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脱炭素の鍵握る洋上風力発電 日本の下剋上が始まる

2021年11月29日

注目の日本企業、戸田建設の浮体式洋上風力

戸田建設は、早くから洋上風力に張っていた。筆者が外務省にいたころにも意見交換をしたが、未来を見据えて一生懸命取り組んでいた。

具体的に見ると、戸田建設は2018年から2,000kW(2MW)・1基の浮体式洋上風力を長崎県五島市沖で運転している。取組みは2007年からであり、実証実験を繰り返し、日本で初めての浮体式の商用運転にこぎつけた。なお、五島市沖の平均風速は7m/秒と風力発電に適している。

根性を感じる。

彼らが取り組むスパー式の特徴とは、重心が低く、安定性も高く、2012年の実証実験では大型の台風16号(中心気圧940hPa、最大風速53.3m、最大波高16.9m)にも耐えた。五島市沖の水深は100から150mと深く、スパー式には都合がよかったという要因もある。

このように、水深が100m以上の水深ではスパー式が有利な一方、100m未満では設置が難しい。使い分けの世界になるかと思うが、日本は海が深いため、量的展開を考えればスパー式がいい選択になるのではないだろうか。

ちなみに、セミサブ式では40mから設置が可能で、昨年実証実験を終えた福島沖ではセミサブ式も試験された。ただし、この実証実験自体は失敗でいわく付きであるが、一応、紹介しておく。

スパー式を選んだ戸田建設は、再エネ海域利用法に基づいた第1号案件である「長崎県五島市沖」の開発事業者に6社でのコンソーシアム「ごとう市沖洋上風力発電合同会社(仮称)」で選ばれている。2MWの風車8基を設置し、1.68万MWの発電を目指し、建設に向け進行中だ。

浮体式洋上風力の課題はなんといってもコストだ。まだまだ高い。規模の経済が効いていないので、今後、というところもあるが、戸田建設はスパー式の事業を拡大するとともに、施工技術などでコスト削減を図るとしている。

世界の洋上風力発電コストは8円/kWhで日本の火力発電よりも低く、8円が実現できれば、かなり現実的な選択肢になってくるのだが、戸田建設はまずは発電コスト9円/kWhを目指すとのこと。筆者個人としても戸田建設を応援したい。

ただし、洋上風力は順風満帆にいくというものではなく、むしろ乗り越えないといけない課題は多い。そこで、洋上風力の課題について見ていこう。

コスト削減だけではない、洋上風力の課題とは・・・次ページ

前田雄大
前田雄大

YouTubeチャンネルはこちら→ https://www.youtube.com/channel/UCpRy1jSzRpfPuW3-50SxQIg 講演・出演依頼はこちら→ https://energy-shift.com/contact 2007年外務省入省。入省後、開発協力、原子力、官房業務等を経験した後、2017年から2019年までの間に気候変動を担当し、G20大阪サミットにおける気候変動部分の首脳宣言の起草、各国調整を担い、宣言の採択に大きく貢献。また、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略をはじめとする各種国家戦略の調整も担当。 こうした外交の現場を通じ、国際的な気候変動・エネルギーに関するダイナミズムを実感するとともに、日本がその潮流に置いていかれるのではないかとの危機感から、自らの手で日本のエネルギーシフトを実現すべく、afterFIT社へ入社。また、日本経済研究センターと日本経済新聞社が共同で立ち上げた中堅・若手世代による政策提言機関である富士山会合ヤング・フォーラムのフェローとしても現在活動中。 プライベートでは、アメリカ留学時代にはアメリカを深く知るべく米国50州すべてを踏破する行動派。座右の銘は「おもしろくこともなき世をおもしろく」。週末は群馬県の自宅(ルーフトップはもちろん太陽光)で有機栽培に勤しんでいる自然派でもある。学生時代は東京大学warriorsのディフェンスラインマンとして甲子園ボウル出場を目指して日々邁進。その時は夢叶わずも、いまは、afterFITから日本社会を下支えるべく邁進し、今度こそ渾身のタッチダウンを決めると意気込んでいる。

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