セブン-イレブンがNTTから再エネ調達 再エネ争奪戦が勃発 | EnergyShift

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セブン-イレブンがNTTから再エネ調達 再エネ争奪戦が勃発

セブン-イレブンがNTTから再エネ調達 再エネ争奪戦が勃発

2021/04/02

3月31日、セブン&アイ・ホールディングスは、「セブン&アイグループ、NTTグループから再エネ調達 国内初、オフサイトPPA含むグリーン電力を一部店舗に導入」というリリースを出した。なぜこのタイミング、この内容なのか。このリリースの裏にあるとみられる「再エネ争奪戦」を、前田雄大の分析でお送りする。(エナシフTV連動企画

セブン-イレブン、NTTからの再エネ調達の本当の意味は

先日の記事「石炭火力輸出支援停止報道」でも、「企業は独自に早く脱炭素切り替えを行わないと置いて行かれるので感度を高くしておくべし!」「日本でも脱炭素は本格化する。しかし、再エネ自体が日本には少ないので争奪戦が勃発する」という話をしました。

その前触れともいうべき事態が、今回の「セブン-イレブン、NTTからの再エネ調達」のリリースです。

今回のリリースではPPA(電力調達契約)と言われる形態に近い形での電気調達契約となっています。このPPA、これから日本でも主流化していくと思います。このような事業における再エネ調達は、これからの企業の生命線になってくるといっても過言ではありません。

というのも、欧米ではこうした電力調達がすでに争奪戦の形で主流化しており、日本でも太陽光の値段が下がってきているからです。

PPA(電力調達契約)とはなにか。

日本の電気の調達は系統から小売事業者を介して電気を買うという形になっています。楽天でんきとか、ENEOSでんきとかもそうですし、東京電力、関西電力の小売りも同じです。

その電気は、発電事業者が火力や水力、原子力、それから再エネの発電所から作った電気を系統に流し込んだもの、いわば、ミックスされた電気を購入している形になります。

それに対してPPAというのは、直接、相対で電気を電気事業者から購入する仕組みです。その場合、産直農産品のように、どの発電所から購入しているか、を紐づけた形で購入するのが一般的です。発電所ごと契約する感じですね。

このメリットはこうなります。

  1. 産直なので、再エネ電源をそのまま独占契約できる
  2. 需要家にとっては発電所からの電気を安定確保できる
  3. 発電事業者としては長期契約で電気を売ることができる
  4. 相対での契約になるので、両者にとってwin-winな形で契約がまとまれば、市場を介するよりも得になる。

仮に再エネ電源の値段が下がってきているのであれば、それを青田買いすることで、④のメリットが結構出てくるのです。

いま、世界は完全に脱炭素の時代ですが、感度の高い企業はこぞってこのPPAを導入してきています。

このグラフを見てください。ものの見事にGAFAが上位にきて、他にもマイクロソフトだの、早々たる企業がPPAを調達しています。

PPAトップ契約者 2007〜2020の累積量


単位:メガワット ソース:Bloomberg NEF

なぜか。世界ではもはや、再エネの方が安いからなんですね。安くて、リスクが少ない、しかも気候変動に資するので、ESGやSDGs文脈でもアピールできる、となれば、もうここは直接調達するわけです。

世界における再エネのコストのグラフがこちらです。見事に太陽光と風力が下がっていますよね。となると、先ほどのメリット④(市場よりも得)も出てくるので、PPAとなるわけです。

世界の電源別大型発電施設の発電コスト (LCOEの平均値、US$/kWh)

石丸美奈, 環境問題, 共済総研レポート No173(2021.2)P.10

順調に世界におけるPPA割合がこのように増えています。日本にいると感じないんですけどね。まだ、この流行が来ていないのと、これまで再エネ価格が高かったからです。

いま、太陽光の値段はどうなっているか。関電の2014年時点の記述によると、天然ガスは約14円、石炭は約12円、原発はこの時点では10円。原発に関しては、安全確保のために色々経費がかかるので、これよりコスト単価は上がっていると見て間違いないです。

太陽光ですが、2014年では高い数字がどうなったか。経産省が今年発表した入札上限価格、2021年度最後(第11回)は事業用太陽光は上限10.25円です。この数字で応札するということは、つまり、1kwhあたり10円下回ってもできるくらい、太陽光発電のコストが下がってきたということの証明になります。

