平井陽一朗のテスラに乗って 第4回 テスラの中毒性 | EnergyShift

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平井陽一朗のテスラに乗って 第4回 テスラの中毒性

平井陽一朗のテスラに乗って 第4回 テスラの中毒性

2021年07月28日

テスラのオートパイロットは、その頼りがいのあるネーミングと裏腹に、現在は完全なる自動運転システムではない。なので、車内で運転中にたとえ助手席の高畑充希に「今日、ケンタッキーにしない?」とおねだりされようがずっとよそ見してはダメ絶対であり、ましてやハンドルから両手を放してフライドチキンをぱくつきながら、あ、ハンドルが油まみれになるからハンドル握られへんわ、なんてのはもってのほかなのだ。テスラ自動運転ソフトウェア「Full Self-Driving beta version9」の米国内配布が7月10日に(アップデート価格は1万ドルまたは月額サブスクリプション)始まっているが、車内カメラでそんな運転手の注意力を監視する機能をしっかり強化している。さて、ついに前回テスラオーナーとなった平井氏、そのテスラライフはいかに!

(第4回) テスラの中毒性

テスラを使ってみて感じる良さについて、収納の大きさ、排ガス・ガソリン臭がしないこと、ハード・ソフトウェアの直感的なUI、専用アプリと数々のアップデート、など前回までにいろいろと書いてきました。

ただ、やっぱり特に気に入った点、「これは中毒になるかも・・・」と感じた点は、今振り返ってみると大きく3つですね。

1つ目は、まずは外観、エクステリア。

テスラは決して目立つようなデザインじゃないのですが、なんだか絶対普通じゃないぞ、という雰囲気がある。

このエクステリアのデザインは正直飽きが来なかったですね。

ただまあ、エクステリアだけだったら他にもカッコいいクルマは結構ありますから、決定打っていうほどではないです。

ちなみにインテリアは、多少うーん・・・と思うところもありましたが、今年モデルチェンジされたバージョンの内装は「未来が来た!」という感じで、正直メチャクチャ気にはなっています。

話を戻しまして、決定的に、これは中毒になるな、、、という3つの点についての続き。

2つ目は、とにかくハンパない加速性能。

0−100kmが3秒ちょっとってね、結構すごいんですよ。

ちなみに最近出たモデル、Model S Plaidは0-100kmが2.1秒って言いますからね、今回のモデルチェンジでの斬新すぎるハンドルやインパネもそうですが、本当にテスラってすごいと思います。

ちなみにこの0-100kmが2.1秒で達するという速度感、体感するイメージがよく分からないかもですが、飛行機のテイクオフ時、あの加速が0-140kmまでの到達が約12秒らしいです。ですので0-100kmでも飛行機ですらおそらく7-8秒はかかっていると思われ、その何倍速いのだ、という…。

単車を乗る方は分かると思いますが(僕も若い頃は乗っていました)、あれで体験するmaxな加速よりも速いくらいです。

そんな加速、どこで使うの?って思われるかもしれませんが、実際、高速での車線変更も楽ですし(ときどき前のクルマに追突しそうになりますが)、一般道で信号待ちの後の青になった時の、周囲をぶっちぎる感じ、あれは本当にすごいです。

何度か隣にフェラーリとか、ポルシェとかと並んだ時があって、明らかに「お? やる?」みたいな感じのドライバーの方もいらして、一瞬でブッチぎるのは快感でしたね(感覚的には0−60kmまでは多分無敵。その後はハイパフォーマンスカーには敵わない部分あるかな、と)。

それと最後にもう1つ、3つ目です。そしてこれが一番大きいかな、というのは自動運転UIの素晴らしさです。これは高速では本当に楽でした。ステアリング左手側レバーを二度引くと、操舵含めた自動運転モードに入ります。ハンドル奥のインパネには常に自分のクルマが表示されていて、センサーで前後左右に何がどれくらい近いかが黄色や赤色で感覚的に表示されるので、とても安心感があります。このUIは素晴らしく中毒的ですね。


フル セルフドライビング ケイパビリティを備えたテスラは次々と新機能を導入し、既存機能を改善しながら、車両の性能を向上し続けていく。
画像出典:テスラ社ホームページより

もちろん、手はハンドルに置いてないと警告がなったりしますが、これは本当に運転が楽でした。家族なんかは「高速ではなるべく自動運転で走って」というほどでした。充電の問題さえなければ、どこまででも遠くに一緒に行けそうな気がしました。

来る日への予兆

余談ですが、自動運転が既にここまで出来るのなら、町中を自動運転のクルマばかりが走る日もそう遠くないのではないかな、と思っちゃうんですが、これは平井調べでは残念ながら難しい面もあるようです・・・。

よく言われるCASE(Connected, Autonomous, Sharing, Electrified)で言うと、2035年までにコネクテッドはほぼ100%、電動化はほぼ50%(外国ではBEV中心、日本ではHEV中心?)と俄然普及する見込みですが、自動化とシェアリングは20%未満と、少なくとも向こう10-15年ではそこまでの爆発的普及は見込めないようです。

特に自動化に関しては、ご存知のようにレベル1~5の段階があるわけですが、テスラのAuto Pilotでもレベル2の部分運転自動化、最近出た日産のPro Pilot 2.0でもレベル2+に過ぎず、一部トヨタのTRI-P4などでは条件付運転自動化までの実用化のメドが立っているものの、街中を完全自動運転のクルマが走っているというようなレベル4、5の実用化には、技術面のみならず、法規制、インフラ整備面の課題なども含めて、多くの専門家が懐疑的な見解に変化してきているようです・・・。

たとえば、Volkswagenの自動運転部門を率いるアレックス・ヒッチンガー氏は、CES 2020の記者会見で、「(自動運転化Level5の実現は)火星に行くようなものである」とコメントしました。また、Fordの前CEOであるジム・ハケット氏も「我々は自動運転車の実現性を過大評価していた」と語り、グーグルの自動運転車プロジェクトで最高技術責任者(CTO)を長年務めたクリス・アームソン氏も「自動運転は、今後30年、あるいはそれ以上の年月をかけて段階的に進化するだろう」との見解を示しています。

 

第5回につづく(次回8月初旬配信予定)

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平井陽一朗
平井陽一朗

BCG Digital Ventures Managing Director & Partner, Head of Asia Pacific & Japan 三菱商事株式会社を経て2000年にBCGに入社。その後、ウォルト・ディズニー・ジャパン、オリコンCOO(最高執行責任者)、ザッパラス社長兼CEO(最高経営責任者)を経て、2012年にBCGに再入社。キャリアを通し、一貫して事業開発に関わっており、特にデジタルを活用した新規事業立ち上げを多く主導。 BCGハイテク・メディア・通信グループ、およびコーポレートファイナンス&ストラテジーグループのコアメンバー。メディア、エンターテインメント、通信業界を中心にアライアンス、成長戦略の策定・実行支援、特にデジタル系の新事業構築などのプロジェクトを手掛けている。 また、BCG Digital Ventures 東京センターの創設をリードし、2016年4月の同センター開設後は、マネージングディレクター&パートナー、およびジャパンヘッドとして、2021年からはアジア・パシフィック地区のヘッドとして、新規事業アイデアの創出、新規事業の出資を含めた立上げなどを幅広く手掛けている。同デジタルベンチャーズ出資先数社の社外取締役を兼務。

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