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世界で広がるダイベストメント 化石燃料からの投資撤退が日本に及ぼす影響とは

世界で広がるダイベストメント 化石燃料からの投資撤退が日本に及ぼす影響とは

2022年01月31日

近年、投資家の間では、資本配分の決定において、気候変動やESG課題を取り込む機運が高まっている。一方、地球温暖化に悪影響を与える石油・石炭・ガスなどの化石燃料を供給または依存する企業からの資金引き揚げ「ダイベストメント(投資撤退)」が活発化し、持続可能な社会を目指す事業を行う会社に投資をする動きがある。

ダイベストメントは欧米を中心に広まっているが、日本を代表する企業もダイベストメントを始めている。なぜ今、ダイベストメントが注目されているのか、また、日本におけるダイベストメントの現状はどうなのか、まとめた。

ダイベストメントが注目されている背景とは?

ダイベストメントは、英語で投資を意味するインベストメントの反対語で、「投資撤退」「投融資引き揚げ」などと訳される。まず、そもそも「投資を撤退するのは誰なのか」という前提の部分に触れておくと、政府などの公的機関から、大学や宗教団体などの機関、投資ファンドなどの財団、金融機関、企業単位といったところだ。こうした運営主体においてダイベストメントの波が起きている。

従来は、企業が自社の業績がふるわない事業を切り離し、事業を売却する行為をダイベストメントと呼んでいたが、近年は、欧米を中心に、環境や社会的といったESGの観点からのダイベストメントが積極的に行われている。投資家は、投資対象として ESG情報を考慮した投資行動をとるようになってきている。

2020年時点で、投資にESGの視点を組み入れることなどからなる機関投資家の投資原則(PRI)に署名する投資機関は3,470機関、その署名機関の運用資産総額は約100兆ドルにも上っている(図1)。

図1:PRI署名数の推移


(出所)PRIウェブサイトより経済産業省作成

PRI(Principles for Responsible Investment:責任投資原則)とは、2006年に国連環境計画と金融イニシアティブ、及び国連グローバル・コンパクトとのパートナーシップが打ち出した投資に対する原則のことだ。署名機関に対して、投資活動の際にESGの要素を考慮すること、また投資対象にESG情報の開示を求めることを促している。

なかでも、地球温暖化への懸念を背景に、投資家のあいだでは石炭燃料関連企業へのダイベストメントが拡大している。石炭は温室効果ガスや大気汚染物質を多く排出するエネルギー源であるため、世界的な気候目標の達成には脱石炭が必須となっている。

石炭ビジネスとして石炭火力発電所があげられるが、2021年に英北部グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で石炭火力発電の段階的な廃止をめざす動きが加速した。COP26では、先進国などは2030年代、世界全体は2040年代に廃止することなどを盛り込んだ声明を議長国の英国が発表。石炭廃止を初表明した23ヶ国を含む46ヶ国が賛同、大半の国が国内外の新規石炭発電所への投資を行わないと確約した。

また、化石燃料ビジネスが気候変動リスクだけでなく、金融リスクとも見なされるようになってきたこともダイベストメントが広がった要因として挙げられる。

エネルギー源として石炭が使用できなくなれば化石燃料が持つ価値や化石燃料に関連した事業を行う会社の収益や企業価値は大きく減少する可能性があるため、先進国の石炭関連企業の業績が厳しくなり、財務リターンの側面からもリスクがあると判断されている。石炭をはじめとした化石燃料投資が利益を得られないどころか投資した資金を回収できなくなるリスクがあるというわけだ。

海外では既に、大手の金融機関、機関投資家等が、石炭等の化石燃料を「座礁資産」と捉え、ダイベストメントの動きが加速している。では、実際にどのような事例があるのか海外の事例から紹介していこう。

ダイベストメントの具体的な取り組みとは・・・次ページ

東條 英里
東條 英里

2021年8月よりEnergyShift編集部にジョイン。趣味はラジオを聴くこと、美食巡り。早起きは得意な方で朝の運動が日課。エネルギー業界について日々勉強中。

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