コロナ禍からの復興は脱炭素に向けた転換の機会となるはずだったが、どうやらその期待は裏切られたようだ。国際的な再生可能エネルギーの政策ネットワークであるREN21は6月15日、「自然エネルギー世界白書2021」を発表した。この10年間で再エネと化石燃料のシェアはほとんど変化せず、「直近10年の気候政策に関する約束は空疎な言葉でしかなかった」と指摘した。
REN21の報告書によると、エネルギー全体に占める化石燃料の割合は2009年時点で80.3%、2019年は80.2%だった。一方、2009年8.7%だった再エネは、2019年に11.2%とわずかに上昇した程度で、「この10年、最終エネルギー消費において化石燃料の占める割合は1インチも動かなかった」と指摘する。
また、2020年のエネルギー消費はコロナ禍によって歴史的な減少をしたにもかかわらず、G20のうち再エネ導入目標を設定したEU-27、フランス、ドイツ、イタリア、イギリスの5ヶ国は目標達成に苦しんだ。
その一方で、日本を含む15ヶ国は目標すら設定していなかった。
REN21は「再エネによる健康、気候変動、雇用創出といった便益に議論の余地はない」と指摘する。実際、電力分野における再エネ転換は加速している。
2020年、世界で256GW以上の再エネが導入され、前年比約30%増を記録した。すでに中国、EU、インド、米国など多くの地域で、既存の石炭火力発電を運転するよりも、風力発電や太陽光発電を新設する方が低コストになっている。
2020年は中国や日本、韓国がカーボンニュートラル目標を掲げたほか、1,300億ドルもの資金がグリーン経済復興へと投入され、「世界全体で気候経済と再エネのためのリセットボタンを押す年にするはずだった」が、その期待は裏切られたようだ。
報告書では「再エネの便益を無視して、再エネの6倍の資金を化石燃料に提供した」と言及する。
報告書では日本の再エネ動向にも言及している。
2020年、太陽光発電は前年比16%増となる8.2GWが新設された。風力発電の導入量は前年比2倍となる約0.6GWとなり、初となる洋上風力発電の入札を開始した。また、洋上風力を毎年100万kWずつ増やし、2030年までに1,000万kW、2040年までに3,000〜4,500万kWを導入するという「洋上風力産業ビジョン」を発表した。
そのほか、再エネ由来の電力で充電することを条件に、電気自動車(EV)への補助金を最大60万円まで増額。こうした手厚いEV普及政策はオーストリア、ドイツに並ぶものだという。
日本は、カーボンニュートラルの実現に向けて、2050年までに再エネ比率を50〜60%にするという参考値を示したが、2019年の再エネ比率は約8%だった。
REN21は、「日本は長期的なゴールを設定したものの、2020年の具体的な再エネ導入目標を設定しておらず、温室効果ガス排出量の実質ゼロ目標や将来の再エネ比率目標を掲げるだけで、実際に再エネの導入につながるのか」と疑問を呈する。
「再エネへの転換に向けた短期目標と長期目標を設定する必要があり、それらは化石燃料の明確な廃止期限とセットであるべきだ」と結論づけた。
REN21の報告書は、脱炭素社会の実現に向けて必要となるパラダイム・シフトから、まだほど遠いことを示している。
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