欧州委員会は12月15日、2050年までの気候変動と、エネルギー関連の法案を公表した。2030年までの温室効果ガスの1990年比55%削減を目指す欧州グリーン・ディールの一環として、ガス市場の脱炭素化の実現に向けた政策パッケージを提案した。
この政策パッケージは、ガス市場規則のルールを定める改正案からなる。その柱の一つとして2049年までに原則として天然ガスの長期契約を禁止することを打ち出した。EUは2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする目標を掲げており、2049年は達成期限の最後の年に当たる。
欧州委は、エネルギーの脱炭素化において、最も効率が良い方法は「電化」だとしつつ、一部のセクターでは電化が難しく、引き続きガスを活用する必要があることから、ガスの脱炭素化を重視している。
現在、EU域内のエネルギー消費量の約25%をガス燃料が占めており、そのうち95%が天然ガスだ。そこで欧州委は、2050年の気候変動対策に向け、ガス消費の大部分を、天然ガスから、バイオマスから生産されるバイオガスや再生可能エネルギーから生産される水素といった再生可能ガスと、天然ガスと比べて温室効果ガスの排出量がライフサイクル全体で70%以下の低炭素ガスへの移行を目指すとしている。
これにはEUにとって最大の天然ガス供給国であるロシアを筆頭とする域外のガス企業への依存を断ちたい狙いがある。一方ロシアは、欧州委の提案に慎重な反応を示しているという。
欧州委が、再生可能ガスへの移行において、特に重視しているのが水素の活用だ。普及拡大に向けて国境を越えるガス配送管に5%を上限に水素を混ぜることも認める方向だ。また、再生可能ガスや低炭素ガスに適用される供給ネットワークの利用料や加盟国をまたぐ場合の利用料の値下げや廃止なども提案されている。
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