11月13日に閉幕したCOP26(第26回気候変動枠組み条約締約国会議)では、各国が脱炭素の表明合戦をしたが、企業の脱炭素の推進に向け、非上場企業に対しても、脱炭素に関する情報開示を求める声が国際的に高まりつつある。日本も今年6月、コーポレートガバナンス・コードを改訂し、2022年4月に創設されるプライム市場を目指す企業はもれなく気候関連の情報開示が必須となった。情報開示に向けた取り組みが加速する中、日本においても非上場企業や中小企業へ影響が及びつつある。全ての企業が脱炭素の対象になるのか、ゆーだいこと前田雄大が解説する。
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日本においても、上場企業を中心に気候関連の情報開示に対する取り組みが加速している。
脱炭素はサプライチェーンにも及ぶため、情報開示に対する取り組みは非上場企業や中小企業にも及ぶだろうと予想していたが、国際的に非上場企業への脱炭素の開示を求める声が高まっており、思ったよりも早く波及しそうだ。
そこで今回は、国際的に高まる非上場企業への脱炭素の開示要求について解説した上で、次の4つの論点を分析していきたい。
まずは、国際的に高まる非上場企業への脱炭素の開示要求について、解説していきたい。
COP26が開催され、連日、気候変動関連のニュースが報じられたが、COP26に合わせて11月2日に開催された「Green Horizon Summit」のパネルセッションで、米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク氏は非上場企業にも気候変動リスク開示を求めるという一幕があった。ブラックロックは世界最大の資産運用会社だ。その運用資産額は2019年末に7.4兆ドル、日本円にして750兆円を超えるレベルであり、ブラックロックの動向は他の資産運用会社にも波及するという点で非常に注目されるのだが、フィンク氏は具体的に何を語ったのか。
フィンク氏は現在のネット・ゼロ目標や気候変動の開示は、上場企業や銀行、金融機関にのみ集中しており、非公開企業にフォーカスされていないという、いまの企業の脱炭素の構造的問題を指摘した。
その理由として、「過去に例がないほどの炭化水素(事業)が、上場企業から非上場企業に売却されている。これは資本市場で最大の裁定取引だ」と発言。非上場企業は情報開示が不透明なため、資産を不透明にしようという動きであり、「これは粉飾であり、グリーンウォッシュだ」と述べたのだ。
この点について、未公開株(プライベート・エクイティ)へ投資するPEファンド10社は2010年以降、1.1兆ドルをエネルギー部門に投資したが、その80%が化石燃料に関連するものだ、と非営利団体PEステークホルダー・プロジェクトも報告。
しかも、この数字は過小評価されたものともされており、事実だとすれば、非上場企業がこっそり炭素系事業を推進するという動きはありそうだ。そこをブラックロックは指摘したわけであり、非上場企業もちゃんと脱炭素ができているのか見るべきだというのが、ブラックロックの主張になる。実際、海外では非上場企業に対して、脱炭素に関する情報開示を求める声は強まっており、政策もそこに連動してきている。
2021年4月には欧州委員会が企業持続可能性開示指令案を発表。現行の非財務情報開示指令を改正するもので、開示を行う対象企業が大幅に拡大した。
具体的には、現行の2014年指令では、開示対象となるのは上場企業を中心に、従業員数が500人を超える大企業などに限定されていたのだが、改正案では、開示対象が非上場の企業も含む全ての大企業と、一部例外を除き中小企業を含む全ての上場企業に拡大される形になった。これにより、開示義務の対象となる企業数は、現在の約1万1,700社から約5万社へと大幅に増加するとみられている。約3倍と、かなりの対象拡大だ。
また、2021年8月には、投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しているNGOのCDPを通じ、投資家らが非上場企業への気候変動に関する情報開示を要求するなど、確実に、気候関連の情報開示の圧力は非上場企業にも向かっている。
そこで気になるのが、日本の動向だ。こうした世界の動きを踏まえてか、損保ジャパンが取り組みを強化し始めた。そこで次に、損保ジャパンが実施する非上場企業も対象としたESGエンゲージメントについて、解説する。
とうとう損保ジャパンも非上場企業も対象としたESGエンゲージメントを開始・・・次ページ
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