損保ジャパンは11月8日、投資先企業に対し、ESG観点でのエンゲージメントを強化すると発表した。
ESGとはEが環境、Sが社会、Gが企業統治を指し、企業がそれぞれについてどれくらいしっかり持続的な取組みを行っているかを評価する指標だが、昨今、この中でも脱炭素を含むEの部分の比重が高まってきている。したがって、ESG文脈となったときに、当然、脱炭素も含まれる。
そして、エンゲージメントとは、奨励・要求をしながら、相手先に影響を行使し、行動変容をさせていくというイメージをもってもらうと分かりやすいだろう。つまり、この場合はESGの方向に投資先企業が向かうように仕向けていくということだ。
この投資先企業について、損保ジャパンは上場も非上場も含む、としている。損保ジャパンは保険契約先を中心に約900社の非上場株を保有しており、少なくとも非上場の900社は今回のエンゲージメント対象となったわけだ。
損保ジャパンは次のように述べている。
「責任ある機関投資家」として、損保ジャパンのスチュワードシップ・コードに関する方針を定め、企業との建設的な「目的を持った対話」を行い、必要に応じてリスクマネジメントなどを提供することで、当該企業の企業価値の向上・毀損防止や持続的成長を促すことに努め、スチュワードシップ責任を適切に果たすべく、取り組んでいます。
簡単にいえば、投資先をしっかりESGの方向に誘導していきます、と言っているに等しい。
そして今回、これまでの取組みに加えて、調査票形式での働きかけを開始することで、働きかけの対象を拡大するとした。その調査とは、ESG/サステナビリティの取組みに関する調査になる。調査票は、ESG/サステナビリティに関する6つの項目・合計27の質問で構成されているとのこと。
損保ジャパンは、全体の結果を企業へフィードバックすることで中長期的な企業価値向上に向けた有益な情報提供につなげていくと同時に、今後、当該調査結果を企業との双方向の対話の基盤として活用していく、としているのだが、要は、調査結果が芳しくないところについては、しっかりESGをやるように改善を求めていく、ということだ。
圧力がそこにない訳がない。多少の圧力はかけながら、ESGをやらせる、そのための調査だと思っていただくのがいいだろう。ただし、調査結果が悪いからといって、ただちに、投資撤退の判断はしないとしているようだ。
ただ、調査結果だけでは引き揚げはしない、ということは、エンゲージメントを試みて、ダメなら、撤退ということはありうる、ということの裏返しでもある。
ちなみに、CO2排出量を開示していない企業に対しては、排出量の算定や開示を支援するともしており、確実に脱炭素に関する取組みは、非上場企業も含めて何かしら進展することが想定されている。
損保ジャパンが打ち出した、この「エンゲージメント」というアクションなのだが、日本にも確実に広がってきている。そこで、中小企業にも波及し始めている脱炭素の影響について解説していきたい。
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