ブラックロックのラリー・フィンク氏はCOP26に合わせて11月2日に開催された「Green Horizon Summit」のパネルセッションで、非上場企業にも気候変動リスク開示を求めた。
フィンク氏は現在のネット・ゼロ目標や気候変動の開示は、上場企業や銀行、金融機関にのみ集中しており、非公開企業にフォーカスされていないと指摘。
その理由として、「過去に例がないほどの炭化水素(事業)が、上場企業から非上場企業に売却されている。これは資本市場で最大の裁定取引だ」と発言。非上場企業は開示が不透明なため、資産を不透明にしようという動きであり、「これは粉飾であり、グリーンウォッシュだ」と述べた。
つまり、化石燃料を主に扱う企業が自社のポートフォリオ改善のため、座礁資産を非上場企業に売却しているというのだ。
これは非常に重要な指摘だ。未公開株(プライベート・エクイティ)へ投資するPEファンド10社は2010年以降、1.1兆ドルをエネルギー部門に投資したが、その80%が化石燃料に関連するものだ、と非営利団体PEステークホルダー・プロジェクトは報告している。しかも、この数字は過小評価されたものだという。
「Green Horizon Summit」のパネルセッションでのラリー・フィンク氏
座礁資産の移動がおこなわれていることについてラリー・フィンク氏は「非上場企業にも上場企業と同様の開示義務を求めなければ、ネットゼロには絶対にたどり着けない。私たちは自分自身をだましていることになる」と述べた。
フィンク氏は今年4月にも非上場企業にも上場企業と同じ開示を強く求める年次書簡を公開した。
その中で「上場企業だけでは2050年までの脱炭素の実現にはなんの役にも立たない」と強調。「非公開企業も包括的な情報開示体制が必要だと強く思う」と同じ主張を述べている。
「政府による開示を待つのではなく、自主的な開示が必要だ。気候変動リスクは投資リスクであるとともに巨大な社会的リスクでもある。グローバルで一貫したサステナビリティレポートのフレームワークが必要だ」「イギリスのビジネス・エネルギー・産業戦略省とアメリカの証券取引委員会はすでに情報開示の強化を進め、それをわたし(フィンク氏)は支持する」と書いている。
ブラックロック自身はTCFDフレームワークを含むSASBに準拠した報告書を開示している。
定量的かつ広範囲に開示が求められる日本企業の対応は・・・次ページ
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