地銀が地元の融資先に対して、温暖化ガスの排出抑制などに向けた事業転換を促すための融資を広げつつある。6月には産業競争力強化法が改正されるなどして、金融機関が脱炭素投資を行うにあたって利益を得られる仕組みも整ったというのも一つの要因だ。
その中で、一つ、商品事例を上げると、環境保護などにつながる目標の達成度に応じて貸出金利を優遇する融資「サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)」の活用が広まっている。
具体例には、滋賀銀行がSSLを活用していて、すでに10件以上、総額100億円以上の融資を実施している。滋賀銀行いわく、「SLLは、脱炭素に向けた取り組みを地域に広げ、滋賀県のCO2排出実質ゼロの実現と、ご利用企業さまの企業価値向上を同時に目指す融資商品」と述べており、滋賀県と滋賀銀行へ事前に提出された“野心的な”CO2削減目標の達成状況と金利等の融資条件が連動し、達成時に優遇条件を適用するという仕組みになっている。
このSLLについては肥後銀行、京都銀行、群馬銀行、八十二銀行なども追随して実施している。
また、SDGsの文脈では静岡銀行、西日本シティ銀行、第四北越銀行、ほくほくフィナンシャルグループ、武蔵野銀行、千葉銀行などが、SDGs推進の融資などを展開している。
このほか、積極的な動きを見せているのが、群馬銀行だ。2019年からグリーン金融を本格化し始めて、まず「群馬銀行グループSDGs宣言」を制定。同年に環境債を地銀として初めて発行した。そしてSLLを今年6月に開始。さらに10月には、再生可能エネルギー関連向けの投融資枠を500億円設定。
さらに10月下旬には、資金使途を環境対策などに限る「サステナビリティボンド(サステナ債)」を地方銀行として初めて発行するなど、脱炭素劇の勢いが止まらない。その背景には、脱炭素社会の実現に向けて地元産業界の環境投資意欲が高まってきたことがあり、そうした意欲に答えるべく、投融資のメニューを充実させて後押しをしている。
エンゲージメントをされる対象として中小企業や非上場企業への影響を分析したが、すでにこうした能動的な動きが中小の中でも出てきており、それに答える形で金融機関が商品を作るという動きも活発化している。
当然、こうした動きは東日本大震災と原子力発電所事故を経験した福島県にも波及している。
東邦銀行は再エネ案件に対する融資を積み重ねてきたが、「環境分野サステナブルファイナンスの推進を強化することは、今後の地域経済の復興・再生に向け大変重要である」との認識の下、持続可能な社会の実現に向け、脱炭素社会への移行や新たな産業・社会構造への転換を促すため、このほど、環境分野サステナブルファイナンス目標を設定した。2021年度から2030年度(10年間)を目標期間として重点的に取り組むとしたのだが、その金額は1兆円。地銀で1兆円をサステナブル分野にいれることをコミットした、ということで、大きなお金が動いてきた。
国際的な動きから地銀の動向まで、解説したが、上場・非上場、大企業、中小問わず、脱炭素に取り組む時代に入ったことを実感してもらえるだろう。
この中でチャンスを掴むのか、それとも逃がすのか。少なくとも脱炭素の方向に舵を早めに切ることが、チャンスを掴む方向に向かうことは間違いない。
今回はこの一言でまとめたいと思う。
『非上場・中小企業も脱炭素でチャンスを掴め』
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