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EUグリーンディールのメタン戦略 - 温室効果ガス排出量を削減

EUグリーンディールのメタン戦略 - 温室効果ガス排出量を削減

EnergyShift編集部
2020年11月06日

2020年10月14日、欧州委員会(EC)はメタン(CH4)の排出量を削減するためのEU戦略を発表した。メタンは、CO2に次いで大きな影響を与えている温室効果ガスである。メタン排出量削減への取り組みは、2050年のカーボンニュートラルの達成には不可欠となっている。

CO2の25倍の温室効果を持つメタン

メタンは質量あたり、CO2の25倍の温室効果を持つ。天然ガスの主成分であり、畜産などからも放出されている。これは、CO2に次いで気候変動の要因となっている。

今回、欧州委員会で採択されたメタン戦略は、欧州および世界でのメタン排出量を削減するための対策を示すものだ。この戦略では人間活動に伴うメタン排出量の約95%を占めるエネルギー、農業、廃棄物の各分野における立法的・非立法的措置を示している。欧州委員会は、EUの国際的パートナーや産業界と協力して、サプライチェーンに沿ったメタン排出削減を達成するとしている。

この戦略での優先事項のひとつは、メタン排出量の測定と報告の体制を改善することである。現在は、このモニタリングレベルは、業界や加盟国、国際社会全体で異なっている。これを、測定、検証、報告基準で強化するために、EUレベルの対策を施すことに加え、国連環境計画(UNEP)、気候と大気浄化の国際パートナーシップ(CCAC)、国際エネルギー機関(IEA)と協力し、国際的なメタン排出量観測所の設立を支援する。さらにEUのコペルニクス衛星プログラムの監視を強化することで、世界的な大規模排出の検出や、メタン漏洩の特定にも役立つことが期待されている。

エネルギー、農業、廃棄物、それぞれにメタン対策を

エネルギー分野におけるメタン排出量を削減するためには、ガスのインフラにおける漏れの検知とその修復の義務付け、日常的なフレアリングとベントの実施を禁止する法律が検討されることになる。欧州委員会は、国際的なパートナーとの対話を通じて、EUのエネルギー輸入に関する基準、目標、インセンティブ、およびそれらを実施するための手段を模索する。

農業分野については、より高い精度のデータ収集を通じて排出量の報告体制を改善し、共通農業政策により排出量削減を促進する。主な焦点は、革新的なメタン削減技術、家畜の飼料、繁殖管理のための最も効率の良い方法の共有だという。テクノロジー、自然に基づいた解決策、食生活の変化に関する的を絞った研究も役立つことが期待される。
また、農業や畜産などの残さ物、糞尿などを利用して、バイオガス、バイオ材料、バイオ化学品を生産することができる。これにより、農村部でのさらなる収入源が得られると同時に、メタンの排出を回避することができる。したがって、これらの廃棄物の回収は、さらに奨励されることになる。

廃棄物分野では、埋立地ガスの管理を改善し、排出量を削減しながらエネルギー利用の可能性を探るためのさらなる措置を検討。2024年には埋め立てに関する関連法を見直す予定だという。また、埋立地での生分解性廃棄物を最小限に抑えることは、メタンの生成を避けるために極めて重要であり、欧州委員会は、廃棄物からバイオメタン技術へのさらなる研究の提案も検討している。欧州委員会はまた、努力分担規則(ESR)を見直し、産業廃棄物規制の範囲にまだ含まれていないメタン排出部門を対象に、規制の範囲を拡大することも検討する。

EUはメタン排出削減のリーダーとなるか

グリーンディール担当のFrans Timmermans欧州委員会副委員長は以下のように述べた。
「気候中立的な大陸になるために、EUはすべての温室効果ガスを削減しなければならない。メタンは(CO2に次いで)2番目に強力な温室効果ガスであり、大気汚染の重大な原因となっている。我々のメタン戦略は、すべてのセクター、特に農業、エネルギー、廃棄物を中心とした分野で確実に排出削減をするものである。また、農村地域が廃棄物からバイオガスを生産する機会も創出する。EUの衛星技術により、排出量を綿密に監視し、国際基準を引き上げることができるだろう」。


グリーンディールを担当するFrans Timmermans欧州委員会副委員長

欧州委員会のエネルギー担当委員のKadri Simson氏は「我々は本日、1996年以来のメタン排出量削減に取り組むための初の戦略を採択した。エネルギー、農業、廃棄物のすべての分野で削減をしなければならないが、排出量を最も早く、最も少ないコストで削減できるのはエネルギー部門である。ヨーロッパはその道を先導していくことになるが、ヨーロッパだけでこれを行うことはできない。我々は国際的なパートナーと協力して、輸入するエネルギーのメタン排出に対処しなければならない」と述べた。


欧州委員会エネルギー担当委員のKadri Simson氏

EUの2030年気候目標計画の影響評価によると、2030年までに温室効果ガス排出量を(少なくとも)55%削減するためには、メタン排出量の削減に向けた取り組みを加速させる必要があると結論づけている。世界のメタン排出量の5%はEUからだが、同時にEUは世界最大のエネルギー輸入者であり、農業・廃棄物分野の強力なプレーヤーである。こうしたことから、EUの活動は、国際的に行動を起こすことを促すことになるとしている。

(Text・翻訳:高森 徹夫)

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