、「CATL のネットキャッシュポジションは同社の信用力を支え、SKIの相対的に高いレバレッジとそれに伴う低い格付は、精製・石油化学事業の低迷と重い設備投資負担を反映している」とも述べている。

編集部より「電池を制するものがBEVを制す」と言われるほど、EVにおける電池の重要性は高い。その中にあって、中国のCATLなどは大胆な投資を実施し、市場シェアを伸ばしている。振り返ってみれば、日本メーカーは液晶テレビや太陽電池などで中国にことごとく敗れてしまった。歴史を繰り返すことなく、日本企業にはなんとか奮闘してもらいたい。

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