エネルギー デジタル化の展望と環境価値 デジタルグリッド 豊田祐介氏×カーボンフリーコンサルティング 池田陸郎氏 | EnergyShift編集部

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エネルギー デジタル化の展望と環境価値 デジタルグリッド 豊田祐介氏×カーボンフリーコンサルティング 池田陸郎氏

エネルギー デジタル化の展望と環境価値 デジタルグリッド 豊田祐介氏×カーボンフリーコンサルティング 池田陸郎氏

EnergyShift編集部
2019/10/11
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EnergyShift LIVE #4

電力市場20兆円と石油市場20兆円で起きる大きな変革を捉え、日本のエネルギーシフトを加速させるために求められるものは何か。新たなエネルギーテックの情報を探り、ビジネスモデルをどう構築していくかをともに考えるコミュニティとして、公開イベント「EnergyShift LIVE」を毎月開催しています。

2019年9月27日に開催したEnergyShift LIVE♯4では、「エネルギーデジタル化の展望と環境価値」というテーマで、デジタルグリッドの豊田祐介代表取締役社長とカーボンフリーコンサルティングの池田陸郎取締役をお招きし、対談形式でエネルギーテックと環境価値の今を語っていただきました。

SDGsを実装しなければ、企業は生き残れない

氏:弊社は環境専門のコンサルティング企業です。主な取引先は、環境省、経済産業省、地方自治体などで、地球温暖化対策の諸制度に関するさまざまな業務を担っています。また、CO2排出係数を減らしたい企業に対して、コンサルテーションなども行なっています。

今のトレンドがSDGs(持続可能な開発目標)です。世界を変えるための17の目標の中でも、7番目が「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」です。企業が気候変動問題に取り組むとき、「再エネ電源を買って、RE100を目指そう」というより、「SDGsに取り組もう」というほうがハードルが低くて、経営陣もすんなり受け入れてくれます。

では、なぜ企業は、SDGsに取り組まなければいけないのか。例えば、プラスチックによる海洋汚染によって、生態系への影響が深刻になっていますが、実は、私たちの体内にも食塩を通じて、大量のマイクロプラスチックが入っています。

生態系に危機を及ぼすとともに、われわれ人類が有害物質で汚染される危険性も高まっています。そのため、省庁や国立大などの食堂ではもう使い捨ての食器は撤廃されています。

今までプラスチック製食器を納めていた業者さんはいち早くSDGs的な経営にシフトしていかなくちゃいけない。

SDGsは大きなビジネスチャンスをもたらす

池田氏:じゃあ、企業はどうしているのか。凸版印刷は、「シャンプー用のプラスチックボトルがどんどん生み出されているけど、お風呂場でもふやけない紙パック容器を開発したので、化粧品メーカーさん使ってください」という新しいビジネスを考えました。

アディダスは、海に捨てられたプラスチックを集めて、チップにして、靴を作りました。一足3万円ですけれども、欧米の意識高い系の人たちは3万円でも、「海洋を綺麗にすることに貢献できる靴だったら、履きたい」と一瞬で100万足くらい売れました。

デロイトトーマツコンサルティングによると、 SDGsは大きなビジネスチャンスをもたらす市場であり、17項目それぞれ70兆円から何百兆円もの市場規模があると試算しています。その中でも一番突出した市場規模を持つ項目は、7番の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」です。断トツの803兆円の市場規模があるといいます。

カーボンフリーコンサルティング資料より

SDGsに取り組むということは、新規ビジネスにつながる可能性が大いにあるということです。

先駆者になれれば、中小企業でもNYデビューできちゃう

池田氏:SDGsに先進的に取り組む企業の1社が、大川印刷です。従業員40名ほどの印刷会社ですが、3年ほど前に、「印刷業をSDGs的にやっていこう」という経営方針を掲げ、お客さんが「うちの印刷物は再エネ100%で刷られています」と訴求できるようにした。「環境印刷で刷ろうぜ」というキャッチコピーも作ったら、環境省などからSDGs印刷物の発注が来たんです。

