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世界初の革新 絶対に燃えない、レアメタルフリー 全固体ナトリウムイオン電池がすごかった

2021年11月24日

日本電気硝子が実現したイノベーションの何がすごいのか

皆さん、全固体電池について、耳にされたことがあるのではないか。これはリチウムイオン電池の電解質部分を固体にしたもので、様々利点があり、次世代電池として注目を集めている。

今回、日本電気硝子が発表したのが、これのナトリウム版の全固体ナトリウムイオン二次電池である。具体的には、新たに結晶化ガラスを用いた負極材を開発し、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動に成功した、というものになる。

実は、日本電気硝子は、2017年11月に結晶化ガラスを正極材に用いた全固体ナトリウムイオン二次電池を試作し、室温駆動に成功したと発表をしている。正極材となる結晶化ガラスの軟化流動性を活用して、固体電解質として採用した高いイオン伝導性を持つβアルミナとの一体化を図り、イオン伝導性を高めたことによって当時「世界初」となる室温での駆動を実現したというもので、実績はあったわけだ。また、低温性能に優れるナトリウムイオンの特性をいかして、2020年には0℃での駆動にも成功したと発表をしている。

ちょこちょこと成功を収めてきていたのだが、先述したように金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがあり、報道によれば、日本電気硝子曰く、金属ナトリウムは正極や固体電解質の評価のためのあくまで暫定的な選択だったとのこと。

ただ、会社名に注目して欲しい。そう、この会社は、硝子を扱う会社だ。

今回、彼らは何を成し遂げたかというと、負極材料に結晶化ガラスベースのものを採用して、高い安全性を実現。そう、安全性の課題を見事克服してきた。

詳細は不明だが、なぜか、これまでは負極材に結晶化ガラスは用いられておらず、ナトリウムイオン電池において固体電解質との一体化を実現できていなかった。ただ、今回の「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」では、結晶化ガラスを用いた負極材を新開発することで、正極および負極と固体電解質との一体化に成功した上で「低温での駆動が可能」になった。

ちなみに、結晶化ガラス正極、固体電解質と一体化した「オール酸化物全固体Naイオン二次電池」の駆動は、世界で初めての成功事例になる。

すごいのはここからだ。

まず安全性。こちらの図を改めてみていただきたいのだが、正極も結晶化ガラス、負極も結晶化ガラスで安定していて、その間に入っているのが固体電解質である。これらの電池材料が全て無機酸化物で構成されているのだが、これが本当にすごい。


出典:日本電気硝子

先日のソフトバンクの蓄電池でも解説したが、有機化合物を使用するという特性からリチウムイオン電池はどうしても発火の恐れがある。EVの火災が起きていることも解説してきたが、電池の発火問題というのは必ず向き合わなければならない問題である。なぜ燃えるのか、それは「有機」だからだ。

つまり、無機ならその論点がない。そう先ほど述べたとおり、日本電気硝子の電池の素材は、全て無機酸化物で構成されている。つまり、燃えないわけだ。

使用時および製造時に発火や有毒物質発生の懸念がない、というのがこの電池の特性になる。釘やナイフが刺さっても発火や有害ガスの発生がない、ということはかなりすごい特性といえそうだ。

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前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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