世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった | EnergyShift

脱炭素を面白く

EnergyShift(エナジーシフト)
EnergyShift(エナジーシフト)

世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった

2021年11月24日

資源制約のないナトリウムが蓄電池業界に革新をもたらす

リチウムはレアメタルにも分類され、希少金属に入る。一方で、これからの脱炭素時代、再エネが増えれば増えるほど、その出力の不安定さを社会として平準化するために、何らかの形でエネルギーを固定化する必要が出てくる。そこで蓄電池や水素、という論点が出てくるのだが、目下、EV(電気自動車)の論点などもあり、蓄電池のイノベーションと競争が激しくなっている。

つまり、リチウムの確保が非常に重要になるということだ。既に資源獲得競争は起きている。日本は、完全に輸入国になるため、リチウム資源を獲得できるかどうかが死活問題になるわけだ。

ナトリウム電池に話を戻すと、このナトリウム電池、脱炭素時代の資源獲得競争において、最大の強みを発揮する格好となる。というのも、主原料のナトリウムの資源量は世界的に潤沢で地域的な分布にも偏りがないからだ。

ナトリウムについて、もしかするとなじみがない人もいるかもしれないが、例えば食塩などもナトリウム化合物だ。塩化ナトリウムといって塩素とナトリウムから出来ている。このことからも分かるとおり、ナトリウムは、原料の塩が海水から採れ、さらには地殻中にも豊富に存在する。工業的な製造方法も確立されているので、安価で大量供給が可能な元素の一つ、ということで、この利点は非常に大きいわけだ。

日本も四方を海に囲まれており、いくらでもナトリウムを入手できるので、このナトリウムがリチウムの代わりを務めることが可能になると、蓄電池業界では革新的な話になる。

しかも、ナトリウムの利点はこれだけにとどまらない。東芝の「SCiB」という蓄電池の解説においてリチウムイオン電池の欠点として、低温時にリチウムイオン電池の性能が下がるという特性を紹介したが、この論点についてもナトリウムの方が優れており、使用可能な温度範囲が広い。そのため、寒冷地での使用もリチウムよりも適している。さらに、充電が速いというメリットもある。

非常に利点が多い電池がナトリウムイオン電池である。となると、中国が注目しないわけがない。既に世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出している。そこで次に、中国CATLの開発動向について、解説していきたい。

世界最大の蓄電池メーカーもナトリウム電池開発に乗り出す・・・次ページ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

エナシフTVの最新記事