日本電産は2021年3月19日、電気自動車(EV)の車両を動かすトラクションモータの世界的な需要増加に対応するため、開発および製造資金の調達に向け、海外市場においてグリーンボンド(ユーロ建無担保普通社債)を発行すると発表した。発行規模は5億ユーロ(約650億円)となる見込み。
気候変動による影響が深刻さを増すなか、自動車業界は脱炭素化へ向けた取り組みを加速させている。
国際エネルギー機関(IEA)によると、世界のCO2排出量のうち、乗用車・トラック等の運輸部門が占める割合は約4分の1にのぼることから、欧州や中国をはじめ世界各国が相次いでガソリン車・ディーゼル車の新車販売を禁止する方針を打ち出し、自動車の電動化と電気自動車(EV)へのシフトを後押ししている。
日本も2020年、2035年の純ガソリン車の新車販売禁止を打ち出した。
こうした環境変化の中、日本電産は「世界No.1の総合モーターメーカー」に向け、エネルギー効率の高いブラシレスDCモータを中心に、省エネ・長寿命といった環境性能が高い製品の提供を通じて世界のCO2排出量の削減に取り組んできた。
また車載用モータ事業を主要戦略事業の1つと位置付けており、特に今後急速な拡大が見込まれるEV向けトラクションモータシステム「E-Axle」等に力を入れている。
トラクションモータとは、いわばエンジンの代わりとなる自動車の心臓部である。EV車両を動かすためには、このトラクションモータのほかに、インバータや減速機が必要となる。
日本電産では、この3つが一体となったEV用トラクションモータシステム「E-Axle」を開発、2019年4月から量産を開始している。一体化させたことで小型化・軽量化を実現し、その特徴からEVメーカーによる採用が拡大。すでにグローバルでの累計販売台数は10万台を突破しているという。
日本電産では、2030年までにEV用トラクションモータ市場(システム含む)で世界シェア40〜45%の獲得を目標としている。その牽引役が「E-Axle」だ。
「E-Axle」を中心とするトラクションモータ・システムの開発および製造に関する資金を調達するため、グリーンボンドを発行する。発行規模は5億ユーロ(約650億円)を予定しており、日本における事業会社として初のユーロ建てグリーンボンドの発行となるという。
日本電産は、「欧州投資家を主要な対象とするユーロ建てグリーンボンドの発行を通じて、資金調達手段の多様化と投資家層の拡大を図るとともに、 脱炭素社会の実現に向けて更なる貢献をしてまいります」とコメントしている。
2026年満期ユーロ建無担保普通社債(グリーンボンド)
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