もうお分かりですね。日本でも通常稼働しているものよりもコストが安く、太陽光で電力供給できる形になったのです。

いまの電気代よりも下手したら安く調達できる、ないし、多少高くなっても再エネの付加価値が乗るという形になるということです。

世界の脱炭素の波が完全に来て、日本にもその高波が来る、と読めば、メリットの①(独占契約)も効いてきます。いわずもがな②(安定確保)も確保できる。事業者にとっても20年契約ならそこに提供していきたい、となるので、もうwin-winでしかないんですね。

脱炭素へNTTの再エネへの本格参入

NTTは、実は脱炭素の波を2019年前後から感じて準備していました。

スマートエネルギー事業の推進会社として、2019年6月に子会社のNTTアノードエナジーを設立。NTTグループは全国に電話局と電話線網を保有していますし、土地も持っています。発電所を作ったり、所有している建物の中に蓄電池を入れたり、ということをこのNTTアノードエナジーでやろうとしている。

まさにこれは脱炭素ど真ん中戦略ですよね。さらに、グループが持つ送配電や新たに開発するICTプラットフォームを組み合わせて電力事業を進める考え、とのこと。

NTTアノードエナジー中期ビジョン

NTTアノードエナジー中期ビジョン

NTTアノードエナジー株式会社 中期ビジョンの公表について 2019.11.12

発電所作って所有して、それらを束ねて、バックアップもしながら、電力を供給するというモデル。これ本気でやられたら、結構、事業者きついかなと思います。既存電力勢力との食い合いはここから始まっていますね。

NTTは2020年に打ち出した再エネ戦略で、自前の再エネを増やすと表明(7.5GW)。自社グループが消費する電力の3割を2030年度までに再生エネに切り替え、外部への電力販売にも本格参入する方針を打ち出し、本格参入となったというわけです。

こうなるとあとは大口需要家がほしい。そこに現れたのがセブンイレブンです。

セブン-イレブンのこれまでの再エネ施策と、今回の内容の分析

セブン-イレブンは2019年5月に環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を策定。その中において、「脱炭素社会」を目指すべき社会の姿として掲げ、店舗運営に伴うCO2排出量を2013年度比で2030年度までに30%、2050年度までに実質ゼロを目標に、省エネ・再生可能エネルギーの利用拡大を進める、としていました。

2019年5月での計画策定は早い方ですが、内容としては2050年カーボンニュートラルと、そこまで野心的ではありません。ただ、やっぱり、早く動いた分の利はあったのでしょう。

2019年9月には、神奈川県内のセブン‐イレブン10店舗において、店舗運営に関する電力エネルギーをすべて再生可能エネルギーで調達する実証実験を開始。

EV到来もちゃんと見越していました。セブン&アイHLDGSは、2020年2月末時点ですでに、全国42店舗の「イトーヨーカドー」「Ario」「西武百貨店」「そごう」に合計約2,800台のEV用充電器を設置。42店舗で2,800ということで一つの施設あたり60を超える台数ということで、通常と比べると多いですし、充実しています。

やはりグローバル企業でもあるセブン&アイHLDGS。世界の脱炭素の流れと、PPAの有用性に気づいたんでしょうね。

日本は再エネの量が多くないので、今がチャンス。大口需要家を探していたNTTとの思惑が合致し、晴れて今回の提携、という流れになったわけです。

今回の仕組みは、報道によれば、NTTアノードエナジーが千葉県内でセブン&アイ専用の太陽光発電所を2ヶ所新設。この発電所でつくった電力を、6月から首都圏のセブンイレブン40店などに電力を供給するという仕組み。そして20年間の長期契約。

PPAで20年契約は世界のトレンドから見れば、別に驚くことでもなく、また、FITの買取期間が20年であることも考えれば、整合性があります。

セブン&アイHLDGS、これでESG、気候変動文脈で投資家対策も出来ましたし、再エネの争奪戦も機先を制することが出来た、というわけです。全国への規模拡大もNTTと提携していれば、土地を持つ彼らなら供給可能でしょう。

面白くなってきましたね。カーボンプライシングが導入されたときに、情報弱者にとっては厳しくなってくる一方、まだこの瞬間、小粒でもいいパートナーを見つければ、機先を制することができそうです。

ということで今日はこの一言でまとめたいと思います。

「セブン-イレブンがあげた争奪戦ののろし 感度高く受け止めて機先を制しよう」

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボール出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。