戸田建設は、早くから洋上風力に張っていた。筆者が外務省にいたころにも意見交換をしたが、未来を見据えて一生懸命取り組んでいた。
具体的に見ると、戸田建設は2018年から2,000kW(2MW)・1基の浮体式洋上風力を長崎県五島市沖で運転している。取組みは2007年からであり、実証実験を繰り返し、日本で初めての浮体式の商用運転にこぎつけた。なお、五島市沖の平均風速は7m/秒と風力発電に適している。
根性を感じる。
彼らが取り組むスパー式の特徴とは、重心が低く、安定性も高く、2012年の実証実験では大型の台風16号(中心気圧940hPa、最大風速53.3m、最大波高16.9m)にも耐えた。五島市沖の水深は100から150mと深く、スパー式には都合がよかったという要因もある。
このように、水深が100m以上の水深ではスパー式が有利な一方、100m未満では設置が難しい。使い分けの世界になるかと思うが、日本は海が深いため、量的展開を考えればスパー式がいい選択になるのではないだろうか。
ちなみに、セミサブ式では40mから設置が可能で、昨年実証実験を終えた福島沖ではセミサブ式も試験された。ただし、この実証実験自体は失敗でいわく付きであるが、一応、紹介しておく。
スパー式を選んだ戸田建設は、再エネ海域利用法に基づいた第1号案件である「長崎県五島市沖」の開発事業者に6社でのコンソーシアム「ごとう市沖洋上風力発電合同会社(仮称)」で選ばれている。2MWの風車8基を設置し、1.68万MWの発電を目指し、建設に向け進行中だ。
浮体式洋上風力の課題はなんといってもコストだ。まだまだ高い。規模の経済が効いていないので、今後、というところもあるが、戸田建設はスパー式の事業を拡大するとともに、施工技術などでコスト削減を図るとしている。
世界の洋上風力発電コストは8円/kWhで日本の火力発電よりも低く、8円が実現できれば、かなり現実的な選択肢になってくるのだが、戸田建設はまずは発電コスト9円/kWhを目指すとのこと。筆者個人としても戸田建設を応援したい。
ただし、洋上風力は順風満帆にいくというものではなく、むしろ乗り越えないといけない課題は多い。そこで、洋上風力の課題について見ていこう。
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