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EV企業としてのテスラはどこへ向かうのか 決算書から読み解いてみる

EV企業としてのテスラはどこへ向かうのか 決算書から読み解いてみる

EnergyShift編集部
2021/03/08

2021年春になってもその快進撃を止めないテスラ。ソーラールーフや仮想通貨など、様々なニュースが飛び交っているが、いま現在、EV企業としてのテスラはどのような状況なのか。最新の決算書と、直近の話題をまとめて紹介する。

EVの先頭を走るテスラはどこへ向かうのか

2021年3月2日、米電気自動車(EV)最大手のテスラが、インドでEV生産をするプランがあることを、インド・ガドカリ運輸相が明かしたとロイター通信が報じた*1。また、テスラモデル3の大幅な値引きも今年2月に行われた。

世界を巻き込み、EVのトップを走るテスラはこれからどこへ向かおうというのか。2021年1月27日に出されたばかりの最新の決算報告『Q4 and FY2020 Update』から、最近の動向を改めてみていこう。

関連記事:テスラのイーロン・マスク、世界のEV・自動運転へのシフトは「約30年で完了する」

テスラの2020年決算書から見る現在位置は

Tesla Q4 and FY2020 Update
Tesla Q4 and FY2020 Update』より

2020年、テスラは、17億ドルの株式報酬費(新株予約権に相当する人件費)を計上したにも関わらず、通期で6.3%という高い営業利益率(Operating margin)を達成した。

EVに関しては、モデルSやモデルXから、より手頃な価格のモデル3やモデルYにシェアが移っており、その影響で前年比で平均小売価格が11%下落している。これらは、営業利益に一時的にネガティブな影響を及ぼすが、価格帯の高いEVの将来を考えると、ポジティブなものだと考えられる。

テスラのEV生産拠点は世界各地に

昨年(2020年)は、中国でモデル3の生産台数を週5,000台に増産したほか、上海およびフリーモントでは、モデルYの生産を開始した。一部工場では建設計画の遅れが噂されているものの、2021年末までに、ベルリンとテキサスに建設中の自動車工場が稼働を予定している*2

ベルリンの工場には世界最大級のリチウムイオン工場が併設される予定で、中国、日本、韓国の企業が独占しているEV用バッテリー市場に風穴を開ける可能性がある*3

Tesla Q4 and FY2020 Update
Tesla Q4 and FY2020 Update』より

テスラは今後数年間にわたり、納車数を年率50%以上のペースで増やしていくことを目標にしており、2021年はそれ以上増やしていく見込みだが、増産のスピードは生産設備のキャパシティー、運用効率、及びサプライチェーンの容量と安定性に依存するとしている。

ただ、現状でも、新型コロナウイルスによる世界的な半導体不足や港湾施設での物流の混乱がある。テスラを含め、複数の自動車メーカーが、生産の調整を余儀なくされており、生産台数の増加計画は、新型コロナウイルスの感染状況にも左右される可能性がある*4。実際に2月25日にはマスク氏自身がツイートで「部品供給の問題で工場が2日止まる」としている。

 

自動運転の蓄積データは膨大

テスラは、自動運転に取り組んでいる、他の自動車メーカーやテクノロジー企業(たとえばWAYMO)とは異なり、データをシミュレーション(試験車)だけに依存しているのではなく、実際に納車したEVの大半に出荷時から組み込まれている自動運転機能のデータも利用しているといわれる*5。そのため、MIT のLex Fridman氏は、HPで、2021年年初の段階で、自動運転による走行距離が51億マイルに到達したと推計している*6

関連記事:なぜGoogle Waymoはテスラと決別するのか ひとつの道路に二つの自動(自律)運転技術が走る

テスラは、ドライバーが周囲の状況をどう認識しているのかをより詳しく理解できる「エンハンスト・ドライビング・ビジュアライゼーション」の導入と、将来的な完全自動運転の実装のために開発していた完全自動運転対応(FSD)コンピュータのベータ版の提供を、昨年秋開始した*7。現在は、$10,000でオプションとして提供しているが、2021年の早い段階でサブスクリプションとして提供を開始するとしている*8

3月にホンダが自動運転レベル3の搭載車を販売するというニュースが流れた。テスラはその上をいこうとしているのは間違いない。

テスラの「Full Self-Driving」紹介ビデオ

インド進出はテスラの将来にどう影響するのか

インド・カルナタカ州の首相は、同州がテスラ初のインド工場建設予定地に選ばれたと発表している(2月15日)。テスラは、同州内でオフィス不動産の査定を行っており、関係者によると研究開発施設を建設する計画がある。実際に2021年1月にインドで、「テスラ・インディア・モーターズ・アンド・エナジー」の法人登記をしており、ベンガルール中心部で複数のオフィス登録もしている*9

ただ、需要の側面から見ると、インド市場には課題がある。例えば、自動車販売台数におけるEVの割合が、テスラが初めて海外進出した中国が5%なのに対し、インドは1%を下回る。平均所得が低く、インフラストラクチャも未整備なインド市場では、政府が税金を投入し、EV購入への補助金やEVへの物品サービス税の減免のほか、充電設備の導入を進めてはいる。しかし、差し当たりは輸出拠点として機能することになるだろう*10

株価は割高だが、着実に歩みを続けているのは確か

今や、GAFAMをはじめとする巨大ハイテク企業に肩を並べるテスラだが、時価総額が近い他社に比べて実績に欠け、期待値で株価が上がっているところがある。

2020年、ナスダックのPER(株価収益率)が25.63だったのに対し、テスラは1020.62と非常に大きく、市場関係者は株価に対し割高感を持っている*11 *12。そのため、2021年2月末の米長期金利の上昇による株式市場の調整局面では、株価が一時、10%を超えて大幅に下落した*13(仮想通貨関連のマスク氏の言動もきっかけとなった)。

しかし、最新の決算書を紐解けば、パンデミックの厳しい状況の中でも着実に歩みを進め、全世界でEV 生産を本格化させようとしていることがわかる。バイデン大統領が誕生し、気候変動対策に向けて全世界が一致協力している。当局の援助や税制優遇を有効に活用しながら、テスラは今後、サプライチェーンを全世界に広げていくことだろう*14

参照
*1  『インド政府、テスラの現地生産誘致 「中国より低いコストに」』Reuters
*2  『テスラ、ドイツ工場計画に遅れも-独誌アウトモビルウォッヘ』Bloomberg
*3  『テスラがベルリン郊外に建設中の工場、世界最大級のEV用電池工場に』JETRO
*4  『テスラ、部品不足で米工場2日間停止 マスク氏がツイート』Reuters
*5  『テスラ、圧倒的な走行実績により自動運転分野で「一人勝ち」』Forbes Japan
*6  『Tesla Vehicle Deliveries and Autopilot Mileage Statistics』Lex Fridman
*7  『完全自動運転対応のコンピュータをインストール』テスラジャパン
*8  『'Absolutely brilliant': an auto-manufacturing expert praised Tesla's latest self-driving software after a test ride』Business insider
*9  『米テスラ、インドでのEV製造合意近い-関係者』Bloomberg
*10 『Tesla to Start Making Cars in India, Targeting Vast Market』Bloomberg
*11 『P/Es & Yields on Major Indexes』WSJ
*12 『TSLA Price/Earnings & PEG Ratios』Nasdaq
*13 『テスラ株が4営業日続落、年初からの上昇を帳消し』Bloomberg
*14 『テスラ新工場誘致へ、米テキサス州の自治体が税優遇策』

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