日本の銀行として初めて、三菱UFJフィナンシャル・グループが今年5月、2050年投融資カーボンニュートラルを宣言した。この宣言は何を意味するのかというと、投資先、融資先企業のCO2排出量が総計でゼロである状態、そこに投融資のポートフォリオをもっていく、ということだ。
そのため、当然だが、2050年に向けては、投資先、融資先はカーボンニュートラルに近い状態になっていないといけないということになる。実現に向けては、対話を重ねる、としており、ここがまさにエンゲージメントの領域になる。対話には当然、脱炭素転換要求の圧力は大なり小なりかかってくるだろう。また、パフォーマンスが悪ければ、投融資の引き揚げという形にもなってくる。
さて、この投融資カーボンニュートラル、投融資を受ける側からすると、脱炭素を要求される宣言なのだが、三菱UFJフィナンシャル・グループに続くように8月には三井住友フィナンシャルグループが同様の宣言をした。
世界では投融資カーボンニュートラル連合のようなものがすでに形成されている。それが「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」なのだが、日本のアセットオーナーとしては一早く第一生命が加盟。そして、COP26を前に日本生命保険と明治安田生命保険、住友生命保険も加盟し、生保大手4社が揃って加入する格好となったわけである。
ちなみに、このアライアンス、2019年9月の設立で、独アリアンツや仏アクサなど欧州を中心に約50社で構成されており、運用資産は約6兆7,000億ドル(約760兆円)にのぼる。アライアンスの影響力は非常に大きい。
日本においても、さきほど損保ジャパンが非上場900社にもエンゲージメントを、という事例を解説したが、当然、三菱UFJ、三井住友、そして生保4社も、投融資先に非上場企業を含むため、脱炭素の転換は時間の程度の差こそあれ、不可避な流れになってきている。
金融、そして資産運用企業の大手どころが脱炭素に舵を切ったとなると、この脱炭素ドミノが末端まで波及していくことがある程度、予想されるわけだが、脱炭素ドミノがまさに起き始めている。そこで最後に、次々と生じている地銀の脱炭素動向について、解説していきたい。
メガバンクだけでなく地銀でも加速・・・次ページ
エナシフTVの最新記事