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EnergyShift LIVE♯6 電力イノベーター8社によるライトニングトーク

EnergyShift LIVE♯6 電力イノベーター8社によるライトニングトーク

2020年01月23日

エネルギー市場で起こる大きな変革を捉え、日本のエネルギーシフトを加速させるために求められるものは何か。新たなエネルギーテックを知り、ビジネスモデルをどう構築していくべきかをともに考えるコミュニティとして、EnergyShiftは公開イベント「EnergyShift LIVE」を毎月開催している。

2019年12月20日に開催したEnergyShift LIVE♯6では、「電力イノベーターのライトニングトーク」と題し、エナーバンク、NTTファシリティーズ、カナディアン・ソーラー・ジャパン、グッドフェローズ、グラモ、デジタルグリッド、TRENDE、パネイルの8社が登壇し、ライトニングトークを繰り広げた。その模様をお伝えする。

「エネルギーをもっとシンプルに」 エナーバンク 村中健一氏

私どもは「エネルギーをもっとシンプルに」を実現していくエネルギーテックカンパニーです。事業を通じて“人と人”、“企業と人”、“社会と企業”が対話していく「エネルギーコミュニケーション」という概念を世の中に広げ、企業におけるエネルギーの調達、再生可能エネルギーへの投資・導入、ESG投資やSDGsへのコミットメントをサポートすることで、未来のエネルギーインフラを支えていきたいと考えています。

エネルギー業界における課題として、2016年の電力完全自由化以降、専門外のプレーヤーが電力供給を開始し、需給関係が複雑化していくことが挙げられます。また、規制制度のめまぐるしい変更もあり、変化のスピードについていけない企業がどんどん出てきています。

エナーバンク 村中健一氏

われわれは、どのサービスを選択すればいいのかわからないという法人電力ユーザーに対し、エネルギービジネスが加速する各種データを流通させることで、わかりやすいソリューションを提供しています。
ひとつ目がエネオクです。これは小売電気事業者にリバースオークション(競り下げ方式入札)を行ってもらうことで、法人ユーザーが最安値の電力契約を自動的に選択できるマーケットプレイスになります。2019年1月のリリース後、10ヶ月間で取り扱い金額は28億円を超えました。

ふたつ目が再エネを選べる取引マーケット、「グリーンチケット」です。
グリーンチケットとは、グリーン電力証書の仕組みを活用し、再エネが持つ「環境価値」をグリーン電力証書化し、発電事業者と需要家をつなぐ環境価値取引サービスになります。太陽光発電システムの販売、EPC(Engineering:設計・Procurement:調達・Construction:建設)を行うエクソルとアライアンスを組み、2019年11月から本格的にスタートしました。

再エネの発電コストが既存電力より安くなるティッピングポイントが近い将来、訪れます。「エネルギーコミュニケーション」を広げることで、未来のエネルギーインフラづくりに貢献したいと考えています。

キーワードは「差別化」「世界に広げる」「地域と成長する」 NTTファシリティーズ 平形直人氏

最新のエネルギービジネスの動向における一考察を紹介させていただきます。

キーワードは3つあります。ひとつめ、再エネは、「始める」ということはもはや常識となり、「差別化する」ステージに入りました。ふたつめが、日本は再エネ導入が世界から遅れており「世界から学んでいる」という認識が多いのですが、われわれは「世界に広げる」というアクションが必要だと考えています。3つめが、われわれも地域新電力事業を約5年実施していますが、「地域にお金をおとす」段階から、「地域とともに成長する」モードに入りました。

NTTファシリティーズ 平形直人氏

まずひとつめのキーワードです。FIT制度のもとで再エネをつくる時代から、ノンFITで再エネをつくり、生のグリーン電力を供給する時代に入りました。しかし、このようなサービス提供者は増えており、価格競争になっています。今後は差別化が必要になります。 たとえば安心・安全です。生態系や住環境に配慮した再エネをつくる。あるいはもっとも効率の良い再エネをつくり、差別化を図らなければ生き残れない時代に入ったわけです。

ふたつめが「日本から世界に広げる」です。世界中でRE100への加盟が増加していますが、その一方で、RE100にあえて加盟しない企業がいます。実はRE100は再エネの追加性をさほど求めてはいません。しかし、「新たにつくった再エネ電源からしか、われわれは電気を買わない」という企業が今、増えています。その一例がAmazonです。こうした動きをどう捉えるのか。再エネ電気の利用方法について現在、日本がリードし国際標準をつくろうという動きが進み始めています。

最後が「地域と成長する」です。地域新電力でよくある地域貢献の形態が、「需給管理を地元でやってください」「営業をやってください」「そうするとお金が地域に還元されます」というものです。
これ自体はすばらしいのですが、実は地域新電力の活動のなかで動く金額全体からすると数%です。一方、電力事業のなかで一番お金が動くのが電源調達です。私どもは、自治体、地元企業とともに、再エネ発電所の導入等を通じて地域の企業がさらに潤う、より地域にお金が循環し、地域と成長するプロジェクトを進めています。

