2021年7月、中国CATLはナトリウムイオン電池の商用化を開始するとオンラインで発表した。
CATLによれば、開発した第1世代のNIB(ナトリウムイオン電池)セルの重量エネルギー密度は160Wh/kgとのこと。
先日解説したソフトバンクの蓄電池でも触れたが、これからの脱炭素時代、密度は非常に重要な論点になる。3元系リチウムイオン電池(LIB)が同240~270Wh/kg、CATLの主力製品であるリン酸鉄(LFP)系LIBが同180~200Wh/kgであることを踏まえれば、まだまだこの数字は低い値にとどまっている。
ただ、さきほど利点としてナトリウムの方が充電に向くと述べたが、CATLによれば、やはり急速充放電性能は一般的なリチウムイオン電池より高く、15分で80%以上を充電できるとのこと。これはめちゃくちゃ利点になる。
また、低温性能についても、セ氏マイナス20度の低温環境でも定格容量の90%を利用できるともCATLは言っている。さらには、たとえセ氏マイナス40度といった極寒の環境でも電池として動作するとしていて、やはり寒さにはものすごく強いという特性を見せつけている。
短所、長所を述べた上で、ここからがCATLの工夫となる。
CATLはナトリウムイオン電池のいいところとリチウムイオン電池のいいところを引き出すために、LIBとNIBを並列に接続して1つのパッケージに集積した「ABバッテリーパックソリューション」も合わせて発表した。
どういうことかというと、要はEV向け蓄電池をNIBとLIBのハイブリッド構造にし、両電池を並列に接続することで、極低温時にLIBが動作しなくなってもNIBは動作し、走行を続けられる形にした。もちろん、充電の論点でもプラスは出るだろう。
タイムスパンだが、既にナトリウムイオン電池の産業化展開に着手していて、2023年には基本的な産業チェーンを形成する計画とのこと。
注目しているのは何もCATLだけではなく、中国政府も着目しており、中国工業情報化省もナトリウムイオン電池の規格構築に乗り出す方針を打ち出している。
やはり中国は、蓄電池やEVで世界をリードしていくつもりが満々な感じになっている。
ここまでナトリウムイオン電池の特徴や開発動向を解説してきたが、ナトリウムイオン電池の弱点も見えてきたので改めて整理をしたい。ナトリウムイオン電池の課題とは何か解説していこう。
そもそも、金属ナトリウムは、水に触れると激しく反応し、発火、爆発するリスクがある。それもあり、製造のしやすさや信頼性、安全性の面では大きな課題を抱えていた。もちろん、使用方法さえしっかりすれば、問題ない格好にはなるが、簡単な物質ではないということだ。
その上、リチウムイオン電池と比較すると、エネルギー密度が現状まだ低いという課題もある。
こうしたこともあり、電池業界では、ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池ほど高いエネルギー密度が要求されない用途で普及が進むとの見方が主流になっている。具体的には、低価格の低速EV、再生可能エネルギーの蓄電設備、通信基地局のバックアップ電源などである。
加えて、寿命が短い、ともされている。蓄電池についてはEVで水冷式が導入されるなどして寿命が伸びてきているが、やはり継続利用を考えると、寿命という課題は克服する必要がある。
コストもかなり重要となる。もちろんこれから開発され、規模の経済が効いて来れば全く状況は変わってくるだろう。また長期でみれば、ナトリウムがどこにでもある資源であるという点で、最終的には強みに変わるだろうが、現状はまだリチウムイオン電池に比して高いとされている。
まだクリアしなければいけない課題は多くあるのだが、ただ、今回、日本電気硝子がやってくれたイノベーションがすごい。何がすごいのか。日本電気硝子のブレークスルーについて解説していきたい。
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