太陽住建という企業も面白い。太陽光パネルを設置したりする、従業員8名の工務店です。六角棒レンチだけで施工できる太陽光パネルの工法を編み出しました。そうすると障害を持たれている方でも、お年寄りでも太陽光パネルの施工ができるようになり、障害者雇用と再エネ活用の両方が実現できる。

8,600万の需要家みんなが、自由に電気を取引できる場をつくりたい

豊田祐介氏:「デジタルグリッド技術」とは、再生可能エネルギーの円滑な拡大と、誰もが電力取引に参加できる環境を実現するために、東京大学工学系研究科の特任教授だった阿部(力也)が作った概念なんです。

今は、JEPXの会員企業である約170社は市場取引ができますが、他の方々は電力会社から電気を買うだけです。しかし、日本には8,600万もの需要家がいますし、発電機も300万ユニットあります。僕たちがやりたいことは、電力取引のプラットフォームをつくって、8,600万の需要家みんなが自由に電力を売買できる場を提供することです。

ブロックチェーンとは、イノベーションを起こせる手段

池田氏:ブロックチェーンとは、どんなものですか?

豊田氏:一言でいうと、ベンチャーの人たちでもイノベーションを起こせる手段です。2016年くらいから東大で研究ベースから走っていて。電力の当日売買とか、デマンドレスポンスに近い瞬時の売買から、少し時間がかかっても大丈夫な環境価値、属性の証明など、いろんな実証を繰り返してきました。

2020年1月から商用をローンチするんですが、残ったのは環境価値、発電源をきちんとトラッキングする分野です。

どうしてもブロックチェーンは一つのブロックの中に入るデータの数に限りがあるので、たくさんトランザクションを入れたとしても、ブロックがいっぱいになってしまう。そのブロックを生成するにも、ある一定程度の時間がかかってしまいます。需給調整市場で、数分単位でレスポンスをしていこうと思うと、どうしても今のブロックチェーンだと厳しい。

でも、今のブロックチェーンでも、きちんと発電源をトラッキングするというところは極めて有効なツールになると思っています。

P2Pで、その人に最適な電気が買えるようになる

豊田氏:我々の株主には大企業さんが結構、いらっしゃって、SDGsを掲げています。そこで「きれいな再エネを買いたいんだけれど、そんなにコストはかけられない」と困っています。きれいな電気メニューを買うまでの予算はないけれど、SDGsや2030年目標を達成するために、なんとかならないかという。

僕たちは、P2Pがその解決策になるんじゃないかと思っているんです。

電力会社が提供する料金メニューって、CO2排出係数ゼロメニューか、それ以外かという、All or Nothingという形のメニューが多いんですね。でも、僕たちは取引所を提供することで、「今年はCO2をこれだけ削減したい」という人が、それに見合う電源を見つけてきて、ピア単位で、その人にあった電気を買えるようにしたいんです。

池田氏:再エネ比率を高める手段は、まずは自社の屋根の上に太陽光パネルを置いて、そこから流れてくる電気を使う。もう一つは、電力会社から、低排出係数の電気か、再エネが電源構成の大部分、もしくは100%占めるという電気を買う。もう一つが、化石燃料の電気だけれども、再エネ価値を買ってきて埋め合わせるという3つがあります。

100%を目指すのであれば、100%再エネ化された電気を買うのが一番楽です。パネルを屋根上に置いても、年間最大20%くらいしか再エネ比率は高められない。その他の80%については、化石燃料の電気と再エネ価値を買うという話になります。

