まず、量的展開やコストを下げていくというところもそうだが、世界の洋上風力の大型化にどう対応するかも、これからの課題になる。
前出のスコットランドキンカーディン洋上風力は9.5MWの風車になる。東芝がGEと共同開発した洋上風車「Haliade-X」は12MW、ブレードが107mと大型だ。この辺りをしっかり日本も組み入れてやっていかないといけない。いま、東芝が共同開発と言及したが、日本は風車メーカーがことごとく撤退してしまっており、サプライチェーンの中でいかに存在感を発揮するかも課題だ。もちろん、政府も民間も取り組んでいる。
もうひとつ、洋上風力の要素技術として重要なのが、地味だが、ケーブルだ。ケーブルは浮体式だけではなく、着床式にも関わってくる。欧州ではケーブル敷設時の事故の割合が多く、ケーブル損傷は洋上風力の大きなリスク要因となっている。
大型風車に対応できる66kVを超える高電圧の送電ケーブルの技術開発も世界で進む。
浮体式ではダイナミックアレイケーブル(海中に浮遊しながら潮の流れなどにも耐性があるケーブル)の開発が進んでいる。将来的には220kV高圧ダイナミックケーブルが期待されているが、重く、硬くなるため耐性にまだ問題がある。
この点、実は、国内ケーブルメーカーは世界シェアが高く、英国の技術開発コンペにも参加しており、存在感の発揮のしどころになるかもしれない。また、日本にも洋上風力を海底ケーブルで結ぶいわゆる「スーパーグリッド構想」があり、この辺りも今後注目を集めそうだ。
技術的な課題を見てきたが、日本における洋上風力発電開発において、さらに大きな課題がある。それが候補地の選定だ。
海とはいえ、候補地選定は、様々な権利関係が入り込むので事業者のみでは、なかなか解決できない。また、選定には、どの地域が裨益するのかという観点もあり、センシティブな話題になる。この場では触れきることができない闇もまた、ある。
そのため、政府主導、という形になっている。政府は先の課題を日本版セントラル方式で解決を図ろうとしている。セントラル方式とは、国が開発調査や系統協議などをおこなう方式で、事業者は入札で買取価格を決め、全体の導入コストを低くすることも狙いのひとつだ。このように、国が率先して洋上風力の案件形成を促進する形となっている。
現在の状況だが、今年8月にはその第一段階である調査をおこなう地域が決まった。「洋上風力の地域一体的開発に向けた調査研究事業」であり、NEDOが調査事業者に調査を委託する。
今年5月の候補地域受付期間には都道府県から9海域、事業者から19海域の情報提供がそれぞれあり、今回決まった3海域は以下の通りである。
こうした日本版セントラル方式がうまく機能することで、国による導入牽引が進むだろう。
最後に期待を込めて、「洋上風力発電のポテンシャルを引き出せ」と題して、日本の展望を占ってみたい。
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