中国は、石炭のクリーンな利用を支援するため、2,000億元(約3.6兆円)相当の特別再融資枠を設立すると11月17日に発表した。CCTVによると、再融資枠は、石炭のクリーンで効率的な処理を促進するために充てる。具体的な内容は明らかにされていないが、有害な汚染物質や不純物を除去する洗浄などが含まれる可能性があるという。
英グラスゴーで開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)は11月13日、成果文書「グラスゴー気候合意」を採択し、閉幕した。中国は、石炭火力の「段階的廃止」という表現に対し反対し、「段階的に削減」に表現を弱めるよう働きかけた。
中国は世界最大の排出国でありながら、習近平国家主席がCOPに欠席し、排出削減目標の引き上げも見送ったことで各国から批判が集中。これに対し中国は石炭消費量の削減に向けて「多大な努力」を既にしていると反論していた。
中国は電力の60%以上が石炭火力発電となっている。中国生態環境部の研究機関専門家は、発電や製鉄、セメント、石炭化学の4部門を含む主要な石炭利用産業の消費は、2024年ごろにピークを迎える可能性があるとの見方を示す。これら4つの産業部門の石炭消費は中国全体の86%超に達し、炭素排出量では70%超を占めている。
先の専門家によると、4産業部門の石炭消費量のピークは24億8,000万トンに達する可能性があると予測。その上で、「製鉄やセメント部門の消費は2021年にピークに達したと思われる。石炭化学部門は2024年ごろまでとなるだろう」と分析した。
一方、中国では、EV販売に政府が補助金を支給して普及を後押ししてきた。国内におけるEVなどの「新エネルギー車(NEV)」の新車販売は好調だ。
中国政府系投資銀行の中国国際金融(CICC、中金公司)は、中国の乗用車の新車販売台数のうち、NEVが占める比率が2050年に90%に達するとの予測を示した。
特に向こう10年は爆発的に比率が上がるとみている。NEVの普及をけん引するのは中国ブランドとなる見通しだ。だが、今年9月時点で中国の自動車保有台数のNEVの比率はわずか2.3%で、ガソリン車が大半を占めている状態だ。中金公司は「乗用車のガソリン車の保有台数は2030年、早ければ2025年までにピークアウトする」と予測している。
また、世界最高レベルの再エネの導入実績がある。中国の累積導入量は2020年9月末時点で合計7.9億kWと世界全体の30%を占める。その過半が、太陽光発電(2.2億kW)と風力発電(2.2億kW)だ。年間導入量も7年連続世界トップで、2位の米国に3倍近い差をつける。
一方、石炭火力の重荷から抜け出そうと、中国はエネルギー転換に動くものの、石炭の不足と価格高騰により電力不足が起こり、景気の足かせとなっている。電力・石炭不足は年明け後に解消に向かうとみられているが、環境政策を巡る中国のジレンマは根が深い。
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