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電力自由化5年目の岐路 F-Powerの経営破たんによって、電気料金は値上がりするのか?

電力自由化5年目の岐路 F-Powerの経営破たんによって、電気料金は値上がりするのか?

2021年03月31日

新電力大手のF-Powerによる会社更生法申請を発端に、新電力から電気を買う法人や個人ユーザーの中で、「電気料金が値上がりするのではないか」という不安感が増している。今冬の電力高騰によって、財務状況が悪化した新電力たちは収支改善のため、電気料金の値上げに踏み切るのか? 電力・ガスの比較サイトを運営するエネチェンジが3月31日開催したウェビナーなどを交えて、検証する。

F-Power、会社更生手続き決定、再建プロセスに入る

一般家庭含めた電力小売りが全面自由化されて4月で5年を迎える。参入企業は700社を超え、料金プランは多様化し、電力料金は一定程度、安くなった。

しかし、今冬の電力需給のひっ迫から卸電力市場の価格は高騰し、新電力大手のF-Powerが経営破たんした。F-Powerは3月30日、会社更生法の適用が決定したと発表、事業継続を目指す再建プロセスに入ったが、同社を発端に、新電力から電気を買う法人や個人ユーザーの中で、「電気料金が値上がりするのではないか」という不安感が増している。

卸電力市場が高騰し、調達価格が10倍にも20倍にも膨れあがった新電力が続出し、財務状況は悪化。なかには、仕入れ価格が1日に数千倍に高騰した企業もおり、なんとか財務基盤を立て直そうと、「電気料金の値上げに踏み切るのではないか」という観測が広がっているからだ。

値下げ競争を繰り広げた新電力たちは、電力自由化から5年を迎える今春、値上げの岐路に立たされている。

F-Power以外の新電力でも値上げは起こりうる

電力・ガス比較サイトなどを運営するエネチェンジは3月31日、「大手新電力F-Powerの経営破たん、契約中の企業やピタでん契約中の個人ユーザーはいま何をしたらいい?」と題したウェビナーを開催した。

登壇したエネチェンジ執行役員の千島亨太氏は、今後、想定される動きとして次のように語った。

「過去、財務が悪化した企業、ないし会社更生法を適用した企業のネクストアクションとして多いのが、短期的な値上げ。収支改善のためのアクションです。ただし、値上げはF-Powerだけの話なのかと言ったら、決してそうではない。市場が高騰し、今年1月、2月のPLは当然、傷んでいる。その他の事業者においても、値上げという圧力は今後、需要家にふりかかってくる可能性がある」。

今年の夏も電力価格が高騰するかもしれない

「調達価格が爆あがり」(千島執行役員)した中、さらに今、500円/kWhを超えたインバランス料金の高騰が新電力の経営を圧迫している。

エネチェンジが提携する小売電気事業者30数社のうち、「インバランス精算などを原因とした見積もり金額の値上げ要請は現状ない」という。しかし。千島氏は「財務状況があれだけ傷んでしまうと、インバランス精算などを要因とした見積もり値上げは今後発生しうる。そのアクションはあって然るべきだ」という。

電力調達に関して、「各社は今、夏の価格の高騰を想定し、かなり早めに対応を取っている」と述べる。

今年の夏は厳しい暑さが予想されている。酷暑となれば、当然、ピーク時間帯の電力需給がひっ迫する恐れがある。「LNG(天然ガス)の供給状況や、太陽光発電の発電状況によっては、再び卸市場価格が高騰する可能性がある。今回の価格高騰で、市場調達比率が高いことがどれだけのリスクになるのか、事業者は身をもって知った。市場調達比率を下げようと、相対取引などを増やし、安定運営を進めている」という。

最善の電力会社選びとは?

新電力が相次いで破たんしてもおかしくない状況にある中、法人や一般消費者は何を基準に電力会社を選べばいいのだろうか。

まずF-Power契約者に関して、千島氏は、「法人や個人であっても、電気は安定して供給されており、電気が届かないという状況が生まれることはない」としたうえで、需要家が取るべき行動は契約内容の確認だという。

例えば、個人の場合、契約は1年更新が通常だ。しかし、1年未満に解約すると解約違約金が発生してしまうケースがある。F-Powerの解約違約金は2,000円(税別)だ。

法人契約に関しても、契約期間内での解約は違約金が発生する場合があるため、まずは契約内容の確認をすることを勧めている。

また今冬の電力価格高騰がきっかけとなり、千島氏は「選択する電力会社の電源調達状況を調べることも重要な時代になった」と指摘する。さらに資本金や母体企業の存在なども重要なポイントになる。「よくわからない電力会社より、大手企業の100%子会社がいい」「地域の名前がついた電力会社がいい」というコメントが増えているという。

母体企業についても、「資金繰りが窮した事業者の中には、親会社からの借り入れなどにより資金調達をした企業もあり、母体企業の存在も重要になる」とした。

最善の事業者選びとは、電気料金の単価だけではなく、今後は二酸化炭素の排出係数がどれくらいなのか。あるいは電力会社の取り組み姿勢や財務的安定性などが、重要なポイントになるのだろう。

電気料金の値上げが起こるかもしれない今こそ、最適な事業者選びをお勧めしたい。

(Text:藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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