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世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった

世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった

2021年11月24日

蓄電池の世界で日本企業がイノベーションを起こした。蓄電池といえばリチウムイオン二次電池が全盛のいまの時代だが、それに代わる素材の模索もされてきた。その中で注目をされてきた一つがナトリウムイオン電池だ。様々な長所を持つナトリウムイオン電池において、ブレークスルーを起こしたのが、大手ガラスメーカーの日本電気硝子である。世界初の革新とされる全固体ナトリウムイオン電池が、脱炭素時代においてどんな役割を果たすのか。ゆーだいこと前田雄大が解説する。

ナトリウムイオン電池の特性とは

色々な長所を持つナトリウムイオン電池について、ブレークスルーを起こした日本電気硝子。11月18日、世界初となる全固体Na(ナトリウム)イオン電池を生み出したと発表した。

この技術は脱炭素時代に重要なブレークスルーとなる。そこで今回はまず、ナトリウムイオン電池の特性を紹介した上で、次の3つの論点について解説したい。

  1. 世界最大手の蓄電池メーカーとなった中国CATLも開発に乗り出した技術動向について
  2. ナトリウムイオン電池の課題とは
  3. 日本電気硝子が起こしたすごいブレークスルーとは

まずは、ナトリウムイオン電池の特性から紹介していきたい。

今回取り上げることで、動作原理やセル構造が革新的かのようなイメージを与えてしまうかもしれないが、実はそれらについては、現在、主流となっているリチウムイオン二次電池と同様の形になっている。

リチウムイオン電池の場合、正極にリチウム金属酸化物を用い、負極に炭素材料を用いるのが主流であり、構図としては、電池を充電すると、酸化により正極のリチウムイオンが引き抜かれ、有機溶媒である電解液を通り負極へ移動する。逆に電池を放電すると、負極からリチウムイオンが放出されて、正極に入る。このときの電荷の吸蔵・放出に伴う電位差が電圧となって取り出せるというのが仕組みだ。

ナトリウムイオン電池についても動作原理などの構図は基本的には同じだ。ナトリウム層状化合物を正極とし、電解液と正極の間でナトリウムイオンが移動することによって充放電が行われる仕組みである。リチウムイオン電池がリチウムイオンの移動であったのに対して、ナトリウムイオン電池はナトリウムイオンに変わる。

このように、リチウムイオン電池と基本構造が似ているというのがナトリウムイオン電池を語るときの一つポイントになる。というのも、現在、世界で流通しているリチウムイオン電池の製造装置の大部分を、ナトリウムイオン電池の生産に流用できるからだ。

この構図、酸化ガリウム半導体について解説したときに、酸化ガリウムが現在、全盛のシリコンの製造装置を使えるのが利点であると述べたが、やはり、生産ラインを大きく変えずに量産できる、というのは相当な強みになる。

では、なぜ、リチウムがあるのにナトリウムイオン電池を開発する必要があるのか。

そこは、日本には特に関係する論点になる。資源の問題だ。

資源制約のないナトリウムが蓄電池業界に革新をもたらす・・・次ページ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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