卒FIT時代における太陽光パネルメーカーの戦略 カナディアン・ソーラー・ジャパン 足立厚氏

私どもは、世界4位の太陽光パネル出荷量を持つメーカーです。2001年に創業し、日本法人は2009年に設立しています。
これまでは太陽光パネルだけを売っていればいい時代でしたが、FIT制度からFIP制度への移行議論が進んでおります。また2019年11月から卒FITの一般家庭が排出され始めました。弊社の太陽光パネルを搭載した一般家庭も卒FITユーザーとして今後増加していきます。

今後の太陽光発電は、従来までの売電目的ではなく、自家消費にシフトしていきます。そのため、私どもも太陽光発電で発電した電気を家庭内で自家消費できる、次世代エネルギーシステムの販売をスタートさせました。

カナディアン・ソーラー・ジャパン 足立厚氏

住宅用太陽光発電と蓄電システムをパッケージ化した「SOLIEV(ソリーヴ)」という製品をリリースしています。太陽電池と家庭用蓄電池、そしてEVの蓄電池3つをつなげ、太陽光発電で発電した電気はEVや蓄電池に貯めることができ、家庭内で自家消費できるというものです。
特徴は、V2H(Vehicle to Home)機能を搭載しているので、災害などで大規模停電が起こっても、EVに貯めた電気で冷蔵庫やテレビ、照明、エアコンなどが使えるという点です。

再エネ100%を本気で目指す グッドフェローズ 竹内昭彦氏

私どもは、太陽光発電のマッチングサービス「タイナビシリーズ」を運営しています。創業は2009年3月です。2019年に10周年を迎えました。

これまでの10年間は太陽光発電の一括見積もりサイト「タイナビ」シリーズ、太陽光発電設備のオペレーションとメンテナンスをつなぐ「はつでん管理人」、高圧電気料金一括見積もりサイト「スイッチBiz」、そしてセミナーやフォーラム開催を中心とした「タイナビ総研」という事業を展開してきました。

グッドフェローズ 竹内昭彦氏

10周年を迎え、「日本を代表するエネルギー企業となり、再エネ100%の実現に貢献する」というビジョンを掲げました。私どもは、再エネ100%を実現するためにインターネットメディア事業とエネルギー事業の2つを展開し、ITとリアル(商社機能)の両面から再エネの普及を推進していきます。

これまでのメディア事業の実績として、現在15万人以上の個人・法人ユーザー会員を保有し、1,000社を超える販売・施工店とのマッチングを支援してきました。タイナビ会員が保有する再エネ発電所の容量は約7GW、原子力発電所7基分に相当します。

今後はVPPやPPA、セカンダリーマーケットの領域にも展開していく予定です。ただ私ども1社だけでは実現できませんので、ぜひ電力イノベーターのみなさまと一緒になって、再エネ100%を目指していきたいと考えています。

ひとつのアプリでIoTフル連携のiRemocon グラモ 後藤功氏

私どもグラモ社は、2011年の創業から「人の住う空間を安心・安全・快適に」をビジョンに、Home IoTを開発してきた企業です。まだIoTやスマートホームという概念がなかったころから、「iRemocon」という自宅や外出先からスマートフォンでさまざまな家電をコントロールできる製品を開発し、提供してきました。

当初は赤外線リモコン対応機器の制御だけだったのですが、さらに発展させ、ECHONET Lite対応機器はもちろん、給湯器や床暖房のコントロールも可能です。またBluetoothによるリモコン制御や蓄電池、スマートメーターなどとの連携も実現しております。スマートスイッチや人感センサーや温湿度センサー、スマートロックとも連携済みです。

ひとつのアプリでリモコン、GPS、センサー、HEMS、鍵、コンセントなどの管理をするのが、「iRemocon SmartHome」になります。たとえば外出先からでも、室内の温度、湿度、照度を確認することができます。

また、自宅近くの駅に着いたら、自動的にエアコンを動作させる。自宅近くになったら自動的に照明を点灯させる。逆に自宅エリアから離れたら、自動的に照明やエアコンをOFFにして消し忘れを防止するなども可能です。今、お使いのスマートフォンが超高機能リモコンになるというイメージです。

最近、特に引き合いが多いのが「グラモスマートロック」です。この製品は、遠隔で施錠できる電子施錠であるうえ、手動でも解錠ができるという特徴があります。単三電池4本だけで約2年もつのですが、万が一電池が切れても、ドアのたてつけが悪くなっても、手動で確実に施錠できるため、多くの住設企業に採用していただいております。

弊社の特徴は、すべての製品が自社開発であることです。ひとつのアプリで完全統合、完全連携、簡単設定を実現しているので、システム的にも安心・安全です。大規模運用にも耐えうる社内運用体制を持っていることも強みです。

こうした優位性のもと、蓄電池や空調、給湯器など連携可能な機器・サービスをお持ちの企業とのアライアンス拡大を推進していきたいと考えています。

グラモ 後藤功氏

誰でも電力取引が可能となる電力の民主化を目指す デジタルグリッド 松井英章氏

われわれデジタルグリッド社が目指す世界は「エネルギーの民主化」です。

地域新電力や卒FITが増加する一方、分散電源も増えています。つまり発電側も需要側も分散化が進んでいく中で、課題となるのが需給管理など電力事業特有の業務です。

そこで、小売電気事業者の資格がなくても誰でも自由に電力を売買できるよう、ブロックチェーンを使ったP2P取引市場「デジタルグリッドプラットフォーム」を2020年2月に商用ローンチする予定です。