10億kWh〜20億kWhの環境価値が眠ったまま

池田氏:この再エネ価値には、Jクレジットやグリーン電力証書がありますが、流通量が限られています。

しかし、太陽光発電などで作った電気を自家消費する一般家庭や自治体、削減目標を持たない企業が、電気と一緒に作り出した再エネ価値は、相当量埋没してしまっています。

この埋没した再エネ価値をブロックチェーンを使って集めて、Jクレジット化したり、グリーン電力証書にすれば、安定的に再エネ価値が欲しい企業とマッチングさせることができます。マッチングさせて、決済のところまですべてデジタルグリッドさんができるのでは、と期待しています。

豊田氏:(再エネ価値の量は)Jクレジットだったら約6億kWh、グリーン電力証書だと約3億kWhが今取引されていますが、PV搭載の一般住宅でも、約300万戸あるので、少なくとも10億kWhとか20億kWhという価値が埋もれていると思います。

弊社に出資をしている企業の中で、「きれいな電気が欲しい」という企業が使っている電気を全部足すと700億kWhくらいです。500億kWhのオーダーで取引されている非化石証書を全部あてても足りない。

エネルギーのデジタル化によって、社会課題を解決したい

EnergyShift:エネルギーのデジタル化によって、今、日本が抱える社会的な課題をどう解決できるのでしょうか?

豊田氏:再エネの追加性も大事だと思っています。

株主の1社であるソニーのように、「太陽光発電所を作って、自己託送します」というプロジェクトが進んでいますが、苦戦しています。なぜかというと、小売電気事業者という資格が必要になり、自分たちの30分ごとの需要予測を毎日やる必要があります。一方で、発電側の発電予測もしなくちゃいけない。

でも、AIを使えば需要や発電の予測はできますし、国への提出書類も、自動化してしまえば、実は簡単にできてしまう。発電機単位や地方自治体単位で電気を買える、再エネを追加的に増やせる場を提供していきたいと思っています。

デジタルグリッド社資料より

日本はパラダイム鎖国
化石燃料を使い続ければ、世界のサプライチェーンから外される

池田氏:国連気候行動サミットで、スウェーデン人のグレタ・トゥーンベリさんが、怒りのスピーチをしましたよね。あのスピーチに対し、日本では怒りが理解されないことが多い。日本ってパラダイム鎖国だということをすごく実感するんです。

「日本は化石にまみれた電気でものを作っている」として、世界のサプライチェーンからスキップされる。中国は砂漠に太陽光パネルが沢山あって再エネ率が高いから、中国の工場に発注したほうがクリーンな電気でものを作ってくれるとなってしまう。そういう危機感が(日本には)ないんです。

パラダイム鎖国はやめて、「化石燃料由来の電気で工場を稼働させていたら恥ずかしい」と思うようなモラルをどんどん作っていかなければいけない。

その急先鋒であるみんな電力では「みんな電力から電気を買っています」というだけで、企業価値が上がるという流れをつくりつつある。でも、それはみんな電力以外でもできるはずです。

プロフィール

豊田祐介(とよだ ゆうすけ)

2012年東京大学大学院工学系研究科修了(技術経営戦略学専攻/阿部研究室卒業生)後、ゴールドマンサックス証券に入社。証券部門において為替・クレジット関連の金融商品組成・販売に従事し、戦略投資開発部においては主にメガソーラーの開発・投資業務に従事。2016年よりプライベートエクイティ(PE)ファンドのインテグラルにおいて幅広いセクターにおいてPE投資業務を行い、2018年よりデジタルグリッドに参画。2019年7月2日にデジタルグリッド株式会社代表取締役社長に就任。

池田陸郎(いけだ りくろう)

東レ株式会社機能製品事業部を経て、アウトドアフィットネス株式会社に参画し、BEACH葉山の設立に携わる。その後、カーボンフリーコンサルティングに入社(グループ内異動)。国内の環境関連制度に精通。日本全国において排出権の創出、カーボンオフセット企画、J‐クレジット制度における共同実施者のマッチング、普及活動(講演や研修など)に従事。その知見を活かし、自治体における環境をドメインとした活性化コンサルティングや、産学連携の取り組みのアドバイザーも手がけている。


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