そもそも省エネルギーセンターの2016年度の調査によると、非上場企業や中小企業の温暖化ガスの排出量は全体の44%を占め、排出削減の余地は大きい。サプライチェーンなども考えると、メスをいれなければいけない領域の一つだ。そして、日本の企業の9割は中小企業や非上場企業とされており、企業数でいうと圧倒的に中小・非上場企業の方が多い。そのため、上場企業までの影響にとどまるのか、それとも中小・非上場企業にまで波及するのかで、話は全く変わってくる。
脱炭素については、サプライチェーンの脱炭素化についても、企業は求められ始めている。さきほどCDPというグローバルな情報開示システムを運営しているNGOに触れたが、CDPからいい格付けをもらうことが、この脱炭素時代において、企業価値を高める方法の1つの候補となっている。
CDPの評価の一つにサプライヤー・エンゲージメント評価というものがある。
この評価は、気候変動課題の解決に向けて、その会社がサプライヤーに対していかに働きかけ、連携したかを対象として実施されるものであり、CDP気候変動質問書の中から「ガバナンス」「目標」「スコープ3排出量」「サプライヤーとの協働」「CDP気候変動質問書スコア」について評価される形となっている。
この「CDPサプライヤー・エンゲージメント評価」。最高評価だと「リーダーボード」に選出されるのだが、2020年は世界で396社が選出され、そのうち日本企業は83社が選ばれている。
83社も選ばれたということは何を意味するのか。それらの企業は、サプライヤーに対して、脱炭素要求をしたということになる。したがって、そのサプライチェーンの上流部分においては、上場・非上場問わず、脱炭素影響を受けた、という形になるわけだ。
企業にとって、企業価値の向上は重要な論点にこれから一層なっていく。なにも損保ジャパンのような形だけでなく、CDP評価などからも脱炭素の影響は出てくる。
もちろん、トヨタのようにサプライヤーに対して年率3%の排出削減を求めるというアクションにでる企業もこれから増えてくるだろう。
こうした中、金融セクターでもエンゲージメントの動きが広がっている。そこで、次に、続々と進展する投融資のカーボンニュートラルに向けた動きを紹介したい。
投融資先にも脱炭素を求める動きが加速・・・次ページ
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