このプラットフォームの仕組みを簡単に説明します。まず、需要家はプラットフォームと1年間の長期相対契約を結んでもらい、需要家の1年間の需要をプラットフォーム側のAIで予測します。この需要予測を発電側に提示し、量と価格のマッチングを行うというものです。ただ、1年間の需給予測なので、どうしてもズレが発生してしまいます。こうした短期需給調整に関しては、JEPXと自動連動し調整する仕組みを構築しています。

われわれは50社を超える企業から出資をいただいております。こうした事業パートナーからプラットフォームに参加していただき、商業化を進めていく予定です。

また、FIT制度が終わりを迎える中、「でなり」ではなく発電側は自分で販売先を見つけ、需給調整をしなければいけない時代に入っていきます。あるいは自家消費モデルを確立しなければいけません。

私どもが開発したデジタルグリッドコントローラーというIoTデバイスとプラットフォームを組み合わせると、太陽光発電の発電予測も、需要予測もAIで計測できます。需給マッチングを適切に行うことで、再エネの導入・拡大にも貢献していきたいと考えています。

また、各社がRE100達成を目指す中、再エネ調達ニーズが増加しています。われわれも再エネ電源を特定して、需要家に提供するという仕組みを2020年後半までに提供していく予定です。
誰もが自由に電力、そして再エネの環境価値を取引できるプラットフォームを提供することで、エネルギーの民主化を目指していきます。

デジタルグリッド 松井英章氏

「持続可能な電力インフラを目指して」TRENDE 武田泰弘氏

TRENDEは2017年に東京電力からスピンアウトして発足した企業です。
われわれは再エネを普及させて、持続可能なエネルギーインフラを構築したいと考えています。実現させるためのSTEPは3つあります。

STEP1が、一般家庭に電気の小売サービスを行って、お客さまを獲得する。われわれが提供する「あしたでんき」は、とにかく価格を魅力的にすることで、顧客獲得を進めております。

TRENDE 武田泰弘氏

STEP2が、再エネを増やすことです。初期費用0円で太陽光パネルを設置できる「ほっとでんき」というメニューを提供しています。仕組みとしては、PPA(電力購入契約)とTPO(第3者所有モデル)のふたつを利用し、われわれがお客さまの屋根をお借りし、太陽光発電システムを設置させていただきます。設置の対価として、割安の電気を供給するというモデルです。

契約期間は10年間、もしくは20年間となり、契約期間中、太陽光パネルのメンテナンスは弊社が責任を持って行います。われわれは太陽光パネルが発電した電気をFIT制度のもと売電し、売り上げを得るという仕組みです。契約満了後は、太陽光発電システムは無料で差し上げます。

STEP3は、P2P取引です。お客さまがいる、再エネ導入も進んだ状況では余剰電力が生まれてきます。その余剰電力をP2Pで取引できるよう実証実験を進めています。
現在、東京大学、トヨタ自動車とともに、ブロックチェーンを活用して、住宅や事業所、EV間での電力取引を可能とする次世代電力システムの実証を行っています。こうした仕組みを提供することで持続可能な電力インフラをつくっていきたいと考えています。

日本のデジタルトランスフォーメーションを加速させる パネイル 定田充司氏

弊社は「世界中のエネルギー市場に最先端のEnergyTechを」をビジョンにした、エネルギー×IT企業です。

多くの事業を展開していますが、そのひとつが「Panair Cloud」です。これは、電力小売りに必要な営業や顧客管理、需給管理、請求、決済までの機能を一気通貫で提供しているものです。AIやRPAによる業務自動化も加わることで、業務コストを大幅に削減することが可能です。どのくらい削減できるかというと、たとえば数年前、月間百数時間かかっていた請求業務を1営業日以内で完了させることができます。

また、東京電力エナジーパートナー社と「Pint」という合弁会社を設立しています。Pintでは、電気だけではなく、都市ガスや通信の提供、また不動産パートナーと組み、「Pint With 賃貸」といった業界特化型付加価値サービスも提供しています。

パネイル 定田充司氏

丸紅新電力社と提携し、「丸紅ソーラートレーディング」という合弁会社も設立しています。この合弁会社は卒FITの買取事業を進めており、毎月数百件ベースでお客さまが増えているという状況です。

エネルギー業界にあるあらゆるデバイスから取得できるデータを集積・分析して、データ活用をしたいパートナー企業と組んで、日本のデジタルトランスフォーメーションを加速させる。これがわれわれの果たすべき役割だと考えています。ぜひ弊社が持つIT技術を活用いただいて、みなさまと協働事業を構築していきたいと考えております。

(執筆:EnergyShift編集部 藤村朋弘)

藤村朋弘
藤村朋弘

2009年より太陽光発電の取材活動に携わり、 その後、日本の電力システム改革や再生可能エネルギー全般まで、取材活動をひろげている。

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