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送電網の脱炭素化を目指すスタートアップ、ビル・ゲイツのファンドなどから16.5億円の資金調達へ

送電網の脱炭素化を目指すスタートアップ、ビル・ゲイツのファンドなどから16.5億円の資金調達へ

2021年08月20日

再生可能エネルギーの導入量が増加するにしたがって、送電網の運用の安定化が大きな課題になってくるということは、日本のみならず、世界各国の電力システムにおいても同様だ。むしろ、再エネ導入量が日本以上に進んでいる欧州では、深刻な課題となりつつある。

こうした中、2021年8月12日、英国とフィンランドを拠点とする、送電網安定化の技術を開発するスタートアップ企業のReactive Technologiesが、1,500万ドル(約16.5億円)の資金調達の一環として、新たな投資グループを発表した。

Reactive TechnologiesのGrid Metrixという技術は、ソナーのようなしくみを利用して、送電網の慣性力(周波数の変動に対応する力)の状況を直接測定し、リアルタイムでシステムオペレータにデータを提供するというもの。こうした技術を導入することによって、安全かつコスト効率的に再エネの容量を増やすことを可能にするという。また、これによって電力システムの脱炭素化を加速することができる。

Reactive Technologiesでは、Grid Metrixの技術を再エネが急速に成長する世界各国に輸出するために、資金を活用するとしている。

今回、投資家として加わったのは、25億ポンド(約3,750億円)の資金を運用する投資会社のBGFで、同社の主導によって世界的なクリーンエネルギーファンドの1つでビル・ゲイツらにより設立されたBreakthrough Energy Ventures(BEV)と世界的な電力ソリューション企業のEatonが参加した。

BEVは世界の温室効果ガスの排出量の1%(0.5Gt)以上の削減の可能性がある技術のみに投資を行っており、Reactive Technologiesの技術がそれに資するものと判断されたということだ。また、Eatonは戦略的投資を通じて、Reactive Technologiesと共同で、電力会社の市場サポートや将来のサービス提供に関する協力の機会を模索していくという。

Reactive Technologiesは年内にも、同社にさらなる戦略的投資を行う投資家を発表する予定。

また、今回の投資は、Reactive Technologiesが英国の送電網運営会社であるNational Gridとの初のGrid Metrixサービス契約の展開を準備していることを受けたもの。世界の送電網インフラへの年間投資額は、2030年までに2,600億ドルから8,200億ドルへと3倍になるとされており、さらに、2050年のネット・ゼロ目標を掲げている地域における、現在の温室効果ガスの排出量は全世界の70%以上になることから、Reactive Technologiesは、世界のエネルギーシステムの脱炭素化において主導的な役割を果たすことができる独自の立場にあるとしている。

Reactive TechnologiesのCEOであるMarc Borrett氏は、「今回の資金調達は、当社の事業、チーム、そして当社が提供する技術的ソリューションに対する素晴らしい評価です。新たな資金調達先や戦略的パートナーは、当社のサービスを世界中のシステム運用者に提供する上で一歩前進させ、世界中の電力網が迅速に脱炭素化し、ネット・ゼロ目標を達成できるようにする当社の能力を加速させるでしょう。COP26を目前に控え、エネルギー転換の転換点に近づいている中、英国とフィンランドのイノベーションが脱炭素化のハードルを克服し、世界的な気候変動対策を支援する一例となることを誇りに思います」と述べている。

EnergyShift編集部
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